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毒薬のような願望を散りばめた、
陰茎の夕暮れが、
いちじく色の電灯のなかで燃え尽きると、
ようやく、わたしの夜が訪れる。

静寂をうたう障子は、わたしのふるえる呼気で、
固く閉ざしてある。 ....
換気扇が、軋んだ音を降らす。
両親たちが、長い臨床実験をへて、
飼い育てた文明という虫が、頭の芯を食い破るようで、
痛みにふるえる。
今夜も、汚れた手の切れ端を、掬ってきた、
うつろな眼で、 ....
花弁を剥きだしの裸にして、白い水仙が咲いている、
その陽光で汗ばむ平らな道を這うように、
父を背負って歩く。

父はわたしのなかで、好物の東京庵の手打ち蕎麦が、
食べたい、食べたいと、まどろ ....
木曜日の朝の雫が絶叫をあげている。
尖った街頭の佇まい。
通勤の熱気をはおったDNAのひかる螺旋の群は、
わたしの散漫な視覚のなかに、
同じ足音、同じ顔を描いていく。

振子のようなまなざ ....
       1

ひかりは、不思議な佇まいをしている。
向かい合うと、わたしを拒絶して、
鮮血のにおいを焚いて、
茨のような白い闇にいざなう。
反対に、背を向ければ、向けるほど、
やわ ....
     1

逆光の眼に飛んでくる鳥を、
白い壁のなかに閉じ込めて、
朝食は、きょうも新しい家族を創造した。

晴れた日は、穏やかな口元をしているので、
なみなみと注がれた貯水池を、
 ....
夜のアゲハ蝶の行き先は、決まって、
忘れられた夢のなかの王国の紫色の書架がもえている、
焼却炉のなかを通る。
くぐりぬけて、
グローバル・スタンダードのみずが曳航する午後、
雨の遊園地で、イ ....
      1

眠れない夜は、
アルコールランプの青白い炎に揺られて、
エリック・サティーのピアノの指に包まれていたい。
卓上時計から零れだす、点線を描く空虚を、
わたしの聴こえる眼差し ....
悠々と二羽の鳥が、碧い空を裂いてゆく、
       鮮やかな傷口を、
銃弾のような眼差しで、わたしは、追想する。
  その切立つ空を、あなたの白い胸に、捧げたい。
  
     ・・・・ ....
白く鮮やかに咲きほこる、
一本のモクレンの木の孤独を、わたしは、
知ろうとしたことがあるだろうか。
たとえば、塞がれた左耳のなかを、
夥しいいのちが通り抜ける、
鎮まりゆく潜在の原野が、かた ....
木がいさぎよく裂けてゆく。
節目をまばらに散りばめている、
湿り気を帯びた裂け目たち――みずの匂いを吐いて。

晴れわたる空に茶色をばら撒いて、
森は、仄かな冷気をひろげる、静寂の眩暈に佇む ....
     1

うすい意識のなかで、
記憶の繊毛を流れる、
赤く染まる湾曲した河が、
身篭った豊満な魚の群を頬張り、
大らかな流れは、血栓をおこす。
かたわらの言葉を持たない喪服の街は、 ....
遥かに遠くに満ちてゆく、夢のような泡立ち。
その滑らかな円を割って、
弱くともる炎。
最後のひかりが、睡眠薬のなかに溶けてゆく。

みどりで敷きつめられた甘い草原。
潤沢なみずをたくわえて ....
序章

薄くけむる霧のほさきが、揺れている。
墨を散らかしながら、配列されて褐色の顔をした、
巨木の群を潜ると、
わたしは、使い古された貨幣のような森が、度々、空に向か ....
       1

鎖骨のようなライターを着火して、
円熟した蝋燭を灯せば、
仄暗いひかりの闇が、立ち上がり、
うな垂れて、黄ばんでいる静物たちを照らしては、
かつて丸い青空を支える尖塔が ....
  1 眠り

朝の眩暈のなかで、
一日の仕事を終えて、疲れ切ってから――、
職場に出かけても、
そこで、わたしにできることは、
只、泥のように眠ることだろう。
(そこには、青い灯台が、 ....
      1

夥しいひかりを散りばめた空が、
みずみずしく、墜落する光景をなぞりながら、
わたしは、雛鳥のような足裏に刻まれた、
震える心臓の記憶を、柩のなかから眺めている。

(越 ....
蒼い海峡の水面に、座礁した街がゆれる。
煌々と月に照らされて。
わたしが走るように過ぎた感傷的な浜辺が、
次々と隠されてゆき、
閉ざされた記憶の壁が、満潮の波に溶けて、
どよめいては、消えて ....
       1

十二月の眠れる月が、遅れてきた訃報に、
こわばった笑顔を見せて、
倣った白い手で、ぬれた黒髪を
乾いた空に、かきあげる。
見えるものが、切り分けられて――。
伏せられ ....
     1

漆黒の夜を裂いて、神楽の舞が、
寂びた神社の、仄暗い舞殿で、
しなやかな物腰を上げる。
右手は、鈴の艶やかな音色が、薫る。
あとを追う鳥のように、左手の扇子は、鈴と戯れる。 ....
  1.永遠の序章

(総論)
一人の少女が白い股から、鮮血を流してゆく、
夕暮れに、
今日も一つの真珠を、老女は丁寧に外してゆく。
それは来るべき季節への練習として、
周到に用意されて ....
        1

寒さが沸騰する河岸に、沿って、あなたの病棟は佇む。
粉々に砕けた硝子で、鏤めている実像が、
剃刀のような冷たい乳房のうえに置かれる、
吊るされた楽園。
顔のない太陽は ....
      1

ホームの後ろに錆びた茶色の線路があります。
線路の枕木は腐りかけ、
雑草が点々と生えています。
線路は使われなくなってどれくらいがたつのでしょう。
わたしは線路に耳を当て ....
     1 序章

慎ましい木霊の眼から、
細い糸を伝って、子供たちが、
賑やかに、駆け降りてくる。
溺れている海の家の団欒は、
厳格な父親のために、正確な夕暮れを、見せている。
見開 ....
       
      1

ゴルゴダの丘の受難が、針のように、
人々の困惑の眼を包んで、
砂塵の闇に、厳かに、消えてから、
すべてを知った空は、
瞬きもせずに、顔色を変えることなく ....
    1 追憶の街

(そこを曲がると目的地だ。
(たくさんのヒヤシンスの花が僕たちを見ている。
(そう、あの青い塔のある丘まで競争だ。
(君の長い髪がそよかぜにのって
(春を歌っている ....
       一

観葉樹が、かぜに揺れて、嬉しそうに笑いかける。
笑いは葉脈のなかに溶けて、
世界は無言劇に浸る。
映像のように流れる無言の織物。
かぜが、喜劇に飽きるまで、永遠を飽きる ....
一、 某月某日 冬

凍る雨を浴びつづけて、一年を跨ぎ、
わたしの頬は、青ざめて、
虚ろな病棟の、白い壁に残る、
黄ばんだ古いシミに親しむ。
難い過去を追走する暗路を、
エタノールの流れ ....
ひかりの意志は、古い細密画の粗野を洗い、
陰影の微動を深めて、写実を濃厚にめぐらせる。
信仰の果てしない夢を、
高貴な光彩の眩しさのうえに、
振るい落として――。
古典はイスパニアの春を謳う ....
彼女は二度、嘔吐して、蒼茫とした死者の距離を巡る。
傍にいる三毛猫は、
笑っているテレビを見つめて、溜息をつきながら。
(イラクから自衛隊が撤退するそうだね。
(おばあちゃんはね―。戦争は大嫌 ....
萩原重太郎さんの前田ふむふむさんおすすめリスト(44)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
停泊する夏- 前田ふむ ...自由詩23*07-6-29
あまのがわ- 前田ふむ ...自由詩34*07-6-16
森番—透過する森のなかへ- 前田ふむ ...自由詩38*07-6-6
五月の街- 前田ふむ ...自由詩31*07-5-26
ふたつの曳航- 前田ふむ ...自由詩27*07-5-18
静かな氾濫をこえて—四つの断章___デッサン- 前田ふむ ...自由詩29*07-5-8
落丁した夏- 前田ふむ ...自由詩28*07-4-27
春のための三つの断章- 前田ふむ ...自由詩33*07-4-18
春のひかり- 前田ふむ ...自由詩28*07-4-6
三月の手紙__デッサン- 前田ふむ ...自由詩32*07-3-27
森の心象___デッサン- 前田ふむ ...自由詩25*07-3-17
蒼い微光- 前田ふむ ...自由詩25*07-2-28
夢の経験- 前田ふむ ...自由詩24*07-2-16
虚空に繁る木の歌___デッサン- 前田ふむ ...自由詩22*07-2-5
浮遊する夢の形状____デッサン- 前田ふむ ...自由詩27*07-1-24
二つの灯台__デッサン- 前田ふむ ...自由詩20*07-1-11
不寝番—みずの瞑り__デッサン- 前田ふむ ...自由詩28*07-1-3
遠雷—解体されながら- 前田ふむ ...自由詩24*06-12-23
廃船——夜明けのとき__デッサン- 前田ふむ ...自由詩29*06-12-16
蒼茫のとき—死の風景- 前田ふむ ...自由詩32*06-12-9
寂しい織物—四つの破片_デッサン- 前田ふむ ...自由詩42*06-11-30
永遠のむこうにある空__デッサン- 前田ふむ ...自由詩25*06-11-24
忘却の深層より—東京- 前田ふむ ...自由詩22*06-11-16
夜を夢想する海の協奏- 前田ふむ ...自由詩27*06-11-9
遠い眺望- 前田ふむ ...自由詩17*06-11-1
三つの街—浮遊する断片- 前田ふむ ...自由詩18*06-10-24
浄夜——遊戯する断片_デッサン- 前田ふむ ...自由詩18*06-10-9
青い声が聴こえる日___デッサン- 前田ふむ ...自由詩19*06-10-2
ひかりの憧憬- 前田ふむ ...自由詩16*06-9-27
遠い手__デッサン- 前田ふむ ...自由詩14*06-9-19

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