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この手が
いくつもいくつもあったなら
泣いて光をうしなっている
あの子の
背中を
なぜてあげたい
頬にこぼれるものを
ひろってこの川に捨てたい
この手が
いくつもいくつも ....
そこはかとなく
カオス から はじまる
巣箱の なかで 羽音が する
複数が 単数を 響きあう
羽音が する
とおく 草陰に 一軒の 廃屋...
誰かの ....
淡いかなしみの曇り空が
堪えきれずになみだを落とすと
紫陽花は青
束の間のひとり、を惜しむわたしは
思わず傘を閉じ
煙る色合いとひとつになりたい
街中の喧騒は
雨の糸に遮ら ....
窓の外は
すいこまれそうな
青空
雲が 羽に変わり
私を 呼び寄せる
空から見上げる景色は
街では
車や 電車 人々が
テープの早送りのように
忙しそう
穏やかな ....
こんなことがあってね
あんなことがあってね
生活がどうにもならなくてね
愛した人と別れてね
こんなことができなくてね
あんなことが叶わなくて
考えに来たんだ ....
埒もない想いに身を委ねてしまうのは
この季節特有の気紛れと
触れて欲しい
昨日までのわたしを脱ぎ捨てた
わたしのこころに
この瞬間に生まれ変わった
わたしの素肌に
季節は夏
....
水無月の夜
長雨が流す 街波の排気
初夏の風が 白いブラウスを
揺らす
雨後の 空気は 新鮮で
深呼吸する 肺は透明に
清々しく
木々たちが 雨梅雨を
振り落とす 街の路上 ....
プラットホームに無数に付けられた
チューインガムの黒点が
未熟な夏の気温を
幾分か下げている気さえして
ぎんいろの屋根に逃げ込む
そこから視界に飛び込む紫陽花の
無防備な一片は
まだ ....
夜がさらりと降りてくる
目覚めない
女の髪のような
さっきまで長く長く伸びていた影は
地面に溶けてしまった
あるく
あるく
よるのみちを
夜が満ちてゆく
そこここに
....
まどろみを さめたり もぐったり
白日の 季節の かいなの なか
体力は うばわれ
けだるさに 眠って
窓を 吹いて くる
れもんの 風との トランスファー ....
近頃やたらと
涙もろくなっちゃった
なんでかな
自宅で映画の予告編を眺めていても
気がつくと
ぽろぽろしている
自分に気付く
やっと梅雨入りしたんだってね
紫陽花は
お隣 ....
きのう
蒔かれた種が
もう 発芽へ発芽へと
夏が至るまでのあいだ
止まらない
エスカレーターの列は長く
せめて みどり色を思い浮かべる
わたしとは
違う人たちに前と後を
挟まれて ....
未来に
あくびをさせるな
過去なんかに
囚われるな
高ぶる感情のまま音を紡ぎ上げ
楽器を演奏するジャズメンのように
その瞬間に熱狂しろ
目一杯着飾って
トランペットを持ち
....
( 錆びた鉄筋を剥き出しにした、
崩れかけた支柱が夕映えの空へと伸びる )
すでに蝕まれたコンクリートの構造物に滲みる、声
絶間ない、呪いにも似たその響き )))
おそらく、何ら ....
遮光カーテンの四隅に朝が零れている
うつ伏せで眠る君をベッドに残し、
素肌にすばやくドレスシャツを着て、
夜の逞しい身体は、そっと部屋を出てゆく
落ちてゆくエレベーターのなかで――
右手 ....
布のむこうから近づく光
同じかたちの虹に割れ
いつか集まり 一羽の蛾となり
風の重さを聴いている
葉と花の舟
水の上の いくつもの空
花ひらく音 ほどく音
ひとつひと ....
夜が季節の名前ならば
今夜は惜春
雷雨が迫る黒雲
まだらに明るい空を映して
海が水銀のように揺れる
指先の温度が融点の
あなたという液体
わたしという液体
いつまでも
満たさ ....
街灯に蛾が群れている
明滅する明かり
雲がさあっと横に分かれて
月が顔を出した
誰もいない
蛾がひっそり群れている
角からぽーんと勢いよく
何かが飛び出した
赤いビニー ....
曲がり角ごとに鳥はいて
夜を夜をとまたたいている
青紫の窓がふたつ
甘い手管にひらかれてゆく
うすぐもり
なりひびき
皆なにかを
抱きしめるかたち
昇るもの ....
研ぎ澄まされたナイフで空を
切り裂いた太陽は
六十億もの穴の空いた
大地にやがて沈んでゆく
プラタナスの葉に覆い被さるように
牧羊神の与えた息吹が
薄いガーゼとなって絡まる
初夏の森を中 ....
病院の最上階の病室の
眠れぬ夜に少年は
夢で作った絵具で
誰も知らない絵を描く
空は大きなキャンバスだ
ひとりでさびしい少年は
空にたくさんの友達を描きました
父親を知らない少年は
....
春色の街 新緑の芽が
朝露に 光る朝
山の目覚める 春の光に
雪どけ
ながれる
川の 音色は
せせらぎ‥
新しい空気に 深呼吸
風に ゆれる
新緑の葉
雪割草が ....
骨のことなら知っています
奥深く平面的で
動物的な空が
罪深く走る夜
立てるよ、と勘違いをする男が
束になって走っていました
((はしたなく
((はしたな ....
わたしはいつも、つつまれている。
目の前に広がる空を
覆い尽くすほどの
風に揺られる{ルビ椛=もみじ}のような
数え切れない、{ルビ掌=てのひら}に。
その手の一つは、親であり ....
ことばは
かけらだ
かき集めて
かき集めて
つくる砂の城が
ひかりを浴びて
窓に飾る花の叫びだ
レースがひるがえり
それは、かけらだ
宿酔いだから
洗濯に行こう
宿酔 ....
あてもなく、この先は、動かされるままに。
意識とは別に、行く先は、南、でした。
無音の、ファンネルからの、伏流は、
見ている人しか、伝わらないなんて。
見えないだけでしょう。
....
きみの魚にふれたくて
えら呼吸を切望したら
肺が痛んだ
朝への開口を防ぐように
その
呼吸のひとつ
くちびるを
置いていく
きみの鳥をとびたくて
背中にそらを作ったら
煙に ....
君は
君の家に入らない
雨が降っているというのに
軒下の風を嗅いで前足を舐めている
私の上には屋根があるので
髪に降るよりも
雨は、
硬質な響きで
音の羅列を渉っていく
....
夜にまぎれて
雨をみちびく雲の波
朧気に月は
触れてはいけないものがある
ということを諭すように
輪郭を無くし遠退いてゆく
深く、
深く息をして
雨の降りる前の
湿った空気の匂い ....
波が編む細やかなレースが
爪先の向こうで結ばれてはほどけ
刻と陽射しは
翡翠や白の模様をすこし深くに施す
水平線、と呼ぶには平らな
空と海の境界を見ながら
こうして言葉を探す自分を思う ....
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