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喋った記憶を遡ると
人の中で泳いでる
かたちはおそらく金魚で
よく冷たい水に潜る
ぷくぷくと泡が声に変わる
耳には届かない
書いて書いて書きなぐって
でも読めないので泳ぐ
紙は ....
烏
私がタンカーを見ているのだ 私の
目の前には 海原がそそり立ち
桜の 老木の 肌も露わ
ひび割れた匙で抉ると嗚咽が漏れだす
轟音はずっと工場から
朝と夕 右の煙突を光が射抜いたあた ....
眠りながら埃が泳ぐ
浮かぶ壁面の色と
光芒揺らぐ夜通しの
手折られ可哀想な奴ら
寄り添う姿はひんやりとしている
部屋には目に見えぬ焦りが
夕映えに焦がされた往時のまま
浮かんでい ....
屋根瓦は濡れ色で
雉の音と喧嘩する
遠く電光に溶ける頃
時折冷ややかに鐘の音が重なる
もうまもなく 沈んでしまうわ
月まで誘う鉄橋をご覧なさい
ほらごらんなさいよ
叙景 蠢き ....
お金
ならない
お金はキレイ
花のよう
鈍く光の沈む
夜のあんな猫背の
色した鉛の玉の鈍く
街灯にあんな空と
椋鳥の霊
そんな奴に
セキレイが近づく
白い頭と黒い ....
灰色の風が
冷え込んだ甘い匂いに吸われてしまう
電車の窓ガラスも
街路樹を伝う宵闇も
一本の薄いストロークにのって
色落ちしてゆく
弓のぼやけた冠を
空におくり
人びとは門を閉 ....
からだブン投げて
青柿割り
咲いた
咲いた
青柿
咲いた
婆さん
咲いた
生きてた婆さんの名前 何だった
私を愛して
咲いたか
咲いたか
あの夜
....
畦道にむかう足は
ゴワゴワと、カエルのように
ないて、河川敷に沿って走る
白い、マーチを追い越して
目と、髪が戯れている先の
先まで進み、カラスか
はたまた違う鳥か
とらえて、はなし ....
ぼんたん飴をすりつぶしたように
雲がうじゃうじゃ
あとは青
みんなみんな神宮橋を渡る
横から波と風、羽、工場からのガス
大きな風車がいくつもいくつも見える
車はまっすぐに走れ
....
成田へあれも
弧を描き
うつむき加減に
落ちてって
果肉むさぼる
木々や
倉庫や
薄暗い濁りが
街路まで
漂っては灯火を運ぶ
星を食う
彼は
季節外 ....
私の大好きな古い窓に
あのカラスはキズをつけた
羽虫の薄さで
夕日を水のおはじきにして
木苺の赤い信号が
車を待っているあいだ
硬い色の空を背に
セスナ機ほどの小さな傷で
浮かん ....
ナイフと黒い皿
テーブルには
皺だらけ
砂時計と水と消しゴム
メモと灰皿
伝票とボールペン
ぽつぽつと
灰皿と車と赤い花
黒い空には灰の雲
さらさら
風と雨とまざり ....
ココアがくつくつ
揺れている
背中を壁側に
テーブルに
冷たいシャツ
袖口から右の指先
左の指先
息を吐き出し
口内炎にいじめられ
舌はだらしなくまるめ
文字をぽちぽち
....
南部風鈴の音
風に乗せ
山越え
きーんと鳴る
見るも無惨なお前の笑顔
腕は白い
うちひしがれた隣に空が
はっついてる
いっときも目を逸らすな
言ったのに
泥のように夕日を沈 ....
浮かんでるのがレジ袋
鴉みたいだ
甘く重たい空の様子
大鯰の口いっぱいに砂粒を湛えてる
やがて切れ間からも火の手があがる
青いネオン看板の上に指がみっつ
鉄の焼ける臭いも混ざる
....
登り窯
緑青
パチンと
はぜる
月