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平原を行く象の群れは
なぜかいつも
夕日を背負つてゐる
象よ
夕日をいづこへ
運んで行かうといふのか
そのゆつたりとした足取りで
夕日を
悠久のかなたへ
返上しにゆくのか
....
山麓の寂しい町に
月はかうかうと照つてゐた
すべての人が
月を見たわけではないけれど
みんな
ボールを胸に抱へるやうにして
眠つてゐた
海はまだ広がっているけれど
ぼくはもういらない
―窓を閉める―
室内が戻ってきて
マチスの絵がまぶしい
木椅子
ポトス
絵の中で金魚が{ルビ捩=よ ....
鐘の音がひときは澄んで響いてゐる
高原の牧場
風は爽涼として
日は明るく照つてゐる
ここに一頭
健康優良の乳牛がゐる
乳が溜まつて乳房が張るものだから
たまらずク ....
暑い日だ
こんな日は
私にパラソルの女が
寄つて来る
女が来ると
私もパラソルの陰につつまれる
―日盛りに
ぼんやり立つてゐると
日射病になるわよ―
....
荒き野に
異香放てるひとところ
{ルビ頽=くづ}るるばかりの山百合なりき
五月雨のホームに
長く停車する
灯は明々と空きの電車よ
北海に
まなこ鋭 ....
蝶は闇夜に飛んでも
光つてゐる
星のあえかな光を受けて
光つてはゐても
いつも光つてゐるわけではない
星の暗い瞬きのやうに
....
夜
一羽の鳥が生れる
絶え絶え灯つてゐた
電球の切れた 丁度その辺りに
これからは おまへにだけ見える
明りを頼りに
羽ばたいていくだらう
....
あなたの瞳に映っている森が
あまりにも美しく澄んでいたから
僕はあなたの瞳を押し開いて
中へ入っていった
あなたは目の前にいた僕を見失って
慌てふためいている ....
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