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秋の蝶水平線を縫うように
冬木の芽頑固親父の如き顔
菊一輪微笑む姉の一周忌
遠く聞く落ち葉踏む子のはしゃぎ声
長雨や語る昔の老夫婦
秋麗に言葉少なく過去を詠む
蓮の花天を指したる羅針盤
ソーダ水燃えて消えゆく星ひとつ
風鈴の 脆き響や 平和の音
青空と麦畑だけありにけり
道端に 老いを養ふ あせびかな
こぬか雨骨にしみいる寒さかな
春の雨歩みは遅く花遠く
想ふても雨に流され春の宵
手賀沼やキラリ水面に春来たり
菜の花や見舞いの窓に陽の光
白菜で一本つける宵の口
鍋囲む湯気の向こうに赭ら顔
年の瀬や首すくめたる曇り空
春うらら梅香る城散歩猫
昼寝猫はなさき薫る梅一輪
黒猫が丸く膨らむ春うらら
黒猫や背に梅の香を漂わせ
蛙
ちりとりで雪掻く朝やねこまんま
秋深しとっとと黒猫歩きけり
紅葉舞う掌の中のぞくはてな猫
落ち葉踏み尻尾を立てて猫二匹
蛙
ハロウイン電気を消して居留守の夜
野の錦黄金船が宇宙翔る
コスモスできらいすきすきだいきらい
赤とんぼフレフレ赤勝て白が勝て
今秋も流行りは赤だと鷹の爪
本年の出来はどうだと柿に聞き
もう少し渋いようだと鵯が鳴く
火恋し抱えて帰 ....
色鳥の彩(いろ)美しき姿かな
虫の音は生命(いのち)の調べ闇照らす
彼岸花畦道の縁飾りゆく
日常の喧騒忘る花野道
秋の燈やひとり静かに瞑想す
初恋のつめたい指先冬のみち
さびしさにレモン投げたい冬の空
小鳥らはだれのために泣いてるの
初恋は曲がりくねって青白く
宝石のように輝け遠い未来 ....
切なさをあつめてひらく夏椿
青梅の香りにも似て初恋は
後悔と勿忘草の淡い色
酢漿草の種が弾けて夕暮れる
赤色を零してなお紅ばらの花
寂しさの数だけ蒼く紫陽花が
....
どんぐりもおちる影なし 古隧道
吾の庭に 身の程知らずの柿がなる
干し柿を目印にする 祖母の家
花売り場蝶々が来て妻笑う
夕暮れて初夏の花揺れ連れ立ちて
雨の日の初夏の坂本うすらさむ
街角で意味が言葉を待っている
路地裏で言葉が意味に迷ってる
大通り概念だけで埋め尽くし
僕はただ謝りたかっただけなのに
街並みに黄昏れはじめた君の影
時計草針の向こうの夢ひとつ
真夜中をライトの如く照らす柿
天空の光で騒ぐ紅葉かな
露草の青は空へと溶けて消え
縞猫が寝床へ運ぶイチョウの葉
阿呆鴉柿の実一つ落とし行く
炎昼を赤子の声で鳴く蝉や
誘蛾灯十枚の爪かかりけり
泳ぎきし手足を埋めて砂の城
真夜中の汗つま先へ到達す
扇風機ふいに大きく頷けり
蟹踏みし踵より蟹生まれ{ルビ出=い}づ ....
紫陽花は誰かのために色を変え
庭先に咲いた牡丹が欲しいか嵐
木瓜の花闇夜に燈る灯のように
足跡を残すが如く咲く菫
向日葵は子供の顔を覗き込み
扇風機止めて静まる夜更けかな
夏葱や魔法使へた少年期
麦藁帽誰かの思い出波に消ゆ
夏草や旅の鞄に陽が落つる
教会の鐘を逆さに春の闇
わが死後は一匹の蠅のみ知るものを
澄む空とわが髪からむ青嵐
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