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十くらいはなれた
妹に
よく似た娘に
やさしくしてしまう

やさしくした後で
そのうかれた顔は何だと
誰かに言われたわけではないけれど
きっと僕は
そんな顔をしてる

もっ ....
 
かくしごとなんて
はじめからなかったはずなのに
生きてると
知られたくないことの
ひとつやふたつあるものでした

できることなら
椅子に生まれて
何も思わずにただ生きて
人を支 ....
 
下校中
ぼくは君の背中ばかり
見ていた気がする

とても小さな水が
生まれる場所をめざして
いつもの帰り道は澄みわたりながら
永遠みたいに流れていた

君の背中はとても自由に見 ....
 
きのうの夜
妻とけんかしたのだ
きっと疲れていた
今日は帰りたくなかった
だから僕は家の前を通りすぎていった

同じ色の
とても小さな家が
線路沿いにつづいてる
青でもなく緑で ....
 
幸せなときに限って
幸せを知らない
河原のベンチに座りながら
そんな時が誰にでもあるように
思うことがあった

ベンチに座ると
夏の虫が僕のまわりで
いっせいに鳴きはじめるものだ ....
 
ひとり遊びしてると
きゅうに孤独を感じることがある
ひとり遊び
という言葉を知らなくても
たしかに僕は孤独だった

夜遅くに
父さんが帰ってくる
忙しくて食べられなかった
と言 ....
 
みわたすかぎりの草原でした
一頭二頭と牛が産まれると
そこは牧場とよばれました
牛は子供のように戯れて
やがて大人になると柵を越えていきました
柵をこえずに残る牛もいました
牧場とい ....
 
自転車を漕いでる
全速力で
ふみきりまで
息子を荷台にのせて
遠くから汽笛の音が聞こえる
蒸気機関車だ!

夢をみていた
眠りにつくまで
SLを夢みる
少年だったはずなのに
 ....
 
駅のホームで
乗り換えの汽車を待つ
少し味の濃い
月見そばを食べながら

かけそばにしようと思って
左ポケットを探したら
小銭が思ったより入ってたので

長い線路を
そばのよ ....
 
野菜が野菜の味がしないし
なによりも
僕が僕の味がしないから
ごはんは船に乗った

旅に出るつもりではなく
綺麗な女の人に会うために
船は川でも海でもない
水があるところならどこ ....
 
子供の頃
よく胎児の夢を見た
まだ知らないはずの家族が
言葉ではない言葉で
話す声を聞いていた
その姿も見えていた気がする

胎児の僕は
母の子宮の中で
永遠に産まれないまま
 ....
 
子供の頃
日曜日になると
隣町まで習字の塾へ行った

習字よりも
塾をさぼって
町の本屋で立ち読みしたり
ゲームセンターでゲームしたり
そんな思い出ばかりが残ってる

ある日 ....
 
風呂の戸を開けると
いつかの僕が
髪を洗ってる

背中を洗ってあげると
ありがとう
そう言って
妻がしてくれてると思ってる

湯船には
いつかの祖母が入ってる
髪を洗う僕に ....
 
はじめて
家族旅行に行った
夜の宿で
そこは二楽荘というんだけれども
楽しいことは
一つや二つどころではなく
三つも四つも
心配など
なにもなかったから
いくらでも夢中にはしゃ ....
 
やわらかいものが
やわらかいものに抱かれ
育むものが
育まれたことをよろこびとした
この命の果てにある
未来がまだ懐かしかった頃

時は懐かしく
時はまた経験として
かつて見た ....
 
もう会わない人たちが
改札を通過する

昨夜知らない人たちと
あんなに
飲んだはずなのに

今朝はやけに顔のない
彼らの名前を
だれも知らない
 
 
冬でもアイスが
買えるようになってから
妹がいる

冬でも愛した
恋人と暮らしてから
それでもまだ
妹がいる

冬にアイスを食べた後
当たりなのか
つい
確かめてしまうよ ....
 
さあ
詩の時間です
と言われても
照れくさく

授業が終わるまで
僕は
窓の外を見ていた

おばさんたちが
道すがら
話す声が聞こえる

おばさんは
どうしてあんなに ....
母さんと間違えて
息子が僕に抱きついてきた

首筋に
ぴったり口をくっつけて
おっぱいみたいに吸ってきた

ああ
母さんになるって
こういうことだったんだ

時計を見ると朝の六 ....
雨の日なば
いっぱい
匂いっこするっけおの

雨の日なば
匂いっこ嗅ぎつけて
いっぱい
犬っこ集まるっけおの

雨の日なば
いっつも
なんかの大会
やってらっけおの

ば ....
週末
接待のため夜中に帰った
けっこう酔っていて
おみやげに肉まんを買って帰った

あっくんが起きてたら
一緒に食べたかったのに

と、言おうとしたのに

あっくんが生きてた ....
野球を見に行った

試合の途中
本日の入場者数がアナウンスされて
僕が生まれ育った町の人口ほどだった

思わず観客席を見回すと
そこには
懐かしい人ばかりいるような気がした

当 ....
古本屋に僕が売られていく
僕は父さんの続編だった
父さんは名作で
何度も増刷されたけれど
今では内容が古くなってしまった
何刷目かの父さんと同じ
古本屋の書棚に僕は収められる
初版の時よ ....
ある休日
ちょっとしたことがきっかけで
僕らはモデルハウスを見学した
床暖房完備なので
ストーブは不要と説明された
あたたかたったのは
春のせいだと勘違いしていた
外はまだ少し寒かったの ....
現代の死よりも
近代の死に存在感があったのは
そこに大きな背景があったからだ

記号のように識別され
消費されるように過ぎていく
現代の死にも
大きな背景があるとしても
誰 ....
見て
母さんがいるよ

君は
よろこんで
ハンカチをさがす

涙を拭くと
母さんは
消えてしまう

見て
母さんがいるよ

母さんは
いつも
涙の向こうにいる
母さんと
船に乗ったことがある
遠ざかる港を見てるうちに
母さんはいなくなって
そこにいたはずなのに
かもめが一羽止まってる
少し辺りを見まわして
ふたたび見ると
遠ざかっていく
か ....
人が空を飛んでいる
かもめがそれを見ている
見ているのは
いつも人だったのに
いつのまにか
見られる方になっている

生きるものすべてが
言葉なくそれを見ている
僕が今きれいと心で ....
ホームセンターで
出会ったやかんが
思ったよりも
紳士だったので
結婚した

その時代
ホームセンターなんて
あったの
母に聞くと
母は結婚写真を
持ってきた

やかん売り ....
川の流れのすぐ後を
少し遅れて
時が流れている

もう聞こえない
あの人の声のように
過ぎてしまった時が
少しずつ遠ざかっていく

水面を割り
魚が跳ねる
私に時を返すため ....
佐野権太さんの小川 葉さんおすすめリスト(76)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
- 小川 葉自由詩21*08-12-8
椅子- 小川 葉自由詩21*08-11-30
初恋- 小川 葉自由詩408-11-29
- 小川 葉自由詩308-11-1
玄関の虫- 小川 葉自由詩608-10-30
ひとり遊び- 小川 葉自由詩12*08-10-24
牧場- 小川 葉自由詩8*08-10-17
臨時列車- 小川 葉自由詩1008-10-6
左ポケット- 小川 葉自由詩708-9-26
遡航- 小川 葉自由詩5*08-9-11
胎児の夢- 小川 葉自由詩308-9-10
兄さんの背中- 小川 葉自由詩508-9-7
入浴- 小川 葉自由詩608-9-3
未来がまだ懐かしかった頃- 小川 葉自由詩508-8-28
未来がまだ懐かしかった頃- 小川 葉自由詩708-8-28
大都会- 小川 葉自由詩308-8-21
アイス- 小川 葉自由詩508-8-20
詩の時間- 小川 葉自由詩208-8-14
それでも世界は美しい- 小川 葉自由詩5*08-5-6
雨の日にいっぱいの、におい大会- 小川 葉自由詩6*08-4-25
三人家族- 小川 葉自由詩708-4-24
野球観戦- 小川 葉自由詩1208-4-15
古本屋- 小川 葉自由詩408-3-12
モデルハウス- 小川 葉自由詩208-3-9
僕らの背景- 小川 葉自由詩208-3-8
母さんがいるよ- 小川 葉自由詩208-3-8
かもめ- 小川 葉自由詩308-2-29
人の正しさ- 小川 葉自由詩108-2-22
癇癪ガール- 小川 葉自由詩3*08-2-16
川の音- 小川 葉自由詩308-2-15

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