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駅前のタクシープールに
老いた男と猫が
向かい合わせに座っている
餌の缶詰を猫が喰い
空き缶は物乞いの貯金箱となる
毛刈り前の羊のような
油色の毛を
肢体しならせ
舐める猫
....
目覚めたら
僕の部屋に同室者が現れた
両親と暮らしているが
生活パターンが違い
机上の英和辞典よりも顔を合わせなかったから
友達ができたみたいで嬉くなる
彼は僕とまるっきり正反対で ....
僕は速読かつ多読家だ。
故に、短編と詩を好む。
いや、好まざるを得ない。
朝と夜の電車に揺られる1時間強を駆使した所で、ドストエフスキーを消化することは難しいからだ。
愛書の筆頭に上がるの ....
ゲリラ兵に捕らえられた僕は
若きリーダーの男に
カラシニコフ銃を渡され
「お前の最も憎い者を打て」と
命ぜられ
超高層ビルの展望台に昇り
望遠鏡にコインを投じ
小さな人達を鳥瞰
タ ....
懇意になるごとに離れ行く
過去の前例
拒絶を恐れ僕から先に別れた
シリ・エトクへ
追いかけて欲しいなんて
我侭過ぎるね
手紙も旅費も残さず
シリ・エトクへ
見えるよ
荒磯を打 ....
透明な障壁に守られた
箱庭の世界で
自由は素晴らしいと君は言う
なんて悲しいんだ
僕等の享受するエントロピーは
全部借り物なのに
感覚は両親から譲られた血肉
思惟は神様の従僕の言 ....
都会の街に充満する廃ガスよりも
前方歩く男がふかすタバコの煙が喉を刺す朝
横断歩道の欄干へ両腕広げて立ってみた
隣には数珠繋ぎのカラスの一群
最左端の僕は異端の新参者
道路の川を下る自動 ....
街の外れに人工的な自然空間がある
コンクリートの楼閣の変わりに
樹齢重ねた大木のビルが押し並ぶ
針葉樹に広葉樹に
シダにツタに
一年草に多年草に
アジアの繁華街の看板のように
無造作 ....
青い血管にハサミを入れて
肉と筋を離す感触で
君がぷつりと途切れた
昨日までの二人は
キラキラと
朝の睫から毀れる光の色
目覚めたら
赤黒く腐乱した血の色へ
どろりと染まって行 ....
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