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女が 路地裏に居るのを見た
雨が 降るのを見た
ライトがいくつか点いて
薄暗さの充ちてくる
音の ころがる時
夜の始まるのを見た
おかもち提げた女子 ....
ふしあわせ というものが
とくに こころ美しく
あたまのするどい ひとに
みいる のでしょうか
はんぶん いろづいた林檎の
つめたい甘酸っぱさを
あなたは こころ ....
水死人の捜索船が
大声でどなり合い
そして 声の沈まり
ぞよめく
夏も終わって
浜辺も空虚で
そのさざめきが
かえって救いの様だ
この付近の人々には
....
京都三条大橋から
どう歩いたのか 黄昏時
そこは照明も暗めな地下の酒場
会社で 見かけたことのある
顔が目につく
チケットが一枚余ったんだ、と言う
上司から強引に誘 ....
林檎を むきながら想う
貴方の目
どうしても思い切れない
あなたの声
リトルシガーの煙
うすく立ちのぼる果は
頼りない指の先
もはや 希望の色はなく
何か ぼ ....
心の 跳ねとぶような白
に、目を見張る
花は幻の様で すみとおり
もう萎んでしまう朝
銀夜に 開き
香り咲いた一輪のナイトクイーン
純真さが迫る ....
まだ 夜は明けない
食器棚からグラスを出して
のぞいてみる冷蔵庫の野菜室
うっすら汗ばんだ からだに
国産レモンを半分絞った
ミネラルウォーター
....
熱砂 と
真空
ごう音と
死の静寂
閃光 と
奈落
重々しい
数十万の足音が
はてもなく続いて行く
銃をかつぎ
一すじの乱 ....
未だ 秋は
何処に居るかも解らない季節なのに
あなたが別れよう という
緑と
白と
二色に色分けた水が流れる
橋に立てば
上流にまわる水車
そして
長く流 ....
暗いバーで
黒い服がよく似合った女が
しわがれた声で私の名をきいた
煙草とウイスキーの琥珀によどんだ目で
笑いもせず何故
私を 見つめるのか
フロアから這い上がっ ....
遠イ遠イ雪ノ山
降リル事ナゾ思ハズニ
タッタひとりデ ノボルノデス ト
誰モ ダーレモ
女ガひとりノボッテイルコトナゾ
知ラナイノデス ト
止ンデイタ雪ガマタ
サ ....
降る雨の音の彼方
何か物憂いささやきがある
降る雨の
或る古い影が
街頭へ彷徨い出て
騒音の中で狂い始めた
一心に 鎮めようと
声をかけたが
空を跳ね ....
お湯を沸かしながら
まだ眠い気だるさには
モカブレンドのドリップコーヒー
昨夕スーパーの陳列棚に一袋だけ
お買い得商品のプライスで残っていた
この一杯の 目覚めが心地良い
....
地に 夏が吸い込まれた
そこを裸足で 歩いたから
ピリピリと
心臓が
感電でもした様に痛む
熱気の中で せい一杯
裸足は大地に反撥を試みる
そして大樹の繁 ....
詰まらない
タワ言を 一人並べて行くだけでも
やはり詩だと
思うようになった。
ノンフィクションの世界
硝子で仕切った空間に
一鉢のサ ....
最期を迎えるならば
例えば
深い深い夜
病室のベッドに居て
国道一号線走る運送屋の
大型トラックの音に
ただ耳を傾ける事の出来る
そんな自分でありたいのかもしれない
....
半月のゆらめき昇る時
哀れにも
恋の嘆きのリフレーン
がらんどうの
もはや、夢をつくり得ぬ
心
何もかもが
その中で共鳴するから
全てが 一様に化合さ ....
祇園の石段の上から
灯の街を眺めさせたいと
私の腕をむりやりつかんで
つれて来た あなた
遠い異国の昔
王宮の血汐がはねあがった日
革命の巴里祭
そして日本では祇園祭 ....
会社の大会議場のお客様控室に
ちょっとアンティークなドレッサーがある
清掃に入ると鏡を拭くついでに
ヘアスタイルを確認したりしてしまう
くもりない三面鏡が私を映す
一面に ....
小さなグラスにウイスキーをなめなめ
夜更けて
行くのを知る
そういえば私の影は何処へいったでしょう。
「探しにでもいったのでしょう。」
あら、何 ....
暗闇の中には沢山の物語がある
パリの老いた靴作りが
ハンチングを傾けてかぶっているのは
むかし街の女に
とても粋だわ と口笛を吹かれたからという話
それでそ ....
路の端
行きすぎるヒトの脚許
恐れもせず
ヨチヨチ
細い舗道で歩調ゆるめるヒトたちの視線
浴びる君はなんとか
横断すると
また 喫茶店のガラス扉の前
軒下う ....
給料日 仕事上がりに立ち寄るATM
その銀行の隣に花屋がある
軒先、白い看板には飾り文字で「花音」
店内は細長いスペースで奥行きあり
入り口に色とりどりの花の苗が陳列していた
....
いつからか
私のまわりを古びた影が踊るようになった
冷たい唇を
心臓にぴったりとはりつけて
やがて
血汐をすいとってしまうのではないか
だが
....
風の中に雨がむせび
雨の中に女がむせぶ
長く長く
細く細く
胸の中に
容赦なく風が吹きこむ度
血潮のいとおしさに女はむせぶ
過ぐる日 ....
地元走るローカル線を無人駅で降り
山裾へのぼる細い道で足を止めた
通りすがりの一軒家
茂る枝葉を被った鉄の門
奥に木造の二階建て
軒下には蜘蛛の巣が灰色の層になっている
....
日本海に春の来た時は
カラカラ カラカラ と
生命ない小石が激しい息吹をもらす
波 寄せる毎
丸くなり
妙に乾いた音たてて
踊り上がりながら 転げこむ
海の碧に惹 ....
輝いた肌を白シャツで包み
黒い目を持ち
広い肩を持ち
その人は今日
目の下や口の周りに軽い擦過傷があり
絆創膏を貼っていました
柔道部に所属していて黒帯なのは知っていまし ....
気持ちの不安で落ち込んだり
あるいは高揚感に落ち着きの無くなってしまう時
深呼吸する
そして私はシングルポイントの六角柱水晶を握る
掌の柔らかい部分に三辺の角が当たり心地良く
....
それは直径十二センチのバースデーケーキだった
スポンジ全体に
塗られる甘みをおさえたクリームと
細かいおろし金で削られたホワイトチョコレート
が、一面に振りかけられて
まるで遠い ....
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