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夏、それは
裏とおもてのある季節
裏道はどこへも
繋がってはいない
向日葵、それは
追いかけていた肩甲骨の高さで咲いて
自転車で踏んでしまった蝉の音で枯れた
波、それは
壊れた ....
私しか「アトリエ」と呼ばない場所で
あのひとは輪郭のまま西を向いている
むせ返るような夕陽の匂いのなか
パレットで乾いた水彩は、それきり
藍が好きだったと思う
雨が好きだった ....
くしゃみをひとつする、と
私たちは地球儀から滑落して空に溺れる
あの日グラウンドから送った影は
手をつないだまま鉄塔に引っかかっていて
捨てられたビニールのレインコートのようだった
バス ....
夢路誘うは十六夜に
声なく花の散る姿
また立ち返る如月の
思いは誰に告げるべき
黒髪{ルビ梳=けず}るいもうとの
面影やどる花びらは
雪の衣も厭わずに
音もた ....
潮のせいでくちびるの端にこびりついた砂を噛む
違和感
そのついでに日記にも砂をかませる
八月はつめたい
指先で這った波の曲線は
私の中では体温を持たない
数 ....