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台所の流しの前に突っ立ってひとり
母が黙々と八朔を食べている
手際よくむかれては口に運ばれる寸前を
遠慮なく横取りした 娘だった頃
母の顔はおいしそうでもうれしそうでもなかった
自 ....
枯れ蜻蛉の体は青かった
貝の内側ように鋭く光る腹
砂漠を行く風は 美しい彫刻をつくった後
その青みでひと休みした
もっと小さな虫たちは その鮮烈に心を手に入れた
今はもうどこにも
ひ ....
おまえがなけりゃ ああこんなにも哀しい日々
ぽっかりと穴のあいた虚しさよ
おまえがなけりゃ人生は こんなにも
ゆたかになるはずがなかったのさ
歓びの朝も 愉しい午後も
夜には星のささや ....