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自分の薄皮一枚残して
そっくりそのままの詩である
―何、それ、
少しの秘密?
光る銅製の浴槽から
海はあふれだし
―ほら、膝っこ少年。
匂いを、かいでごらん
時間が ....
ぼくらはかつて
遠ざかる気層であった
果てのない蒼い夜に灯る
淡い光であった
ぼくらの指先は
震える幼き稲妻
すべての吐息は
透明な表象となった
ぼくらはかつて
言葉以前の言葉
記 ....
地下深くもぐり
モールス信号を
生涯送り続けた男が
死んだ
その晩
世界中の
ラジオから一斉に
鐘の音のモールス信号が
響いた
*
少女からはみでている
魂のゆらぎは
舗道のプラタナスの
青い影の上を
過ぎる一匹の黒猫
そのしなやかな足音は
遠く離れた街の路地で
こだまする
*
透明な空 ....
夏の濁ったにおいに爪先立ち
砕け散った星々の欠片のような
宿命論として小さきものの
俺がいて
夕刻のオランダ坂には
永遠に落下することのない
光の粒子の螺子があって
それは緩やかに巻き戻 ....