すべてのおすすめ
保育園に通っていた頃
クラスのある女子から 毎日つねられてて
ひとは笑いながら意地の悪いことをすると教えられた
好きだった男の子からは
思えば思われるというのは嘘っぱちだと教えられた
....
踊っている
{ルビ歪=いびつ}な星の上で
バランスをとりながら
踊っている
踊っていないと
この星からこぼれ落ちるから
どこなのかわからないどこかへと
昔
この星は歪でなかったとい ....
壊れた
あるいは
壊した季節
散らばる破片を
君は今は
振りむかずともよい
君が遠くを歩いているあいだに
それをそっと
継ぎ合わす手がある
月と星の光を熔いたもので
ひとつひと ....
雲のネックレスが引きちぎれて
空から雨の粒が落ちてくる
地面にぶち当たり
次から次へはじけていく
鼻を空へ伸ばすゾウが
必死で鼻息を吹き出すけれど
ラッパのような高音は出ない
なし崩 ....
誘惑が房なして実る
秋の夜霜に甘さは深まる
罪摘むように紫紺をつまむ
唇に触れる果皮の悩ましさよ
貴方に押し当てたたなごころの狂乱
ぷちぷちとはぜる無数の果実
ああ こんなにたやすく壊 ....
最初からなかったかのように
あったことを忘れるくらい
少しずつなくなってしまった
零れるとも消えゆくとも
表現しがたい喪失よ
愛おしかったのだろうか
それとも
疎んでいただろうか
....
桁をひとつ増やして
みんなの注目を浴びて
正義のような気がしちゃって
愛されているような気がしちゃって
真理のような気がしちゃって
もう一桁増やして
みんなのことが疑わしくなって
正 ....
あまりにも純粋で
故に{ルビ果敢=はか}なく捉えがたく
けれど
強く深く
轟きでもあり
静寂でもあり
満ちあふれ
けれど虚ろで
鋭く
けれどやわらかく
かぎりなく甘 ....
激しすぎる 揺れ たちを
夜、夜明けまえ
だましながら捕まえて
昼間の街を見せにいく
揺れたちは
泣きながら
嘘を消化して
売り買いできるような
かたちにまとめて束ねる ....
お菓子なことになっちゃった ってお{ルビ顔=かお}
「かみついたりしないよね?」まあいいか
しっとり系を装うほどは 老けてないし
{ルビ花=はな}ふぶきみたいに恋ごころ吹雪かせては
....
原初の苑でヒトがたべた最初の有害物質 林檎
今 やさしくすりおろされて
病むおさなごのくちびるを癒す
有毒の糧の二つ名はなあに?
蜜をひそめ 彼女はうるんだ声でまろやかに笑う。
すべての夢が燃え尽きたあと
僕と君とはふたたび会うだろう
そこには静かな風と
穏やかな光があるだろう
そして僕は
もはや語らないだろう
叶った夢のこと
叶わなかった夢のこと
た ....
さいごだから、と
紅をひいて会いに行った
二度とこの紅がくずされることはないので
安心して いちばん似合う色をひいていった
約束の場所で待っていたひとは
いつも くちびるをくれたひとだっ ....
君の言葉と沈黙をたどる
僕の言葉と沈黙とで
その感触をさぐりながら
そうすることだけで
行ける場所があると
いつからか――
記憶の海より深く
予感の空より遠く
その道のりで ....
猫が液体なら
花は気体だ
空が固体なら
あなたは液体だ
あなたは卵を茹でながら
何処へ行こうか考える
アンドロメダは遠いけど
映画館ならすぐ行ける
あなたは景色で映画を選ぶ
....
僕らは彼方で会う
今此処で会うための身体に背いた僕らは
彼方で会う
今此処を縛る身体に縛られない僕らは
彼方で会う いつでも
いつまでも
僕らは互いに彼方のまま
何度でも会う
....
庭のウッドデッキに
細長い枯れ枝が落ちていた
薄いカーテン越しに見ていると
その先端が微かに動いている
枯れ枝ではない何者か
無機質だと思っていたものが
実は違っていて
ぬめった ....
いま生きながら埋葬されている
あなた
血の滲んだ手で墓掘りのスコップを握ってる
それもあなた
あなたのお葬式は
だれも知らないうちに行われる
正しい名が呼ばれることもなく
墓標もない ....
ふるえるとき、
泣いている、がたがた、さみしくて
ふるえている。
そのとき、
なかみのまま、
外にでていけない。
なかみのとき、
いるとき、
いるように見えて、
いないとき。 ....
優しい崩壊がはじまっていた
あまりにも優しいので
感じるべき痛みを
感じることができない
あまりにも無垢な幻想が
あまりにも無垢なまま
此処を通りすぎることはできず
幾重にも折り畳ん ....
開けてはいけない蓋
開かない蓋
開きそうで開かない蓋
固い蓋
瓶の中身は歪んで見える
瓶の外のわたしは歪んで映る
正常な精神と
健康な肉体と
よくわからない瓶の中身
綺麗 ....
爪を剥がす
わたしの指は二十本あるので
二十回できる
それはやさしさの残機
不安に駆られるゆうべは
脳を取り出して洗う
ホームセンターで売ってた一番強い漂白剤に浸けて
洗面台でじ ....
日が暮れてひとりの棲み家に戻る
靴を脱ぎ
1Kのアパートのなか
フローリングに膝をつき
頭を垂れる
声もなく
神すら必要としない
祈り
どうかあしたも日が昇ってください
いや ....
あなたは静かに家をつくりはじめる
静かに 何年もかけて
あまりにも美しくそれは成されたので
家ではなく 森や 額縁や ひとかたまりの風に見えた
静かに何年も何年も
何年も何年 ....
あめ
ひと
設計図の無い
みずすましの痕
フロウ
触れて
薄い指先に
不在が
あるから
テレビジョン・
セットの
お笑い
本当はみんな
はぐれて
いきたい
末広通 ....
帰宅途中の
夕雲の群れに
滴るように
求めながら
どこにも空きは
現れない
千切れそうな
心持のなかで
言葉だって
ひとつもない
街路樹として植えられた夾竹桃の花が咲いている
車通りの多い道
排気ガスで煙る景色
花びらは桃色
街に溶け込み人と共存する
この街は空気が淀んでいて
たまに離れたくなる
お昼も過ぎ ....
暗闇の中で働く
囁く
声と指は一定の距離が保たれている
そのために肉体がある
肉体のために空港がある
滑走路に置かれたピアノは
調律が三時の方向にずれたまま
夜明けの離陸を待っている ....
生ぬるい水滴が顔に当たる
スコールのせいでグロテスクに地面が陥没する
逃げるように
雨を避けて
ヤモリがへばりついてる
軒下のアクアリウム
傘を忘れたから
家に帰れない
....
草が草の記憶を語りだすと
風の結晶はふと風に溶けていく
掌で温めていた卵が消えてしまった時
わたしは初めて言葉を知った
その日の夕方
新しいベッドを買ってもらった
感謝の気持ちを伝 ....
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