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左腕だけが鋏に火に触れる
指五本喰らうべくして音喰らう
月尽きて地に声低く骨の笛
水滴をはらうが如く己れ斬る
塩を越え空の辻 ....
暖房やあなたは紐の多い服
おじさんは生きてって言う冬の蝶
朝礼の真中を進め砕氷船
冬眠や父は微妙に膨らんで
着ぐるみの覗き穴から初景色
袖口がほんのり臭い春隣
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アーモンド舌噛んじゃった冬日かな
黒鍵の押されて戻る五月闇
桜桃忌知らない人と手をつなぐ
火取虫それは愛かもしれないし
まっさらな手首でかきまぜるプール
かさぶたのやわくなるまで水 ....
父去りて夏去りて今日ほどく紐
熱を捨て陽は降り急ぐ石の丘
涼やかな花には寄らぬ鳥と虫
触れるほど水はすばやく風深く
誰ぞ置く錆びし{ルビ ....
うつし世は春雨なりき芝居果つ
渡り廊下の左右より春の闇
洗ひ髪夜しか逢へぬ人と逢ふ
揚花火仰ぐ横顔盗み見る
首筋に跡を残せし残んの蚊
衣かつぎ妻は家では酔へぬも ....
水仙の似合ふ家族に招かるる
夕影に音無くこぼれ花辛夷
蒲公英やサーカス団の来てゐたる
駅前の鳥獣保護区風薫る
青空に溶けて仕舞いし雲雀かな
渡し舟落花の水に待ちゐたる
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