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五月(さつき)待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする
旧暦の五月は今で言う梅雨の頃にあたる
湿り気を帯び始めた都の空気にほのかに香る柑橘系のかおり
それはかつて同じ時を過ごした人のにおいだ ....
おまえが
にゃあ
しか言わなくなってから
三ヶ月過ぎた
冬の上野公園で
壊れている
おれ
ショウジョウバエが2匹
離れない
ベンチ
に横たわって
斜めに見る
空はどこまでも
....
思いきって体を展開
次のうち正しく人体となる展開図はどれか選べ
ア
イ
ウ
エ
の中に答えはあるのか
さらに思いきって
らせんを分解
写真1のヒトを示す遺伝子の正確な塩基配列はどれか ....
いい天気ですね
がはじめの言葉だった
G線上のアリアが流れていて
あんまりできすぎたシチュエーションに
笑いをこらえるために
コーヒーを一口すすってから
やっと私は
ええ
と答えたのだ ....
愛飢え
丘聞く
毛
濃さ
死す背育ちつ
手となりぬ根の
這ひ
増へ
穂
麻
実
夢
母屋
射ゆ
獲よ
羽を
無
書く端から
言葉がもろい陶器になって
ぱりんぱりん割れていくので
どんなに壁にしがみついても
もう書けないのです
コンクリートは湿ったにおい
かび臭い指先から滴るインクでは記号にならない
....
夕方と夜の境目
湖畔の輪郭が紫色に曖昧になったころ
湖に身を乗り出し水平に手を伸ばすと
足元に流れ寄る無数の細かな波が
浮力となって
まるで
湖の上を滑らかに飛んでいるかのような気分になる ....
笛の音が滴る 波紋が暗やみに満ちてゆく
私は白く閉ざされ動くことができない
ほんの数ミリ 口から暖かい息が動くのを誰に感づかれまいとしているのか
視線が拡散し 霧の一滴一滴に乱反射する
私 ....