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夫があまり鋭く見つめるから
わたしはしだいに削れてゆく
夫と婚姻関係を結んでからのわたしは
もう余程うすっぺらくなったらしい
強く手を握られると
きしゃり と指ごと潰れるから
か ....

どういうわけかうちのごみぶくろだけ
いつもあけられてしまって
中身がまき散らされているの

ある日曜の朝
母が困惑顔で言ったとき
それはきっと妹を狙う肉食獣の仕業に違いない
とわた ....

空が脱脂粉乳のように
薄く万遍なく引き延ばされてしろい日
うすぐらい部屋のなかで洗濯機を回している
色とりどりの洋服は不要になった皮膚のように
集められ濡らされ浮かんだり沈んだりし
渦 ....

私の本当の名前はスマコというらしいです
だけど父も母も兄弟もみんなスマと呼ぶので
いつの間にか私はスマになってしまいました
ときどき本当の名前について考えます
コというのはどういう漢字な ....

幼いころ
妹はお風呂が嫌いで
兄は爪を切られるのが嫌いで
わたしは歯を磨くのが嫌いだった
だからそのころのわたしたち三兄弟ときたら
妹は髪から極彩色のきのこを生やし
わたしはのどの奥 ....

空が晴れていると
どこへ行ってもいいような気がして
ふらふらと遠出をしてしまいたくなる
そんな時はスーパーへ行って
掌にちょうどおさまるくらいの大きさの
果物をふたつ買って帰る
右と ....

消費者金融の無人審査機の前で
背筋をこころもち曲げている女
どういう顔をしていたらいいか
分からないのだろう
真っ二つに分けた前髪の間からは
かきまぜたコーヒーに入れたミルク
みたい ....

一か月が
余りに速く過ぎ去るような気がして
どうしようもない
服を着替える間もなく
あっという間に秋である
外ではまるで軍隊のように
流行なのか
同じ型の服を身につけた女子が
勇 ....

机を彫刻刀で切り付けて
切れ目をひとつ作って指で開くと
そこに海が広がっているときがある
授業中やお昼休みの間はつま先から飛び込んで
そこでじっとしていた
息ができないという点では ....
わたしの生まれ育った村には
鮮やかな花が咲いていて
広大な田地が広がっている
野良犬がそこらじゅうにべとっと寝ていて
曖昧な微笑みを浮かべる村人と
いないはずの人たちが生きていた

たと ....


眼を閉じるとそこは
金木犀の香る秋のベンチで
横には
もう何度も思い出しているから
びりびりの紙のようになってしまった
いつかの君が
黙って座って煙草をすっている
周囲がいやに ....
雑踏で喫煙をしていると
衛生的な感じの服を着て
酸素マスクを付けた人たちが
群れを成してやって来て
あなたはどうして煙草を吸うのか
と言う
くちごもっていると
健康の為に今すぐにやめ ....
老朽化の進んだ体育館は
二階に観客席が付いていて
死んだ蛾や蝉がたくさん落ちていた
わたしは
つま先の赤いうわばきで
それらの死骸を踏み砕き
空へ近づこうとするかのように
一人でそこへの ....
小学生のころ
仲が良かった友人の家の
お父さんは雨男で
お母さんは雨女だった

家に行くたびいつも羨ましかった
彼女の家の中はいつも雨で
じゅうたんにも床にもトイレにも  ....

初夏の山は
いいにおいをしたものを
たくさん体の中に詰めて
まるで女のように圧倒的な姿で
眼の前に立ちはだかってくる
たまに野良仕事をしている百姓が
山に見惚れていることがあるが
 ....
深夜の病棟の廊下を
患者を乗せたベッドが幾つも
音もなくしずかに漂流していく
あれらはみな
モルヒネを投与された患者なのだそうだ
おっこちたりしないように
きちんと縛り ....
濁った沼のある寂れた町に
マリーという女が住んでいた
マリーの本名は誰も知らない
彼女は
夏の真夜中のような眼をした
中々の美人であったが
友達はいなかった
若者はみな都会 ....
ふとしたきっかけで
王様と知り合いになった

漫画喫茶だった
王様は玉座に座るように
リクライニングシートにもたれ
隣のブースに居たわたしに
飲み物を取って参れ
と言った ....

今宵もまた
お父さん
あなたは咳をしていますね

青い毛布をかけましょう
それはあなたの首元で
小さな海となるでしょう


お父さん
わたしは
あなた ....
智鶴さんの吉田ぐんじょうさんおすすめリスト(19)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
dissimilation.- 吉田ぐん ...自由詩4911-1-6
世の中がどんなに変化しても、人生は家族で始まり、家族で終わる- 吉田ぐん ...自由詩53+*09-10-2
セプティエンブレ- 吉田ぐん ...自由詩1409-9-29
或る少女の生涯について- 吉田ぐん ...自由詩2609-9-3
わたしたち三兄妹- 吉田ぐん ...自由詩3109-8-25
スーパーにて- 吉田ぐん ...自由詩3808-11-17
すかんぴん(大変貧しく、無一文で身に何もないさま)- 吉田ぐん ...自由詩30+08-10-9
せかいをいきる- 吉田ぐん ...自由詩5508-9-29
学校と女子と男子- 吉田ぐん ...自由詩1608-7-28
(また)見えない人の話- 吉田ぐん ...自由詩1708-7-28
君を思い出している- 吉田ぐん ...自由詩2508-5-1
喫煙者- 吉田ぐん ...自由詩3207-12-21
赤いうわばきとたいくかん- 吉田ぐん ...自由詩2507-9-7
雨男と雨女- 吉田ぐん ...自由詩2007-6-26
初夏- 吉田ぐん ...自由詩4307-5-17
病院の海- 吉田ぐん ...自由詩1107-4-25
喪服屋マリー- 吉田ぐん ...自由詩1707-2-25
王様- 吉田ぐん ...自由詩2006-11-29
きえる—父へ、きれぎれに- 吉田ぐん ...未詩・独白1306-11-17

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