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炎天下の路上に
{ルビ蝉=せみ}はひっくり返っていた
近づいて身をかがめると
巨人のぼくにおどろいて
目覚めた蝉は飛んでった
僕の頭上の、遥かな空へ
瀕死の蝉も、飛んだん ....
人間は汚れている。身も心も。
人の世のニュースを写すテレビ画面の中で。
私の姿を映す鏡の中で。
全ての日常は、色褪せていた。
*
一人旅の道を歩いていた。
信濃追分の風 ....
「幸福」を鞄に入れて、旅に出よう。
昔日、背の高い杉木立の間を
見果てぬ明日へとまっすぐ伸びる
石畳の道
君と歩いたあの日のように
( 舞い踊る、白い蝶々を傍らに。
....
照りつける夏の陽射しの下
墓石の群を横切る私の地面に頼りなく揺れる影
一瞬 頬に見えた{ルビ滴=しずく}は 涙なのか汗なのか
( {ルビ嘗=かつ}て 一途だった少年の恋は
( 夏の夜 ....
足元は、崩れている。
真っ直ぐ歩くことも{ルビ覚束=おぼつか}ず、
肩が揺らいでいる日々。
( ぼくの脳内には
( 壊れたリモコンが内蔵されている
胸を張れども三日坊主。
....
今日は職場の老人ホームの納涼祭であった。通常の業務を終えた
後の18時半に始まるので、正直勤務中は、「今日は一日、長いな
ぁ・・・」と思いながら働くのだが、いざ盆踊りが始まってしまえ
ば、暮れ ....
私とあなたの間には
数十億光年の距離があり
互いの影はいつまでも交わることなく
仮想の白い空間を歩き続ける
( {ルビ孵化=ふか}を知らない孤独の闇に{ルビ包=くる}まれて
( ....
空白の空間に立つ彼の前には、
「{ルビ0=ゼロ}」の文字が浮かんでいた。
「0」に足を踏み入れ{ルビ潜=くぐ}り抜けると、
そこは社会に出て間もない頃の職場で
七年前の彼が先輩達に囲 ....
( 窓の外から聞こえる
( 鳥の{ルビ囀=さえず}りと共に目覚める朝
( 全ては「無」へと消える
毎晩
枕は「夢」をのせている
閉じた瞳
繰り返す寝息
空っ ....
リルケはトルストイの家を訪ねた。
彼の家は、家庭紛争の最中であった。
( 伯爵は、握った杖を叩きつけ・・・
眉を{ルビ顰=しか}めて玄関へと歩いて来るトルストイ。
リルケの肩に手を ....
立ち位置を、探している。
いつまでも見つからない、
足の踏み場を。
もしくは、
消えてしまった君の幻を
抱きしめる、
世界の中心を。
人波の川が流れゆく
この街の中で、
....
小雨の降る夜道を歩いていた。
ガラス張りの美容院の中で
シートに座る客の髪を切る女の
背中の肌が見える短いTシャツには
「 LOVE 」
という文字が書かれていた。
....
今夜 私には
逢いにゆく人がいない
孤独な夜の散歩者は
アスファルトに響く雨唄と
ビニール傘に滴る雨垂れの
二重奏に身を浸しながら
果て無い雨の夜道を{ルビ彷徨=さまよ}う ....
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