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今迄
子供のように手を伸ばし
あれがほしい
これがほしい
と駄々をこねて
なにひとつ
この手につかめず
「幸せ」はいつも砂になり
指のすき間から流れ落ちた
....
夜行列車の車窓。
夜明け前の雪国。
宙に舞う風雪。
山々の裏に潜む朝陽に
うっすらと浮かび上がる
ましろい雪原。
( {ルビ転寝=うたたね}の合間
( 車窓の外に離れて浮 ....
夜寝る前に読書していると
開いた本のなかから
うっすらと光を帯びた手があらわれ
わたしに差し出されていた
その手を握ると
不思議な想いが心に流れ
明日に怯えるわたしの影は ....
本を開くと
そこは遠い昔の日本のお寺
お金持の人々が行列をつくり
次々と賽銭箱に大判小判を投げ入れて
ぱん ぱん
と手を合わす
そこへ
ひとりの乞食があらわれて
薄汚 ....
私達は知らない
戦時中にかけがえの無い妻子や友を残して
死んで行った兵士の
爆撃で全身が焼け焦げてしまった少女の
青空を引き裂く悲鳴を
( 昔話の地獄絵巻は深い地底に葬られ
....