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山の端に今昇りくる太陽に
向いて鳶は羽ばたきにけり
里芋の葉に露玉を宿らせて
風も光りて土用に入る日
身体ごとゆるるが如き北山の
杉のみどりが視野に広がる
微熱ある夜を目覚むれば
枕辺に誰がつけくれしか蚊取香匂ふ
熱湯の ....
隣屋の塀にはびこる つたの青
さみだれに色 尚つやめきし
散歩にと さいそくにくる愛犬の
うったえる瞳に 重き腰あぐ
単純もよきときあると自らと
慰むるとき 時雨の音する
ふれ合いし手の冷たさは言はずして
春雪消ゆる早きを語る
尋ねきし人は留守にて山茶花の
散り敷く庭に一人ごちする
我が裡 ....
洗濯機の渦に心を巻き込みて
しみつく澱も洗い流せり
長雨のやみたるあとに松葉ボタン
閉ざせし心も開くがに咲く
娘が生けし菊に顔寄せ深深と
秋の香かげば夏も惜しまる
二十世紀 ....
傘持ちて吾子を迎えに行くことも
久し振りなり雨もまたよし
さりげなく扇風機の風 吾が方に
向けてくれし子は漫画読み継ぐ
見知らぬ子 通りがかりの吾れに寄り
トンボが居るよと ささやき ....
カラヤンのレコード買いきて おもむろに
娘灯を消して聞くがよしと言う
萬緑を濡らして夕立過ぎゆくに
近江の里の深き静もり
緑濃き萩の道もいく曲りか
蓮の花咲く池に出にけり
....
加茂川に降る雨と共に昭和逝く
何時もと変わらぬ景色まぶしく
編隊のかたちに鴉帰りゆく平成となる日の夕空を
永かりし昭和の御代も終焉となりて
小雨降る 夜となりけり
親しめぬ言 ....
鍬を肩に明日の日和のたしかなるを
友と語りつ茜さす道
亡き兄が呉れし つつじの花濡れて
五月雨暗く今日も降りつぐ
寒の水 喉鳴らしつつ飲みほして
湯上りし吾子 大きく息す
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