すべてのおすすめ
◇暮れ
年が暮れる
暗い時代の予兆は
そのままに
初日は
それらを
もろに背負つて
出てくるだらう
◇木にぶつかれば
蝸牛は彼なりの歩みを
何昼夜もつづけて
....
なぜ湖がよいのか
一望にできる姿をしてゐるから
瞳のやうに澄んでゐるから
四囲の風景をとかして
もう一つの世界をつくつてゐるから
おそらくそれら諸相に根ざして
....
◇光
雪山には
光が爆発してゐる
人影はなく
光の爆発はつづいてゐる
◇粉雪
粉雪がさらつてゆくものは
甘い想ひ出と
酩酊
ちりち ....
来る日も来る日も
欲しいだけの陽は降り注ぎ
水の恵みも充分受けてはゐたが
代はり映えのしない日々に
嫌気がさして
葉叢のなかの一枚が
ある日 ひらりと裏返つた
―決して気紛れでは ....
ダチョウはいきなり
炎天の平原を走り出した
太い頑丈な足で
砂地を蹴立てて
彼の後ろには
砂埃が舞い上がり
動物たちは
砂つぶてをくら ....
山麓の寂しい町に
月はかうかうと照つてゐた
すべての人が
月を見たわけではないけれど
みんな
ボールを胸に抱へるやうにして
眠つてゐた
落葉の中を走る鳥は
悲しい鳥だ
飛べないかはりに
足は太く節くれ立つて
駝鳥の足のやうだ
このしつかりした足で
枯葉を大仰に鳴らして
進むのだから
化け物が暴れ回 ....