偽物には影が見えると
幼子が指差しをする
「{注 =作り上げられた神話と 投影される閉鎖空間}{注 =流れ星に三度繰り返す 叶わない願いを知り}{注 =飲み干した声は虚偽に 僅か震えて反響した ....
三十年前
嫁入り道具として
持ってきた物の中で
二番目に
大切な物たち
そこに時間があれば一服
そこに空があれば一服
そこにたばこがあれば一服
吸える範囲は狭くなる一方だけど
そこに自分の場所を見つけてはまた一服
自明なるものに囲まれているから
ぼくらの内側では
一切の悪が育ってゆくのだ
風景としての自分に
すっかり慣れてしまったぼくらは
生まれた瞬間からすでに年老いている
という叫びの正当性を ....
何も
何も ない
ただ 広がる
空を 見上げる
都会の喧騒を
歌 と いう名の
他人 の 世界で 打ち消しながら
貴方の いない
この 世界 に
僕は また ひとり
....
中華屋喫茶室という店に来ている。窓から交差点が見渡せる席に着き、もう二時間が経っている。
大昔に恋人だった男から電話が入った。
きつねの嫁入りがあったので、瀬戸内の海辺にきている。せっかく ....
ひかる
きおくの ....
挨拶代わりにスカートを捲ったり
身長の事をからかってみたり
あいつを目の前にするとなぜか
いじわるしたい気持ちになるんだ
怒った顔を見ると楽しくて
お弁当のおかずを横取りし ....
うちの高校の美術教師(以下、じいさん)がある男の話をしていた。
その男は美術予備校の教師に
『君は武蔵野森に受かる実力を持ってるよ、頑張れば』
と言われそれを信じたそうな。
男は受かるはず ....
君は鳥が好きですか
僕はどちらでもないです
桜が咲くと嬉しいですか
僕は土手で寝転びます
今日は何か音楽を聴きましたか
僕は鈴木茂を二回かけました
夕ご飯は美味しかったですか
....
警察に殴られた
その眼つきは何なんだと言われて
思い切り殴られた
だから殴り返してやった
煙草を取り返して ついでに拳銃を貰った
白い自転車にまたがって 急な坂を転がる様に下る
ブレー ....
激しい襖をぶち破り
紅子はまろびでた
紅子の真っ白な足
紅子姐さん今日はもうお帰りなの
ああ帰るよばかばかしいったらありゃしない
紅子姐さん
またおぐしに真っ赤な牡丹つけて ....
隣の席のゆういち君と
昨日から廃屋係をすることになったことに
泣いていたら「弱虫」だと怒られた
だって私は女の子なのだ
毎日友だちとお喋りしながら帰った
スクールバスにもさよならしなけれ ....
おそらく犯人は、チューガクセイだ
彼らは初めてのお酒を1ヶ月前に飲んで
初めてのタバコを一週間前に吸って
きっと、まだ、全然童貞だ
ね、時間と希望だけは誰よりも持ってる向こう見ずな ....
わずかばかりのバイト代の一部を
母に送った
スーパー銭湯にでも行ってきてよと
妹が赤ちゃんを産み
子育ての大変さが分かった
ずいぶんと親を恨めしく思ったものだが
記憶がな ....
この先が見たくて
ここを越えて新しい
世界や自分が見たくて
深夜に太陽が昇る
俺は頭に血が上る
まだまだ、自分の宿命を見つけることできず
モラトリアムな時を過ごす
あちこちに回る街には
それぞれのドラマがあって
知る由もなく
....
コンシェルジュリーに棲む女
人は醜女の心を持つと言う
不能の旦那の種で生まれた
愛しき結晶を抱いている
コンシェルジュリーに棲む女
愛した人が手を差し伸べる
掴めぬのか
....
お前の髪の匂い
覚えたよ
お前の髪の匂い
覚えたんだ
他の女とは違う
わかるんだぜ
そんなお前に
死んだら何をあげようか
指輪かジッポか
それともこの骨か
何をあげようかね ....
お話伺ってもよろしいですか。
いやあ、素晴らしい跳躍でした。
切なさからはかなさへの大ジャンプ。
パーソナルベストも更新しましたね。
最後の直線で希望と絶望、
熱望や羨望が入り乱れる中でも
....
あきらめたように
あなたは
横たわった
目を見開いたまま
この世の最後に
見つめる風景は
あなたの愛した場所かしら
それとも
思うほど
劇的な何かが
あったわけではなくて
....
隣に座った
109番目の男
最後の番号を振り分けられた
私の隣で
じっと前を向いている
彼はどの煩悩の担当からも外された
「一緒にいても楽しくない」
他の煩悩担当者たち ....
流れる青
ゆらりと空
昼過ぎる頃
水面のはためきは穏やかです
さりさりと 小さな冬は降りますが
彼はより一層 自由に空を
空と建物の切れ目
闇間にゆくまで
....
小便雨は蒼い空を呼び
蒼天は太陽を
湿度は入道雲を産み
眉間に垂れる汗は咽喉を乾かす
空は何処までも続くけど
移ろいは早過ぎて
通りすがりの薄着の男女は
駆け足でつまづきながら、走り ....
バイトを休み家でAngbandをしていたら
光熱費協会が来てインターホン越しに今月払わなければ電気とガスを止めると言うので
俺は詩人だというと
何か機械で調べだして
えーと馬野幹さんですね、な ....
新年
水槽に光の文字が泳ぐ
声に反応して
ランダムに現れるそれらを
熱心に掬う子どもたち
たまに
とてつもなく大きな言葉が
揺れているとも知らずに
ふたりみたいな
ひとりぼっち
ある日松葉通りで少女を助けた.
少女はガラの悪い男に絡まれていたわけでもなく
落とし物をしたわけでもなく
道に迷って途方にくれていたわけでもなかったが
助けを求めており
僕はそれに答えた.
....
麻痺させて
麻痺させて
麻痺させて
名前も知らない、誰かの
口で、指で、胸で、重みで、速さで、
あたしの身体を麻痺させて、
あなたに逢いにゆくの
変ね さっきまであたし
と ....
こんなにも、淋しい冬なのに。
一人で、缶珈琲なんて呑んで。
イヤホンからも、しんみりした唄。
なにやってんだよ。
フったんなら、幸せになりやがれ。
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