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引っ越してきたばっかりなのに、
ほら、ここは、神さまの家に近いでしょ。
さっき、神さまが訪ねてきたのよ。
終末がどうのこうのって、うるさかったわ。
だから、持ってた布団叩きで、頭を叩いてや ....
未明から降り始めた雪が
台所に積もっている
牧場の色彩を思いながら
わたしは冷たいサラダを
二人分作った
あなたはリビングで
新雪に埋もれたまま
詰将棋をしている
本を見な ....
幻のステージに、
昭和を生きた女がいる
鳥の羽根で飾られた衣装を纏って
ジャズとロックンロールと演歌を混ぜた
──アジアンであり、
──洋風でもあり、
戦争に負けた戦後の日本みたいな
....
ズズズズズズドンッと
とつぜん、学校が
手足をのばして
立ち上がる
で、ドドドドドッスン
ドスンと、しこを踏むと
走り出した
窓から、扉から
子供たちがこぼ ....
雨の気配を感じて手のひらを空へ差し出す
つるりとして
なだらかな
わたしの丘に
今日の雨粒が流れたら
くぼ地の枯れた水路が
一瞬よみがえる
かつて
そこへ流して遊んだ
笹の葉や
....
時折
君の身体から星が発生した
君はいつもそれを
無造作に僕にくれた
――君は星が好きだから
そう云って微笑っていた
何故身体から星が発生するのか
君自身も知らなかった
――何故だ ....
{引用= 我が友、田中修子に}
時折西風が吹く
そして天使が笑ふ
するとさざ波が寄せ返し
沖を白い帆が行き過ぎる
砂に埋れた昨日の手紙を
まだ浅い春の陽ざしが淡く照らす ....
夜風
白銀色の月光り
かじかむ指先の、爪に落ちて、ちいさく照らし返す
甘い潮の香
はなうら 花占 花占ら
月明りの浜辺に咲き
揺れている花々を
一本一本摘んでは花びら千切り
時 ....
どうでもいいぢやないか
それは君のくちぐせであり
ぐうぜんにも 君からきいた
さいごのことばでもあつた
ひと月まへ 一緒に飲んで
別れ際にきいた いつものせりふだ
その前に何を ....
けだもの
ひとの声がする
空がなく
土もない
紙の色の月がうすく照らす
このわづかな世界に
やさしく
神々しく
いつくしみ深く
ひとの声がする
《祈りなさい ....
水になってひそむ
死んだ者たちの{ルビ通=とお}ったこのほそい水系に
官能の色彩はすでにない
光りの粒子のように時は流れ
序章のように生誕の時は流れ
星が囲んだ戦場につめたい炎の舌がみえ ....
息をしている
すべてのものたちが
息という名の
うたをうたう
うたという名の
命を
深く
息を吸いこみ
ふくらんだ分だけの
息を吐く
そのあと
わたしのうたは
誰かの肺の中 ....
自然にできたグループに分かれて
植民地時代のボストンの街並みを色画用紙で再現している
春陽に包まれた5年生の教室
その穏やかな空間に一瞬そよ風が吹いて
支援クラスに行っていた娘がひらりと入 ....
今日も同じ場所で立ち止まれば
聞こえて来る 母の明るい声
「あんたはヤクルトが大好きでね、
お風呂上がりに必ず一本飲まないと寝てくれなかった。
ある時買い置きがなくなっちゃった時があっ ....
あなたのような人は長生きしてほしい
そう素直な人あってのひねくれ者だから
だから九十四歳は悪くない 悪くない
これでも献花のつもりなんだ
アンパンマンを見たことがなかった
なのにアンパン ....