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遮らない丘
ひとつを声に出してみれば
心音
と、一日の間で生れ落ちていくもののような
確かな揺らぎを伴った答えが
僕らの間には流れ込んでいる
広い、広い丘
両手を広げれば満ち足りていくよ ....
まるで隠れるような三月
全てを終わらせた昨日から
跳ねるように帰宅する君たち
その隣の景色が輪になっていく
循環する道程を真っ直ぐだと
いつまでも信じているものだから
中空に飛ぶ鳥の
....
指先はあたたかい
たぶん、その、ほどけていく瞬間まで
写真の空は記憶よりも鮮やかで
古い団地の隙間から
見上げるのはたくさんの
呼吸のない、窓
手のひらに
折りたたんだ空
に、記載 ....
蓋の閉まった街の水嵩が誰にも知られずに増していく
なんという、静けさ
塞ぎ込む窓辺に君は寄り添って、透き通る視線で景色を
混ぜるように空を、抱えている
明るく、楽しく
昨日のことを語れる ....
なので、
朝食にはレモンを選びました。
細い腕で積荷を忘れられず撫でる、
あなたにはぴったりだと思うのですが。
あどけない思い出は、見ない振りで通り過ぎ
ることを許してくれな ....
静かな森に
命の眠っていく音が響いて
今日、一日の心音の数を
手のひら一杯に数えて
それを大きく
飲み込むように
明日へ繰り越すための挨拶をすると
その分だけ誰かが、ほどけていく
....
何を思い出せば
幸せになれるというのだろう
始まりは
遠い海の底の夢でした
船底を擦るようにして
人は、人は旅に出て行くので
いつか大きな音を立てて
傾いていく私たちのために
....
そのように、生きてみたいと願う
いつまでも二階より上の景色に臨めなくても
遠い車窓に同じ肩幅で揺れているだけだとしても
ノイズ混じりのカーラジオの表面に
透き通らない感情を混ぜている
....
雨がまた積もっていく
雨音がまた積もっていく
その分だけここは、静かになれる
抱き合うだけの幅を残して
昔の夢のかたちを探り合う
窓を伝う雨粒の落ちる、速さ
遠退いた距離の分だけ、今の ....
足音が
大勢の中に還っていく時
遠くで自転車は雨音の中に忘れられている
少年が
少年のままで頭を下げながら生きていく
そんな時々、あれは私たちが作り上げた
屋根や壁や、縁の無い窓
遥 ....
滴が。
朝の、
窓枠を二つに分けるようにして落ちていく。
今も手を伸ばせば壊れてしまいそうな足跡。
遠くなっていく風景写真をいつも隣に置いている。
あの日、行方知れずの人が今も笑いか ....
その言葉を初めて聞いたのは、
まだ、あなたの海にいた頃。
大きすぎる手のひらを隠そうともせず、
揺られる海の深さを世界と思っていた頃。
右へ。聞こえる、聞こえています。
右へ。手のひらを。ぐ ....
今だってこんなふうに並列される風景だから
昔はもっと、単純だったように思う
思い出したいことは泡に溶けていくように
雨よりも深いところで打たれてみたり
風に引かれていく後ろ髪だったり
....
計算外の出来事が方程式の上を埋めていく。それほどのこと。滑らかに、滑るようにして動いていく景色を、雪のよう、と思ったのは。確かに伝わっていたように思う。
手を合わせて、あるいは重ねて。次第に動け ....
月を落せると信じていたから、いつか触れようと誓い合う。
ゆっくりと近づいてくる景色を、
遠ざけようと、するために眠る。
いつからか儀式となった風景を、懐かしいと君が言った。
首をかしげ ....
明るい夜も、暗い夜も、それぞれに色々な夜があったけれど。
遠く回り道をするように。言葉が言葉からそれからを選んでいくように、一瞬だったものを、ふと、足を止めて拾い上げてみれば。もう、「それか ....
失くしながら覚えた言葉。足りな
いものを補いながら繋いだ寂しさ
だから、朧、月夜には下る舟の切
なさがあって、どうしようもなく
なる。あなたの夜は越えますか。
....
優しく、なりたい
暖かい部屋でうずくまると
人たちの裏側が透けて見える
思うほどには
複雑に出来ていないのかもしれない
優しくなりたい
おはようと言うように
季節を捲って ....
ただいま
と、呼べる場所をいつもこの手の中に持っている
気付かないほどに当たり前の鼓動の中にいる
夜更けへ向けて風速は加速し続けている
明日を見渡したいから、と
君は潜望鏡を買ってき ....
砂糖が乾いていく
あるいは溶けていく
運ばれていく
最初からそこにはなかった
かもしれない
舞う風、の風上
私はただ口を開けて
私の中を乾かすことを止めようとしない
追い掛けること ....
薄暮れて
眠り続けた一日が
黄昏に、朝と夜とを迷う視界に
君の小さい、窓辺に向かう後ろ姿が
棚引いて
まだ平原には届かないから
打ち寄せる波がこちら側を削っていくのを
た ....
夏祭りの音の屋根
迫り出した空のかけらは
まだ遠い、午後の私へと溶けていった
古い夢の神社の石段を
ひとつ飛ばしで駆け上がれば
頼りない心音のままで
私はきっと、そこにいる
夏の夕暮 ....
物置の中では
今日も途方に暮れたものもの、が
自然な姿で融解しあっている
主人は今日も不在だった
あと何年、ここに居ればいいのだろう
ありがとうの行き先を
いつも間違えている気がして
....
「輪郭はね、大きすぎない方がいいと思うんだ。
両手を、こう。ゆらりと、一杯に広げたくらいの」
朝の電車は
どこかに海の匂いが紛れている
だから皆、溺れた ....
見知らぬ人から葉書が届いた
元気ですか、とだけ書かれているそれに
元気ですよ、と応えてみても
一人の部屋は結局一人だった
置いていかれた
この街も、いつの間にか色が薄くなってきている
....
振り分ける少女の、
想
名前もない
痛む、芯も
未完成な少女の主題は
誰にも知られない、それだけの行く末
本を開けば文字に溺れた
さかなに、なりたかった
揺らぎ揺らすからだの線
....
ささやかな私たちは
長い夜、ごとに膨らんでいく
収まりきれない部屋の、隙間に涙を込めて
名前を、呼ばないで
私たちを訪ねる人たちの
声がはぐれていくから
月夜に
ゆっくり ....
さあ、消えていこう
ほんの少しの朝食を
僕と君とで分け合ってから
いつもの通りに鍵を閉めて、出かける
いなくなるという夢を見た
そう伝えると
青色の封筒を渡されて
そこだけは、確 ....
知っている、いくつかのこと
夏の庭の緑色のほんの抜け道とか
結局隠し切れない足跡だらけの秘密とか
忙しい時間の合間を縫って
何度目かの夏について語り合う
語る言葉の分だけ夏は増えていき
....
事故でしょうか
街は騒ぎ始めて
右手と左手を合わせるカーブは
さよならを言う前に出会ってしまったのでしょうか
空はまだ海になる前で
息継ぎも満足に出来ないまま
底で跳ねるうろこの心音を ....
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