大きな雨粒がひとつ
フロントガラスに
ボトリと落ちてきた
さっきから
車の中は
沈黙で満たされていて
私はもう
ひとりで歩いて帰っていく自分の姿を
頭の片隅でイメージしている
....
さじ の中
盛られた 私の
腕に とどかない
ひくい
止めた 前髪
痛くて はずす
ヘアピン
月明かり まばらな カーテン
さえぎる
みたくないと
あわれむ ....
そのはじまりからすでに
鋭く亡びに縁取られているのが夏で
青空と陽射しがどれほどあかるくても
そのあかるささえ不穏なのが夏で
蝉が鳴き騒いでも
祭の喧噪が渦巻いても
濃密な静寂が深々と ....
大きい両耳 後方に回転体を 察知
働かない ポスターは窓の外を 鉄蹄
前髪だけ たくしあげた様に 精製
ソマリア アトランダム カピバラ
変換キー アクションキー タランチ ....
火の舌
鉄の舌を持ち
語ることを持たない子がいて
その語ることの無さゆえに
ただ疲れ果てては眠りにつく
眠りはしばしば覚まされる
幾つかの鏡が子のそばにあり
何も映 ....
駅の階段を駆け下りていたら、膝が抜けた。
だらしなく、だらりと揺れる。
わたしの膝は、わたしの振り子。
心惹かれ、心揺れる。
わたしの心は、わたしの振り子。
額に ....
1
眠りたい太陽は
徂徠する雲に翳り
口を得れば脚を失うだろう
無理に開いた胸には
寛容ねと謂う
君の眼差しに
愚鈍さを隠せずに朽葉色に染まり
消してあげる 蝋燭を
口角に気 ....
覆う
白さ
の
すべ
落ちる
銀砂
憧憬では
なく
瞬間に
託した
熱量を伴う
物質化
する記憶
全て
を1に
還元すべく働く
口実は
真理
決定する
という判断 ....
食後に飲むはずだったビタミンが
テーブルの上で醗酵している
その熱で君の言葉は燃え尽きてしまった
僕らはたくさんの窓や部屋を投げあって
ぶつけあって、お互い
何となく傷ついてる
夏 ....
わたしはわたしを以て
いかなる孤独にも戦利し
平伏する憤怒と哀憫を両肩に掛け
凱旋する兵士のごとく
絶望に満ち
絶望にひろがり
靴は鉛のように重く
ポシェット ....
軍艦巻きは週に一度
それが我が家のおきて
ちぐりす飲んでゆうふらてす
シャバのシャバダバ
シャバダバ・ダバダ
うちのじーさん、ひーじーさんの子供
じーさんの子供はとーさん
....
気づかれないように
水面を そそ、と
歩いていたのに
さっき拾った
オシロイバナのたね、を
うっかり落としてしまった
ひろがる波紋
幾重もの水輪の先、に
あなた
....
暗闇に
浮かび上がる 無駄のないシルエット
黄色く光る 大きな丸いふたつの眼だけが
無表情にこちらを覗いている
バルタン星人だ。
両手のハサミを重そうに持ちあげ
分身を残しなが ....
さみしい と打ち込んで
いっせいに
知りうる限りのアドレスへ
やがて何通かの同情と
おざなりな相槌と
迷惑な入れ込みが届く
そんなものは望んではいない
薄らぐ窓のすき間から
....
人の指と
繋がり忘れた指に
連なる透明巾着の紐は食い込まず
わたし
一寸金魚の軽さを恨んだ
水の純でわたしを責めた
駆け出すしかなかった、ある夏の夜
透明巾着の、同じ ....
アスファルトの上を
一匹の蟻が
一匹の蟻だったモノを
引き摺って行く
突然の
雨
は、上が ....
エアコンのない、
中途半端に古い家にいるものだから、
ほんとに蒸し暑くってかなわない。
料理なんかする気力ないし、
食欲ないし、
おまけに、
部屋のなかがへんになまぐさい。
生ゴミが腐っ ....
遠くへ行きたいんだ
少しぐらい暑くても
それはそれでいいんだ
誰も知らない未開の土地で
そこがジャングルの奥地で
ワニなんかが口をあけて待っていても
そんなの構いやしないんだ
そ ....
ながめるほど
とおくもなく
ふれるほど
ちかくもなく
るるりりらと
ボクのいしきが
きゅうじつを
あるいている
女と出会ったことがない
こんなに生きているのに
私まだ女に出会ったことがない
履歴は白紙のままで
底知れぬ充足を感じるように
女だぁと我が身を抱きしめたこともない
子の母であり
妻で ....
愛されたかった
わたし
壊れた
粉々に砕け散った
もうどこにもいない
探しても
見つからない
まるで4階から
地面に
パソコン本体を
落っことしたみたい
音は聞こえなかった
ゆ ....
ある建物のロビーに座っていると
少し離れた場所に並んでいるコインロッカーの鍵のうち
ひとつだけが震えていて
「どこにもいけない」
と聞こえた
「そうだな」
と言うと
....
だから営業なんかヤなんすよて
本音だけ白骨化浮き彫りになる34℃の昼休み
新人と回る身にもなってみろとは口にせず
掌に携帯包み何度もメールの文字をたどる
あと5日したら会えるから
昨日出した ....
鉄筋コンクリートの複眼が
注視していたので
火をつけるのをやめた
他人の病を口実に
会社を休んだ
ここらはおっさんたちのシマで
わたしの居場所は
腐りかけのベンチの
そのまた角 ....
ウルトラマンは公園のベンチに座っている
子供たちのいない公園でひとり
ペンキのはげたブランコへとうつった
ウルトラマンは地球防衛軍をクビになっていた
肝心なときに、いつもいなくなるのだから ....
こはるびよりのひだまりで
つりをしながらあくびをすると
ぽろっとくびがころげおち
ついでにうでもころげおち
なかよくはりぼてけりながら
うみのうえをかけていった。
いそにのこされた ....
ほら その蕗の葉の下で
一つ目の妖精が
こっちを見ているよ
どこかから とても野太い声で
神々が呼んでいるよ
ふとした葉陰に
秘密の道があって
もしかしたら あちら側まで
行ける ....
新しい音が鳴り出すと
見上げてしまう癖がついた
国道沿いの滲んだ校舎の上
スピーカーが漏らす
ひずんだ音
ずっとずっと変わらない
ひとつ
呼吸のように響いては
震えている何か
....
耳たぶが
熱い
空調装置にたしなめられた
浅いシーツのような室内の夜には
昼間に溜め入れた太陽の
滴りそうに赤い耳たぶ一滴で
ベッドが太陽の海になってしまうのを
防ぐ ....
ひじクッションの当たり所が悪く、曽祖父が死んだ。
だから僕の名前は今日からニックネームだ
曽祖父の遺体を三週間ぐらい置きっ放しにしたので追加料金が発生した。
だから曾祖母は諸事情により、とだけ書 ....
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