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列車に向かって吠えて
吠え尽くそうとする
仔犬の目
は怒りに満ち
まだ私を許していない

信用金庫の前で立ち話をする二人
昨日もそこにいた気がする
確かに私はいなかったのに

 ....
「水」という字を見ると不安な気持ちになるので
女は薄目を開けて電話帳をめくる
おかげで大好きな「花」という字もぼんやりとかすんでしまう
今日はついてない
最後までめくり終えると印をつけ ....
せっかく外に出たのだから
妻と娘に土産を買って帰りたかった
二人が泣いて喜ぶようなものではなく
小さな包みのもので構わない
ほんの少し甘いお菓子で
お土産買ってきたよ
あら、ありがとう ....
フットサル
足元で猿
ボールを蹴りながら
猿回しの猿に
回されてますよ俺
舞わされてますよ俺
華麗なステップ
素敵なトラップ
フィット
チーネの味は
忘れました
あなたがいな ....
サンディの煙草は誰にも止められない
と、誰もが思っていることを
サンディはなんとなく知っている
黒く長い髪
茶色のひとみ
その他の身体的特徴
にもかかわらず
サンディといえば
 ....
生きていくのだ
ブルゾンに袖をとおして
ショップの店員が
ボタンを掛け違えたまま
しめやかに執り行われます
本日の埋葬
自分しか見当たらない台所で
悲しみの真似事をするのは止めに ....
海に行く
護岸の上でいつものように
体操をしているおじさんと挨拶する
釣り糸を垂れる
魚が一匹釣れる
魚を一匹殺す
やがて日が暮れたので帰宅する
途中おじさんはもういない
今日 ....
日記は忘れています
かつて
誰かの小鳥であったことを
目を瞑ると
まぶたの中で風景が裏返る
人は皆
空の切れ端でした
レモン水一口飲んでいる間に

地球が生まれ
消えていきました

桜がとてもきれいだったので
あなたに伝言を残そうと思いました
君がぽかんと口を開けているのは
口の中で風が吹いているからだ
その正体が何であるのか
問う方法も知らないまま
ある日突然に
君は君であることに気づくだろう
そしてそれは
君が君で無いこと ....
君は脱ぐ
同時に着る
どんなに脱いでも
君は君の核心から遠ざかっていく
まばゆい光の中
生まれたての姿になり
男たちの暗い瞳でできたプールを泳ぐ
淵に腰掛けていた男たちは
 ....
君には訓練が必要だ
高らかな産声で自らの生を宣誓し
誰にも教わることなく
呼吸し始めたようには簡単にいかない
今、君の身体は音楽に満ち
穴という穴から溢れ出そうとしている
それらを十本 ....
気がつけばいつも
君はそこに立っている
君は待つ
遠くに地鳴りを聞きながら
まだ秋には早い日
目の前をつうっと
赤とんぼが通り過ぎていく
同じ高さにある地平線を目指し
旅立っていっ ....
君のだみ声は大海原のうねり
君のいらっしゃいは忘却の号令
ねじり鉢巻
生の残酷さと尊さを知りながらも
君の口は頑なに語ることを拒み続ける
いま目の前には
かつて自由に泳ぎまわっていたも ....
君の背中にある八番は
誰がつけたというのか
躍動する大腿筋
身体から溢れ出していく汗
すべては君そのものだというのに
ただセンターとだけ呼ばれ
どこまでも白球を追いかけてく
スタ ....
腕から生える腕
腕から生え他の腕に潜る腕
すべて腕
てのひらの無い腕
てのひらだらけの腕
今日の天気は腕ときどき腕
ところによりにわか腕
という天気図を指し示す腕
腕そば一丁、腕大 ....
ため息が汽笛となり
涙は色の無い雨となり
配膳車で旅をする
乗っているのは
おまえたちというより
俺たち
港町
哀歌
巨大なカウンターに腰掛け
俺たちは
おまえたちの肩を
そ ....
どうせなら
この世にいるすべてのライオンが
友達だったら良かったのに
あいにく僕には一頭の友達もいない
だから食べられても仕方ないんだ
そんな言い訳ばかりが得意になっていく
ライオンのこと ....
一限目 数学
 ただ何事も無かったかのように
 男は黒板に数式を書き足していく
 黒板がすべて埋まると消して
 再び数式を書き始める
 数人の未成年がノートに書き写していくが
 誰も男の背 ....
車内はひんやり寒い
乗客はみな一様にうつむき
僕の呼吸だけがまた
不細工な格好で繰り返される

耳元で川が流れている
昔、綺麗な魚に見とれて
手袋の片方を落とした
それは確かにあっ ....
人さらいは人をさらったことがない
これからもさらう予定がない
けれど人さらいは人さらい
それは何の比喩でもなく
人さらいが人さらいであるということだ
何故人さらいは人さらいなのか
生まれた ....
妻と二人で梅干を漬ける
台風が近づいている
空はまだ晴れているけれど
窓から入る風は生暖かく蒸し暑い
梅の実の良い匂いがする
水洗いした梅の実をタオルで一つ一つ拭き
ヘタを楊枝でほ ....
馬鹿ターボ
全開で帰宅する俺
髭をたくわえ少しワイルドな俺に
おかえり、を言う娘は少しワイルドな俺に少し慣れ
一番星が出始めた空の下で縄跳びの練習中
綺麗でしょ、綺麗でしょ
いや、 ....
雨の粒たちが描く
池の波紋を見ながら
保育園からの帰り道
娘は赤い小さな傘をさして
唇をぎゅっと結んで

最近、娘の話題といえば
明日の遠足のことばかり
弁当のおかずの注文 ....
覚えてる
迷ったときの指先のちょっとした仕草とか
暑い室内でむっと漂ってきた身体の匂いとか

正午、君がサイレンの口真似をすると
僕らは作業を中断して
いつも小さな昼食をとった

今日 ....
待ち合わせの時間まで
僕は地下街の書店で時間を潰すことにした
詩集のコーナーで数少ない詩集を二、三冊めくってみたが
どれもこれもピンとこなくて他のコーナーにある書籍も
黙りこくったまま ....
今日も君にお付き合いしてアニメ「ドザえもん」を見た
ひ弱な少年が未来からやってきた溺死体型ロボット
「ドザえもん」の秘密道具を使って
自分より屈強な者や裕福な者に立ち向かい
勝利し ....
娘は将来アイス屋になりたいと言う
好物のアイスを好きなだけ食べられるから
ではなくて
沢山の人を幸せにしたいからだそうだ

いっしょにお風呂に入ると必ずその話題になって
バニラ ....
美味しい美味しいブブンヤキソバを君は作っている
キッチンは甲状腺のような白い匂いに包まれ
外の方はきっともっと広い世界が連綿と続き
幾多の人々が美味しい美味しいゼンブヤキソバを
美 ....
結婚したてのころ
奥さんがバスンバスン布団を叩く音を聞いて
親のかたきじゃないんだから何もそんなにまで
なんて思ったけど
十年目に
「布団は親のかたきなの」
衝撃の告白
親のかたきに ....
大覚アキラさんのたもつさんおすすめリスト(63)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
駅前ロータリー- たもつ自由詩305-9-14
溶けてけ- たもつ自由詩9*05-9-11
漂流- たもつ自由詩3105-9-6
足猿- たもつ自由詩1205-9-2
サンディのこと- たもつ自由詩43*05-8-14
ブルゾンに袖をとおして- たもつ自由詩905-8-8
海に行く- たもつ自由詩1405-8-4
童話(日記)- たもつ自由詩2005-7-31
童話(伝言)- たもつ自由詩19*05-7-25
子供- たもつ自由詩38*05-7-23
ストリッパー- たもつ自由詩2305-7-21
ピアニスト- たもつ自由詩905-7-19
ゴールキーパー- たもつ自由詩1705-7-18
魚屋- たもつ自由詩905-7-17
センター- たもつ自由詩1405-7-16
すべて腕- たもつ自由詩1905-7-14
演歌- たもつ自由詩1005-6-10
言い訳- たもつ自由詩805-5-27
授業- たもつ自由詩805-5-25
車内- たもつ自由詩1005-4-6
人さらい- たもつ自由詩1805-3-30
梅干- たもつ自由詩32*05-3-9
団欒- たもつ自由詩2505-3-1
願い- たもつ自由詩1005-2-20
サイレン- たもつ自由詩3605-2-16
身辺雑記より(九)- たもつ自由詩1605-1-11
身辺雑記より(三)- たもつ自由詩304-12-25
十階の家族- たもつ自由詩100+04-12-11
ブブンヤキソバ- たもつ自由詩1104-11-20
スイッチ- たもつ自由詩6004-8-17

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