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3歳の夏にわたしは赤ちゃんを産んだのだった
やわらかい栗毛を愛おしいと思った
乳母車はわたしの筋力のなさをあざ笑ったが
幸せな光はいつもわたしの頭上で放たれていた
母親になる幸せを誰に ....
君がベージュの毛布にくるまって
あざらしの出産をテレビで観ている
そしてその横顔をぼくは見ている
ぼくを見ていない君は
ぼくの知らない女のようだ
横顔は画面の光に照らされて
君 ....
なんとかなんとかという人が
作った国語辞典では
定義されている
虫刺されから
国境までの
日常が
意味から
真理までの
抽象が
あ ....
死にゆく蝉の声で起こされて
夏と寝ていたと気づかされる
まどろむ意識の中で
シーツに潜む
残り香を探す
枕の隅に
鼻を押し当てる姿は誰にも
見つかることはなく
....