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詩を旅立ち詩にかえる
詩は私のふるさと
永遠に根づくかなしみと やすらぎ

旋律の青く燃える落日が私へしずんでゆく
私は水平線をそっとほほえみ湾曲する
ふっと行間に足をとめて

 ....
並木道は遠い空に凝立し
刻刻と外縁する静寂の列柱

冬枯れの枝に蕾のきざし
風光るまなざし
光繁る青葉
うつむいて秋晴れ
めぐるのは時ではない

螺旋する火の罪が現象する深い森の霧へ ....
おもいでの形見
私にとってこれは
変わらないことのひとつ
ここには風は吹いてこないけれど
ほがらかなひだまりがぽうっとしている

いつまでも
微笑する宇宙のふちで。
私の子午線 ....
無垢なるいのちをみつめる光は
かげることのない心臓だ

だからそのいのちの影は
しずむことなく
みちるばかりで
月の亡霊のように 果てしがない海原をひっぱる

陸地の無い水平線上に ....
{ルビ箸立=はしたて}に
ひっそりと立っている お箸
いのちの橋渡しを行うもの

せつなさをとおりこして
うれしさがあふれそうな
いのちの輝きの
道のりを
真っすぐに
みおくって ....
遠い風の透けた
銀のしずくが
{ルビ月影=つきかげ}おぼろにひびいて
さびしく薫る
ぬれた黒髪
結いあげる白い手

静かすぎる吐息の重さは
うつろな視線の光
映る予感の静寂が ....
最後まで
射しこむ視線
うっとりと透ける黄金の光に
浮かびあがる白い顔が沈黙をまもっている
一瞬間、

じゅうりんされた庭に
咲く血の花が
わたしの静脈でかおる午後

いく ....
夜のアスファルトに響く
女の足音は 毎夜何をしに来るのだろう
その足音は 決まって必ず湿っている
扉のまえで それはピタリ
と止まり
重いけれど圧力のまるで無い
気配のまま夜明 ....
かなしいふちに降る雪が、
しろくしろいねむりにつき
冷気をはりつめて
その肺にひびいている。
しぃん、とした熱が、
深淵から徐々にひろがり
焼けた声となって吐き出され
冬の空 ....
風が鳴る
凍える魂を
ひき連れ去る寒月を
湾曲する星夜の岸を
鋭く細く鳴っている

{ルビ居炉裏端=いろりばた}の数え歌は
今宵も尽きることはなく
月影の枝が
障子に透けて心細くゆれ ....
潮風にさびる
落日の{ルビ夢幻=むげん}
ゆく手には
茫洋の{ルビ天=そら}

遠音の影を
ひびきつづける海岸が
涙できず知らぬ世で 立ち尽す
瞬息の流星

ほそぼそとあが ....
あきらめは
落葉に{ルビ埋=うず}まる倒木だ
{ルビ水面=すいめん}に浮かぶ枯れ葉の息だ

全てに対し
後ろめたいことの無い
青い空をあおぐ

倒木も枯れ葉も
{ルビ生命 ....
水が、渇いていく
いのちある喉から
光陰の{ルビ嗄=か}れる
か細く陽光に
反射する雲へ

終ぞ
逃れられぬ影を傾きつづける
静寂の光

水涯にたたずみ咲いている睡眠

絶大な ....
   {ルビ鉄=くろがね}の背のように
   陽を照り返す
さざなみの群生するこちら側で
砂に潜っている
   貝の喘ぎは
   打ちよせる海水に
くりかえし濡れる
しろく寡 ....
電信柱の先が
お墓のあたまに見えた
あそこでセミに鳴かれては
私は独り笑み
アイスクリームのとけるままに
いつまでも返事を、まつのだった

べとんべとに常温で濡れてしまった
床を拭きな ....
午前零時の産声が
真夜中を、とおりすぎて
青雲でゆれていました
しかしながら
その姿を見た者は
だれひとりとしていなかったのです

川岸に転がっていた小石を持ち帰り
庭のすみっこに置い ....
私は、私の影であり
影は、影の影である。

どこまでも
黒く透ける現し身を
冷たい風がなぞり
さみしい熱を奪い去っていく
だからといって みたされることはない
このささやきが、色づ ....
{ルビ海鳥=うみどり}は
{ルビ淋=さみ}しくないて いますよと
波間のふねを
そよ風が
帰っていって 透きとおり
なき声ひくく羽ばたいて

夕べの斜陽が今朝方に
燃え映ってしゃらしゃ ....
黒髪を 風にすいては色もなく

岸辺に咲いた 白い花

ひんやりうずく 視線に限られ

カラスアゲハは はねを日に焼き 沈黙を舞い千切る
   いさり火の あかく燃えたつ 秋の暮れ



いっぴきの蜘蛛は、
自分の領分をわきまえて
一心に一糸の糸を張りめぐらす。
それはそれは正確で絶妙に

果して、
わたしはどう ....
あのひとのまちは
晴れるだろうか
あのひとのまちは
曇りだろうか
あのひとのまちは
雨だろうか
………


あのひとの季節には
どんな花が
咲いているのだろう か

 ....
落葉がそぞろに風にふかれ
雲は青く高い空をゆく

うらの{ルビ小径=こみち}の縁石に腰をかけて
杉といっしょにゆれている

夏の{ルビ遺言=いごん}は朽ちることなく
静かに実 ....
かすかな声でなぞる
あれは面影
うらの林のすきまからみえた
私の亡霊
沈むことのできない舟
いっそうの複音

静かな{ルビ水面=みなも}をもっている
{ルビ自恃=じじ}{ルビ矜恃=きょ ....
真夏に日車は、咲いている


雷鳴の空を裂く。
轟音で目を覚ます
一輪車に稲光りが青白く反射する
一瞬で葉陰の殻は黒焦げになり
焼けた臭いに鼻をひる
傘の骨はしろがね色で
{ルビ死灰 ....
遠方で
黄金の光に透ける
青い羽が
凝視されて
宙に静止している

円らな瞳は
充足感で独り笑み
素手で沈黙を刻みつつ

視界の底から
硬く冷たい足音が
つま先を
いつまでも ....
予報は雨

(真昼)
あらがえないの
この時計の刻む
奥底からきこえる声には
自性が宿っているのだから
茫洋として連なっている先へ
零時の胎動しているのは不在
の影が失わ ....
青い血で書かれた水曜性は、
{ルビ万年青=おもと}の実となって赤く結ばれる。
ある、いは、いつになく遠く静かな空で、ある。

店員が しきりにすすめてくる
玄関先に どうかしら
と自分に問 ....
うちわをあおぐ
私は
縁側で
入道雲を{ルビ見遣=みや}る

庭では生垣が
真っ青な息をしている
深い静けさに みちて
遠くで ひもす鳥が ないている

山の ふもとを流れ ....
真実が、
私を知っていれば、
それで良い。
{ルビ空中線=アンテナ}に張ってある
鬼蜘蛛の巣が
霧雨にぬれて
{ルビ銀色=しろがねいろ}にゆれている

   風を孕んだかなしみが
   失せた振動鳴きつくす
   ああ

空中 ....
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