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人と人の間の
カキネのカベを、壊す時
遠い空で
合図の笛は鳴るだろう
利根川の{ルビ畔=ほとり}に佇み
川の流れと
人の歩く時間について
思い耽っていた
風が吹き
ふり返る僕の方へ
無数のタンポポの綿毛が秘めた笑いを響かせ
降ってきて――今日の景色は、 ....
晴れた日の鎌倉は
緑の木々の間に立つ
お墓さえ
明るく見える
あの日、体を脱いだ君は
いつから
若葉をそよぐ
風になったろうか
何処かで鳥が鳴いている
それは円い空から
鎌 ....
この部屋の窓外に
まっすぐ上りゆく
街路樹の坂が見える
いつか旅した函館の風景
のようで
ここは都内だ
今日もこの街で
人々は語らい
キッチンの皿は音を立て
車は行き交うだろ ....
「周ちゃーん!」
パパとママと手をつなぐ息子の
後ろから、女の子が呼びかける
周が、まだ言葉を知らなくても
すぐに反応がなくても
女の子は小さな春風と共に
保育園の門へと、駈けてゆ ....
僕の部屋の片隅に
久しく再会した
幼稚園の頃の先生が呉れた
ご主人の形見の下駄が
置いてある
夜の部屋で、ひとり
黒い鼻緒の下駄を見ていると
あの大きな背中と共に
からん、ころん、 ....