線路の向こう
ビルの谷間の三角地
そういう辿り着けない場所に
オレンジ色のコスモスが
揺れている

ささやかな風景は
しかし、すぐに電車の音に
塗りつぶされてしまう
それでも
元気　.... さよならと青いノートのすみにかく




天使とぶ軌跡のこして夏は暮れ




悲しみはまぶたのうらに熔かすもの




熱い夜にぼくの未来は透明です 影のない喪失感や葉の緑


樹の思想　地割り上昇スパイラル


ビルの谷　光渦巻く矩形の空


雑踏で一人影置く寂しさよ 真っ赤な太陽が夜をつれて

あの日の団欒今はいずこへ

涙を隠して背中を伸ばして

眩しい目位しか出来なくて


あなたを憎んでいると告げ

真っ赤な太陽は西の山の端

あし　.... 真昼の月の窓辺に
通り過ぎゆく
硝子の世界

なにかが在って
なにも無い
誰かがいて
誰も居ない
ジオラマの影

週末の真昼の東京は
目を開けたまま
眠っている動物のように
　.... 本当の砂漠ではないけれど
ここに来て安らかだった

ひとはとうに滅び終わっていて
そのことを嘆いたり
悲しんだりしなくて良かった

さらさらと砂時計
言の葉の砂こぼれる

掬い上げ　.... 花がいままさに
ひらかれようとしていて
うたが人知れず
うたわれていても

読みかけの本の
頁がひらかれて
そのつづきが
つづかれてある言葉が
読まれようとしていても

なおもひ　.... 二人の話声が
雨後のしじまに
遠のいて行った
それから　もう
何も聞こえない
闇はゆっくりと
比重を増し
畳に拡がる
今夜も
夜が
卵を産みに
やって来た 脹らんだ不安は
一雨ごとに流され

身軽になれば
新しい街の春色が

蝶々が舞うように
私に纏り付いて

うつらうつらと
幸せの予感がした 冬の咽もとに指を寄せ
ふるえのかたちを描いてゆく
あなたは
あなたを描いてゆく


太い流れが細くなるとき
熱は流れに染みとおる
夜が夜を圧そうとするとき
熱は夜の辺をめ　.... 散る花を運ぶ水面にゆれる
ふたつの影は黙して語らず
罪と咎とをひとつに乗せて
高瀬の舟は川を下る

祈るかたちの手を血に染めて
ひとを殺した罪人だとは
見ても思えぬ有様の

夢に疑う　.... 青い空に瑠璃ガラスを並べた春先

痙攣する舌先に触れたあなたのアネモネは赤い

涙よ

茫洋とした白い耳

風の上に流れる青いガラス細工の破片

太陽の下の蝋燭

蟻の死骸
　.... 新鮮でぷりぷりしてる酢牡蠣かな

オリオンに向かう心で深呼吸

寒晴やカメラ持つ手が震えてる 沸かし過ぎた珈琲に冷めた珈琲足してすするすする深夜淋しさなし 空を飛ぶ夢忘れないミソサザイ

梅の咲く恋も咲かせてみたい春

湯たんぽの熱に抱かれる夜もある 肉まんをほお張る夫の雪だるま




雪兎踊るは妻の腹の中 木琴が鳴る
放つことなく
受けとめるまま
木琴は鳴る　木琴は鳴る


明けてゆく夜
蒼つなぐ蒼
明ける色の手
見えない手


隅に集まる
光の渦
紙に染み込み
　.... まどろみに
サイレンはやみまして
午前二時は
時計の音が迫るころです

わずかばかりの寝息が
胸にかかれば
布団かけなおして

あのこと
あやまって

ゆるされる気でいるのです　.... 水や峡谷の国の演者が
水や峡谷の音を奏でれば
それが水や峡谷なのか
おまえの水や峡谷はないのか


孤独が｛ルビ蠱毒＝こどく｝になるまでに
自身の何を殺してきたのか
それと　.... あなたが言うその言葉が

もし愛ならば　愛ならば

あたしはあなたの胸で眠ります　眠ります

そして次に目覚めても

きっとあなたはいるでしょう?

だからあたしは　眠ります アスファルトに焦げ付いた影を切り取って
家へ持って帰った

壁に立て掛けて
白いチョークで
目を描いた
耳を描いた
鼻を描いた

口を描いた途端
影はしゃべり出した　.... ｛ルビ蜩＝ひぐらし｝の鳴く　
夏の夕空に　
紅く滲んだ雲のシルクハットが　
傾いて浮かんでいた　

｛ルビ鍔＝つば｝の下に　
もうこの世にはいない　
あの人の顔が　
見える気がした　
　.... 　　「コンクリート・リゾート」


最後に僕がここに立った日
それはきっと、セピアンブルーの日
変わったものといえば
角のコンビニエンスストアの名前くらいで
もしかしたら　.... 私の遺体は焼かないこと
埋葬の道中には子どもを3人付き添わせること

子らのつやつやした黒髪は、
青々した緑葉を飾ること
そして彼らの透き通る白い肌は、
漆黒の羽織で覆うこと
死の色の中　.... 時間だけ見られがっかりする時計 赤ずきんはおばあちゃんのお見舞いに行くために
おばあちゃんの好きなお菓子を持って
森の中にあるおばあちゃんのお家まで歩いていきました

森では川のせせらぎが聞こえ
鳥の声はどこまでも　.... 蟻群れてダリの世界を解体す

キリコの街に少女失踪月見草

マグリットの青空の下に暗き闇 心なしか頼りない日差し
見上げる視界の右片隅、
夏に覚えた眩暈が
いつまでも居座る気配です。
鳩が不格好に歩く石畳、
高い高い螺旋の、
廻る、空
に、墜落する飛行機雲。

始ま　.... 生き飽きて

君死とどめる

なみのはな あなたの指先が

途切れながら描く円

あなたと私を定義する縁

だからまた会える

泣かなくていい
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