ほかでもないあなたと
どうしようもなくなりたい
雨の日に雨だれを数えながら飢えていくのもいいし
乾いた日に蟻をつかまえて拷問するのもいい
湿った毛布のなかで賞味期限の切れたひき肉みたいに絡 ....
明日はもう
ここにはいないし
雨も降りそうだし
こわいから
食べて
そして
明日になったら
明日のわたしを
食べてね
朝
かまきり が袖を引く
貧弱な鎌をカフスに突き立て
出勤する私を引き留める
そんな鎌じゃ 草も刈れまい
まして人間なんて 狩るもんじゃあ ないよ
生地がいたむから
その鎌 どけておく ....
風邪をひいたと言う人の見舞いには行かない きっとまた迷うから
真昼間に蛇口から出た熱い水「お湯じゃなくてさ」と言う君が好き
放課後の少女は三つ編み解きつつ運命などを未だ夢見る
あ ....
リーン リン
リーン リン
星達が銀色のベルを
ほんのり微笑みながら
揺すり始めましたのは
真夜中3時頃のことでした
星旅をしに来る人々を
快く招きます
遥かとおい頭上から
見上げる人々すべてに ....
・
きみがほめてくれた鼻梁のさきから
からだはくさりおちていきます
(崖にたつ風車たちがうつろにめをまわして
入水自殺をこころみるたぐいの
そうして盲いるときは
....
それは命を宿す なみだをながす そして朽ちる
やがてこどもたちはそれぞれの死を選択せねばならない
たやすく眠らせるようにやってくるのだから
ぼくがあの子を選ぶのに理由なんていらない
指 ....
ときおり四つんばいになってみる
なにか思い出すかしらんと
きしきしからだが鳴く
ないはずのしっぽがふるえる
あたしってちっぽけだにゃん
まわりがとても大きく見えて
痛んでくる腕 ....
銀紙の庭にときどきおりてくる
いつも窓辺に張り付いて僕はそれを朝まで剥がしている
境界線上になった手のひらの上で
それはいろいろな季節だった
たしか遠くまで見ていた
ぼやけた山の頂上で
....
この雨がやむと
そこには夏が立っていて
そのときぼくらは
ぎらぎらした太陽のもと
手をかざして目を細める
見えない大きな力に覆いつくされそうな
恐怖と快感のようなものを
感じ ....
忘却の城そこに幾千の鳥がみえた
ハスキーボイスの列車の合図がよなよな光っている
あてのない景色に空白の深呼吸が漫ろにわすれさられても
息を飲むようなリグレットに寝汗がとめどなく流れる 青 ....
涙は跳ねてイルカになる
そして旅に出るんだって
浴槽のなかで
そう思っていたこと
未だ信じている
真夜中に飛んでいる
飛行機の音を聞きながら
ふと思ったこと
きみのいない世界っ ....
たとえば、バスに乗るとして。
バス停で、バスを待っていることしかできない。ぎりぎりで走りこんだり、20分待ってもこなかったり、バスは、するけれど、ただ、わたし自身は、待つか、待たないか、それを決 ....
読みつかれて ふと
雨音に包まれて
物思いに耽る蛙と
草むらに潜む
文庫の中は
土砂降りの文字
連なり意味成し物語り
意識下に滲み濾過されて
何を読みたいわけでもなく
....
テーブルから目を離した隙にこぼしてしまった
グラスに良く映っていた星座たちは大丈夫だろうか
せめて開けた窓に都合よく張り付いた夜は
換気するたびにぴらりと剥がれてしまっていた
洗いたてのシ ....
息がとまった
(正確には息ができない状況で
吐いては泡となる気だるい吐息が
きらきらと夕日につつかれているのをみつめていた)
夏の夕方が水槽の底へ沈んでいくのを
わたしはぼうっと眺めながら
....
なにもかも
粉砕
ナイフでは永久に
無理な救いと
手を
つないでいた
椎間板を守りながら飛ぶ
ポリゴンの鳥が
ひきずりだした
わたしたちの赤い国旗
万歳 ....
「欲望がわたしの燃動機関なのです、言葉を失くした鸚鵡たちが、回転する眸を、彼の磔刑される翼の朱色に、捉われては墜落してゆきます。煉獄とはスクリーンに映された海の反射鏡なのです。」
贖罪が ....
彼が最初に作った季節は夏と冬だけだったので、秋と春とが生まれたのは誤算であった。
しかし、二つの物事がある場合その境目も同時に存在する、というルールを作ったのも彼自身であったため、彼はその誤算を割と ....
削り落っことした青いひかりの先を歩いていた
背筋をぴんと伸ばした野良猫も野良犬もみんな連れてってさ
錆びた戦闘機からマーガレットが咲いているのを見たのさ
そよ風に誘われるがまま泪はいつ ....
気取らない
月のハンモック
紫のペチュニアの花
そんな夜に
黒い硝子の靴は
何処かしらと
少女は思う
銀色の森を見たかい?
なめらかな手触りの葉を
一枚取ったら
あの子に手 ....
凍えたコンクリートに水が浮き出る
アンモニアのない小便みたいな臭いがする
剥がれた天井のボードの上に見える鉄骨は
もとの色が判らない位に錆びついている
おまえの死んだ理由は ....
線香花火の煙の匂いと
遠く遠くで垂直に昇れば
散らばって消える花火音は
静まり返る部屋で眠ってた私を
呼び覚まそうとするから
林檎色のワンピースを着て
底の低いミュールを焦りな ....
水レタスの頭部が割れて地を這う、すると麺麭がコインに代わるのが解るだろう。労働とは緩やかな死への街路である。
王冠を被った卵殻が謁見室に、楕円形の偏光器を置くと、歪んだ階段に天使の様な羽 ....
時計は8時30分を指している
海面に凛と立つあなたを
私は海辺から涙をこぼしている
風は灰色だ
漣(さざなみ)を立たせたり
あなたの眼を見開かせたり
していて
宇宙は落ちてきそう ....
時間少女は宇宙浴槽のなかでうたた寝
水浸しの朝はシャンパン雨のなか
ブーツに子猫がいて可愛がっている
見えない月をおもいながらはしゃいでる
桃色のブランコ漕いで黄昏の光景のなか
滲んでいるき ....
朝に
殴りつけられて
君は
目を覚ます
ほんの少しの痛みと
ほんの少しの希望
昨日始まったことは
今日も
続いている
だけど
明日には
どう ....
クレヨン僕は毟った
クレヨン吐く息が
いつもと違う
無言のクレヨン、なぁ
喋りたがっているのは
僕かクレヨンか
僕は
刺さってたずっと。
その微睡んだクレヨンが
その色が何色か
....
海が
めくれてゆく
いくつもの
いくつもの
海が
めくれて
岸壁から
追い縋って
宙を泳ぐ指先に
紫貝のように
閉じる音楽
(母は海に還ったのだ
街が
たわ ....
置忘れたチェロのように
湿気た香気を曳きづり
レモンの輪切りに一瞬、鮮明になる
あなたの狂気ほどの余韻
そのなかに
モーツァルトのタクトが
華奢な骨格に納められる
青白い石膏のくちびるか ....
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