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電車の中で
窓に映る彼の顔を見つけた
目は虚ろで
その顔からは生気を伺うことはできなかった
「笑いなよ」
そう思ってみる
「何そんな不景気な顔してるの」
そう ....
ほの暗い駅
列車の中で一点を見つめている
あなたの眼差しを見送る
”お気をつけて”
その一言だけが伝えたかったのだけれど
ベルが鳴り止んで動き出したのは
列車ではなく
ホ ....
おふろに一緒にはいってくれるきみへ
にくにくしいねといったときに
なぐらないでくれないか
わたしはこんなにほねほねしいのに
といったときに
胸のふくらみをつつくのをやめてくれないか
と ....
むかぁし むかし
あなたはわたしに
うそ ついた
「またあえるよ。またこんど」
あなたはかえってこなかった
わたしはずっと
まっていたのに
あなたはおそらへ
きえたのね?
「町田康みたいになりたい」
と言って出ていった人は
「みたいに」
と言う時点で
きっと 駄目なのだけれど
そういう私は
映画館で赤い便箋を買って
別れたい男に
「愛しています」 ....
兎の好きな彼女のために
ペットショップで衝動買いをした
白地に茶色で小さくてかわいくて
その頃僕たちは同棲をしていて
彼女はその兎をピーターと名付けた
2DKのアパートの寝室だっ ....
妻よ
おまえが夜眠っているとき
味噌汁は走り出すのだ
家人が寝静まると
味噌汁はお椀にはいり
玄関からそっと抜け出し
町内を走り出す
味噌汁は走る
(けして薬罐が空を飛ぶのではなく ....
〈君がマンホールの小さな穴に吸い込まれる〉
もう何日にもなる。
だから僕は一刻も早く、君を探さなきゃいけなかった。
ずっと寄り添ってきたはずなのに、何も言わずに君は夕焼けと一緒に行ってしまった。 ....
イメージするということ
たとえば
ゴキブリいっぱいのプールに放り投げられるということ
眠っている間に鼻の穴から寄生虫を入れられるということ
イメージするとい ....
幸せいっぱいなの、と事実を述べたら、
男Aは言いました。
「俺は夏にスキーをしないように、女はいらねー」と。
つまり、それは季節外れと言うこと?
馬鹿じゃないの。
ホントに愛を求めな ....
ぐいっとひっぱる
過去がひっぱる
ぼくをひっぱる
引き戻す
引き戻される
引き戻す
じっとたえて
ぐっとこらえて
ただふんばる
ただふんばる
自分の名前がついてるとも知らず
いわしは
雲を見ていた
自分の名前すら知らないままに
その赤く染まるのを
感情の吐露です
それは美味いのですか
脂がのってるのですか
私は場違いではありませんか
大将、
はちまき ずれていますよ
ずれているのは何だっけ
そ ....
大切な人への手紙は
必要以上に 重い部分をを伝えてしまうから
僕は二通の手紙を作ります
さらけ出す文を一通作って
あなたに出す二通目のほうには
一通目の表面だけを丹念に ひろいあつめ
恥ず ....
よるはわたしをまたず迫ってくる
気がつくとあたりはくらく
わたしは電気をつけずにふとんにくるまる
ひるとよるの境目が
きいきいと鳴くおとでめをあけると
よるが目の前に立っている
わたし ....
ママ、雪が降ってきたよ
その晩、子供は
雪だるまをつくる夢を見ました
くそっ、雪が降ってきやがった
その晩、八百屋のおじさんは
明日の売上が気になりました
ああ、雪が降ってきた ....
ロボットは町中の人々に
自分はロボットであると言って回った
町中の人々は
確かにお前はロボットだと答えた
しかし、ロボットは
俺はロボットの言うことしか信じない
と言い続け
ある ....
けずるけずる
今日もけずる
けずれるものは
全てけずる
みがくみがく
今日もみがく
みがけるものは
全てみがく
ふくふく
今日もふく
ふけるものは
全てふく
けずっ ....
おいっ お前
そこのお前だ!
お前は「世界」という単語を使って
詩を作っているだろう
だからいつまでたっても
ウダツがあがらないんだ
少し人に優しくされただけで
「世界は優しさでできてい ....
つながりと呼ばれるもの
つかむと消える不確かなもの
近づけば近づくほど感じる距離
つなぐものなどない
人であるための限界
肉体に宿る 精神の限界
混ざりたい
二人でいたくない
溶け ....
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