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詩を書くと
詩のなかに彼方が生まれる
その彼方について詩を書くと
そのまた彼方が生まれる
身体は此処にとどまったままで
幾重もの彼方の谺を聞く
浅い春が
私の中に居る
いつからかずっと居る
浅い春は
爛漫の春になることなく
淡い衣のままで
ひんやりとした肌のままで
佇んでいる
(そのはじまりを
浅い と形容されるの ....
僕は夜明けをあまり知らない
けれど夕暮れならたくさん知っている
薔薇いろから菫いろへとグラデーションする夕暮れ
金色の雲が炎えかがやく夕暮れ
さざ波のような雲が空を湖面にする夕暮れ
不吉 ....
濃密だった夏が
あっけなく身体からほどけてゆく
世界から色を消してゆくような
雨が降る
雨が降る
あの光きらめく汀を歩く
私の幻は幻のまま
それでも
夏はこの上なく夏であったと ....