雨になると知っていて
電車が止まると知っていて
今日はひきこもると覚悟していた
だけど何かをずっと待っていて
いつでも飛び出せるようにと覚悟していたのも事実
夜がはじまり
喉が ....
言葉を家へ持って帰る
言われてしまったことを
言わずにおいたことを
持って帰っても
家の人には言わない
代わりに別のことを言う
家の人が安らぐことを
自分の気散じになることを
そうする ....
どこかでいっていた
これは歩行ではなく、舞踏
おそらくワルツではなくてポーレチケ
農作業の脇にあるビニールハウスの片隅の
犬に養われている小菊
下り坂の途中で干からびてい ....
もう腹を立てたりするのはやめよう
ぼくにはひとを裁く権利などないのだから
あらゆるイマジネーションを使って
ぼく自身に置き換えてしまうのだ
身に覚えがないとしても
身に覚 ....
しみついた薬の色や
ステンドグラスの窓の響き
机を隔てたくらいでは逃れようもないのだ
天意がのびていく
だがどこまでのびていくのだろう
患者(クランケ)の上へか?
それとも裁きの席へか?
....
宇宙の中心に
じぶんを置いてしまうから
厄介がうまれてしまうのだ
宇宙の中心に
じぶんを置かなくたって
どうせ置いてしまっているのが
じぶんというものだ
....
雨の中で開かない傘の重さを
忘れられず捨てられもせず
晴れの日には大きく腕を振って
あてもなく足を伸ばしたい
線路の向こう側は幹で
こちら側は根だと教わる
街路はひと続きのようでも ....
幸い
私たち一人ぶんの空洞と
それを支える立派な外骨
喩えれば愛らしく可愛い舌の在るべきに
奥深く続く快きには臥せる
咀嚼の姿が見えていない
曖昧な自己愛の愛を隠して笑う
生 ....
氷の女の子がすき
輪郭
が凍てついていても
じょうずにあいすることができなかったよね
いつも白昼夢ばかりみていた
引金をせおっている。ぎゃくりゅうしたクウカンがわたしに点滴し ....
廃墟 と呼ぶ 騒がしい 時間は 鎮まる わかってしまいたくないのに、目を離せない いっしゅんの うちに 瓦礫の 写真は ....
いっしゅんのうち瓦礫の小さな季節は短い
ラジオを潜在意識のプロトコルのあらすじを快晴のわれわれの中にいた小さな人がやっと後悔する
貨幣の価値ちょっと目を離した隙に街は真っ黒な瓦礫が予期せぬ美しい建 ....
ジュリアーノ・ジェンマって俳優が好きだった
目深にカウボーイハット被り腰のコルトに手をやる刹那
呼ばれてもないくせしてサボテンの根元に転がる根無し蓬がわたしだった
ベッドのなかでもブーツ脱が ....
*
群れから{ルビ逸=はぐ}れた独りぼっちのちっちゃな猿を見たんだろう
{ルビ無花果=いちじく}の果肉を齧る時、血の匂いを懐かしく想えばいい
もう既に朽ち果てた枯れ葉が寄せる ....
ぽかり ぽかり
夜のしじまに打ち捨てられた浮子
私たちは空っぽで
球殻状の胴と櫂そっくりの腕を持ち
従順なコンパスで無の瞼を開く
それは
大気と水の触れ合うとき
底無 ....
薄情な黄色信号が回れ右して
今夜は空に麒麟が泳ぐ
街の宝石の輝きの中、
エルヴィンのビートが
麒麟の鋼の鱗を叩くと
コルトレーンのブローは
燃える上空に赤銅色の汗を射精する
....
土曜日のドライブに出る始まりはベートーベンのカーステレオ
川の辺の野はさみどりに広ごりてやや曇りたる秋の真昼に
車窓より心地よく吹く風ととも車は走る小浜市へと
山際に黒い雲あ ....
退屈そうな視線と頬杖
残暑は緩やかな日々に降り注ぐ
片時も放さないでいたい願望
眠気を忘れて胸が痛くなる
もっと夢中になるために
知らない声を集めよう
迷いの森の中
ずっと深く入 ....
月夜に現れたみずうみに 僕は裸になって
飛び込んだ。別に入水自殺をしようってわけじゃない。これは
ひとつの儀式のようなもので、言うなれば自然との同化、共有
されるファイルを独り ....
ものがたる 星から ふってくる
はねのおと
ほろんだ鳥族の 夢が はかなく
僕の部屋の 窓辺に
ながれ つく
星をねがう
走鳥類のまつえいが
ねむる
広げた灰色の つばさが
....
青鉛筆
秋の日
春の日
冬の日
夏の日
4色クレヨン
秋の陽
春の陽
冬の陽
夏の陽
午前中は半病人だった男が
退化しつつある
足腰膝に鞭をいれるべく
午後は散策の人となる
ひなびたプロムナードのかなたにうかぶ ....
愛はただよい。ただよいにけり愛ならばただ酔ひにけりただの{ルビ媚薬=びやく}に
ふれるならあなたのまぶたしたさきでふいにふられるふあんのまえに
ふれるなら舌でふれやうそのは ....
ビーカーのうわずみに春ではない
赤茶けた花のぬけがらが
私)洗浄したアセトンを吸わせてみる
結果は /遅いね、
光のみぞに
名札の傷をはがすと
一番多くあらわれた歌姫がかしいだ
....
火! 君に 呼び掛ける 怒り
傘の下で ブラインドへ 灯す
神は ころがりおちる
群がるもの 空が焼かれる事を知る
女人の片足
あらゆる 大絶賛を 受ける
後程 アンダ ....
ガラス張りの建物
プリズムがドームに広がる
赤と青とキイロと緑の風車が大きく回っている
その風はドームの中の人の頬の産毛をうらして
鼓膜に圧力を与える
巨大なエスカレ ....
ついてくの
まえ歩いてる
羊にね
そいつがさ
どんな惨めな顔しててもね
羊はね
ついてくんだよ
一緒にまわりと
まえ歩いてる羊にね
それとね
習 ....
繋がって
また
諦めた
歯がゆさで
ワンマン電車が走っていく
わたしの
肯定を知りたい
たくさんの競争心を
おぼえたふりをしていたらしい
甘やかされている時間にはふと
だれ ....
トリコロールカラーを織り混ぜた不協和音が
螺旋状に響く午前2時
F♯dimとB♭7がクロスした地点に
ジンジャーエールを凍らせたような結晶が生まれる
そう、今わたしの左の腰に小さな氷山が突き出 ....
やましさに
ついて、
きみに頬ずりした、量を
増していく、雪の
なかに
埋もれていくように、夜に、きみに
ついて、話していた
電話は
途切れた、雪に覆われている、潜みで
....
いちばん星!と君が指したあの光は
いつ故郷を離れ
どれくらいの時を経て
君の瞳に届いたのだろう
大嫌い!と君が叫んだその言葉は
いつその心に芽生え
どれくらい君を苦しめて
僕の心 ....
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