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ふと
足を止めたのは
なにかあったからでなく
なにもなかったからだった
足の裏になにかをうったえようとする
灼けた砂のいろがわかる
まわりの景色とおんなじはずだ
きっとそうだ ....
鈍く
重い
灰皿のふちを
舐めたかった
かわいた舌で
逃がさぬよう
一心に
ただ
かわいた舌で
呼ぶことが
できなかったから
ただ
かわいた舌で
誰かでなく
私 ....
不意に、もうひとり帰ってくる気がする
母は家にいて
私も家にいて
弟が帰ってきて
もうひとり弟が帰ってきて
それから父親が帰ってきて
机に張り付いて私は耳を澄ま ....