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遠い山の稜線が
水墨画のように
かすんで

ゆるゆると
時間だけが
澱のようにたまっていく

さがしているものは
光りにはじける 青
とろりと熟した 赤

なげだされたキャンバ ....
そこは新宿の雑居ビルが立ち並ぶ一角の
地下にある場末のバーだった
薄汚れた階段を下りていった記憶はあるが
すでにかなり酔っていたので
なぜこんな場所で飲んでいるのかわからなかった


そ ....
五線譜に引っかかっている
音符をひとつ 
つかんで
鍵盤に落としてみた


小さく高く弾んで
涙のしずくに
変わってしまった


やさしく
なにか語ってくれると
思ったのに
 ....
「貴女はご自分に酔っていらっしゃるのです」


思いがけない言葉に顔を上げた

彼は静かに私を見つめて煙草に火をつけた


(どういうこと?)


いぶかしげな眼差しの私に彼はこ ....
鍵爪のような細い三日月の夜
ある人妻は魔王メフィストと約束を交わしました
禁断の恋の成就を願い
その代わりにメフィストの言うがまま
魂を売ることにしたのです


ただ一つだけ月の出ない闇 ....
青白い紫煙の行方を目で追う

あなたは煙草をくゆらせながら

目をとじて流れる音楽に聴き入っている

ゆっくりとした甘めのバラード

暗黙の了解の時間・・・

わたしはあなたとの距 ....
さっきから訳もなくティースプーンでカップの中を掻き混ぜてしまう
そんなにしたら紅茶が冷めてしまうのがわかっているのに
渦を巻く琥珀色の液体をじっと見つめる


「黙っていたらわからないじゃな ....
それは波状的に 
ワタシに繰り返し降ってきて


そのたびにワタシは
戸惑い 恐れ
そして
喜び 酔いしれた


歓喜の雨は
最初は小さな透き間から
だんだんと浸透して

 ....
溜め息でできた曇りガラス

微妙に感じる温度差

胸の中にぽっかり現れそうな空洞



もう囀れない歌えぬカナリア に

なってしまうのだろうか



味わってしまった夢は ....
あれは数年前  今でも脳裏によぎる

テロリストの哀れな末路か
成田空港に降り立ち
手錠を高々と挙げ
カメラに向かって
不敵な笑みを浮かべる
かつての“女戦士”


バブルも 不況 ....
漆黒の闇に今日も
電波にのせた言葉がいきかう


誰かが誰かのために
ほとばしる想いが
零れないように


いつでも切れる
儚い琴線
そっと握りしめ


かぎられた空間の余 ....
闇の中に光を見いだせるのか




そのしなやかな旋律の調べは


木々のざわめきを語り


小川のせせらぎを歌う


繊細な指先から放たれる色彩


鼓膜を通して描 ....
{ルビ玩具箱=おもちゃばこ}をひっくり返したような

ガラクタみたいな現実の数々

散乱して  壊れていて

どれから片付けるのか

しばしの間  眺めている



ゆきずりア ....
古びた大学ノート
色褪せたページに
静かに眠る
言葉たち


何年も前に
走り書いた
ほとばしる
想いの数々


作品と呼ぶのには
あまりにも
ふぞろいで


できそ ....
さっきから閉めるのが緩かったのか
水道の蛇口からポタポタと
水滴の落ちる音が聞こえる


微熱のせいか身体がダルくて
息苦しい感じがする
数時間前に見せられた
エコーに映ったアメーバー ....
少女のころに作った 綺麗なビーズの首飾り
無垢だったあの日の記憶をたどり
ひとつひとつ 大事に
糸に通すように 言葉をつなげる

どの色のビーズにしようか
迷いながらも 真摯に選んで
こ ....
見果てぬ夢を抱いたまま
いくつもの夜を越えて巡ってきた


摂氏34度
陽炎のような曖昧な輪郭
記憶と現実が交差して
今 密やかに始まる
8月の同窓会


かくせぬ僅かな緊張
 ....
おめかししてまいりましょう
からす瓜もほんのり色づいて
アザミの花が熱いため息ついたから
あなたに逢いたくなりました

おめかししてまいりましょう
赤いカエデに負けないように
くちびるに ....
遠い日の母の実家の飾り棚

なだらかな曲線で凛と立つ

重く押し黙る青磁の器


威厳と寛容をたもちながら

静かなまなざしを光らせていた


つるりとした青い光沢

ひん ....
それは「ラ・カンパネラ」だった
かきたてるような狂おしい響きに
幼い日に聴いた 胸の震えが蘇える
あのクリスタルの針が
ふれあうような高音が
ころがるように鳴り響く

軽やかに跳ねまわる ....
あなたの心に潜む ティンカーベル

キラキラと 甘い言葉をまき散らし

自由に飛びまわる


気まぐれティンカーベル

目を離した隙に おとぎの国に隠れてしまう


わがままテ ....
何が起きたのかわからなかった
地鳴りと轟音とともに
その瞬間
すべてを失った
激しく燃えさかる炎と
黒煙の中
太陽は赤く揺らいだ


衝撃と
悲しみと
脱力感の中に
いた
茫 ....
極彩色の数珠の{ルビ許=もと}

魍魎たちは

虚無に{ルビ抱=いだ}かれ静かにねむる


混濁した闇のカオスは

連なる数珠の結界を

破ることなくおし黙る

救われたくは ....
どんよりとした午後
気だるくジャズを聴きながら
ふと コーヒー・ミル引く手を休めると
ポツポツと出窓を鳴らして合図する
気まぐれな訪問者がやってくる

いつのまにか
部屋にながれるジャム ....
スパンコール散りばめたような
ビロードの夜

見上げればぽっかり浮かぶ
上弦の月


こんな夜は
お月さま たて琴にして
静かな森の湖に
音色をそっとながしましょう

銀の小舟 ....
うすいピンクが

おぼろに煙る

満開を恥らう

伏し目がちな花びらに

やさしい朝霧は

そっと

オパール色のしずくを飾る


憂鬱な顔をして

雨雲が

空 ....
祭壇の上にぽつり と一つ

甘い香りをただよわせ

みずみずしさを内に秘め

ひっそり 凛然と たたずむ


濃厚な蜜をたっぷりと細胞にふくみ

ふっくりと艶やかな曲線で

 ....
ベッドサイドの淡いスタンドの灯りが
ほの暗い部屋の一角を照らしだしている
窓から見下ろす都会の夜景は
今の私には冷たいほど綺麗に
無表情な横顔で輝いている

独りには慣れているはずなのに
 ....
恋月 ぴのさんの渡 ひろこさんおすすめリスト(118)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
夏の残像- 渡 ひろ ...自由詩16*07-7-25
甘く危険な香り(妖精篇)- 渡 ひろ ...自由詩4*07-7-17
五線譜からの囁き- 渡 ひろ ...自由詩14*07-7-11
恋愛遊戯- 渡 ひろ ...自由詩7*07-7-3
月夜の逢瀬- 渡 ひろ ...自由詩7*07-7-1
音楽と紫煙とあなたと- 渡 ひろ ...自由詩9*07-6-25
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メールの雨- 渡 ひろ ...自由詩4*07-6-22
不安の輪郭- 渡 ひろ ...自由詩6*07-6-20
汚れた革命- 渡 ひろ ...自由詩6*07-6-16
メールが織りなす心模様- 渡 ひろ ...自由詩4*07-5-26
盲目のピアニスト- 渡 ひろ ...自由詩10*07-5-25
恋愛戦線(男性篇)- 渡 ひろ ...自由詩5*07-5-23
零れた言葉をすくって- 渡 ひろ ...自由詩8*07-5-19
雷雨に浮かぶ幻想- 渡 ひろ ...自由詩5*07-5-15
言葉のビーズ- 渡 ひろ ...自由詩6*07-5-10
8月の同窓会- 渡 ひろ ...自由詩5*07-5-4
茜色の慕情- 渡 ひろ ...自由詩11*07-4-24
青磁の記憶- 渡 ひろ ...自由詩5*07-4-19
フジコ・へミング- 渡 ひろ ...自由詩8*07-4-17
ティンカーベル- 渡 ひろ ...自由詩4*07-4-10
無情の大地へ- 渡 ひろ ...自由詩5*07-3-31
亡者の夢(一枚のシュールな絵から)- 渡 ひろ ...自由詩4*07-3-27
雨だれシンコペーション- 渡 ひろ ...自由詩9*07-3-25
月のたて琴- 渡 ひろ ...自由詩10*07-3-23
春の雨- 渡 ひろ ...自由詩7*07-3-20
白桃夢- 渡 ひろ ...自由詩8*07-3-8
追憶- 渡 ひろ ...自由詩6*07-3-5

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