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色褪せた壁に守られている
懐かしい匂い
ぼくはその匂いをかみしめながら
坂を駆け上る。
水びたしのカフェが
あなたと出会ったテーブルに
傷痕を残す
何かといえば
鉄塔がさえぎる ....
朝、
雪が降っている
まっしろな空を見上げると
うそが
落ちてきたよ
つむじの風といっしょになって
転がって
そうして
通りゆく人びとのコートをかすめ
ふらっと
ぼくの背中を
貫 ....
おはよう
明日の光を浴びる観覧車
地軸の傾きに反応したゴンドラが
少うしだけゆがんで
カラ、
ラ、
カラリ
まわりはじめると
冷たい大気に
隠されていた痛みが染み込んでゆく
....
前線が
ぼくらを踏みつけにして
粘着質の雨を停滞させる
内臓は肋骨にぶら下がったまま
くるくると渦をまいて
今日の天気に反応している
こみ上げてくる葡萄の粒、
胸で弾けて
お気に入りの ....
雨が走り去ると
レンズになった大気が
緑を浮かび上がらせ
耳の輪郭を追う
待ち望んでいたタオルケットが
部屋をすっかり包みこんで
静かに反省をうながす
今夜のニュース
鐘の、音 ....
詩になることで
一歩ずつ押しだされ
ひとつ
またひとつ
人間になっていく
詩になれなかったぼくが
水溜りに転がって
ぼんやりと
道行くサラリーマンに踏み潰されるのを待っている
....