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愛は真っすぐ丘を登って行った
蹄の跡を頂に置き去りにして
光は渦巻いている
春の風がむき出しの土を{ルビ弄=まさぐ}っている

あの日太陽を塗りつぶしたのは誰だったか
わたしの心臓を突き刺 ....
{引用=破傷風}
この世界を憂い悲しむ心は知らぬ間に
蜘蛛より細い糸で繋がっている
見たことも触れたこともない天の何処かと
教育によって与えられたのではない最初からあった
見えない傷口のよう ....
{引用=梯子}
高く伸びた梯子があった
青い空の真中に突き刺さり梯子は行き止まる
果て無きものに接した微かな上澄み
触れていることすら定かでなはない
その虚無の厚みの中
降り立つ場所もなく ....
{引用=朝}
朝を見た
眼球は冷え切り網膜は焼かれ
白銀が太陽光を押し広げている
湛え切れず溢れ返り飛沫を上げている
微かな凹凸にも蒼い陰影が添えられて
美しいという言葉は不釣り合い
目 ....
黒い森に満ちてくる水の囁き
乱立した死を足元から咀嚼して
本能すら気づかないまま飼い馴らされ
鳥も猿もみな魚になる
愛の骸の揺籃は腐った銀河のよう
崩れ去って昼も夜もない今
柔らかな時計の ....
雨粒の一つ一つが水の惑星として多くの生命を宿している
ちょうど今日のような日に
水は忍び寄る 音楽に紛れて
耳の奥の貝を発芽させるために

アンモナイトが石の生を得るずっと前
いい陽気の朝 ....
鐘を失くした鐘楼の
倒れ伏した影が黄昏に届くころ
わたしは来てそっと影を重ねる
深まりも薄れもせずに影は
その姿を変えなかった
わたしは鐘
貝のように固く閉じ
自らの響きに戦慄いている
 ....
一つの知らせ
一枚の枯葉のように軽く
風の悪戯な囁きのようで

隕石のようにこころ深く
波立たせ沸々と滾らせる
一つの知らせ


冷たい火夢を注射した男が蜥蜴になって
すばやく夜の ....
あのバラはなにを叫んで萎れたのだろう
色味を残し 姿を保ち
精気だけをすべて失ってあのバラは
果てしなく続く沈黙と引きかえになにを

あの船はなにを乗せて燃えているのだろう
水平線をゆらゆ ....
エンジンを切った軽ワゴンの屋根を打つ
冷たい春の雨のリズム
捉えきれないπの螺旋を
上るでも下るでもなく蝶のタクトで
震えている灰を纏って朝は皮膚病の猫に似る


   考えている
  ....
木片の内には像も形もない
{ルビ自=おの}ずと示す雛型も
なぞるべく引かれた線も
一つの像が彫り出された後で
木片はその内部に
一つの像となりうる可能性を秘めていたと
言えるだろうか
限 ....
まっすぐな道を曲げるのも
曲った道をまっすぐ往くも
はたから見れば
つむじ曲がりのへそ曲がり

味や香りが劣ってなくても
曲がり傷もの二束三文
好きに選べる人もいる
ふところ具合の人も ....
今朝は冷たく澄んだ風と光のやわらかな壜の中
――長らく闇を枕にうつらうつら微睡んでいたのだが

凪いだ二月の日差しは眼裏を揺らめかせ熱を奪い
夢のへその緒を焼く 声を失くした叫びが黒点となる
 ....
精神の死と肉体の死の{ルビ間=はざま}に続く茫漠の荒野で
ぶつ切りにされた人間の断面を見つめていた
どんな言い訳も成り立ちどんな解釈も成り立つ
一枚の写真が辺りすべてを眩暈させる

朝の光に ....
上着から落ちた雪のかけら
ストーブの上すぐに 色を失くし
ふるえ悶えて消えて往く
あっという間
案外 ねばりもしたろうか
無になった訳じゃない
見えない つかめない 形がないだけで
身軽 ....
雪が密度を増す
白の重ねに滲む陰
朝は指先すぐ
声は遠く流される
赤ん坊の目蓋の向こう
海に架かった黄金の橋
糸屑のように燃えて


光が厚みを増す
白は静かに湧き上り
冷やかな ....
別に天国の歌声に耳を奪われている訳じゃない
地獄の底から湧き上る苦悶の呻きに眠れない訳でも

聞いているのはこの世界 尽きることのないお喋りと
拮抗しながら 解かれて往く 形あるものの軋み
 ....
澄み切った空 静かに
月の横顔の
化粧を落とした白さだけ
深々と冷気は立ち込めて

木々と木々の間を渡る
鶫や連雀の羽音は
はたはたと 重ねられ
地にふれず かき消され

今朝わた ....
そのころ
あなたは在って
あなたは無く
茫漠と
靄につつまれて
あなたは


生への渇望と死への誘いが拮抗する最中
やわらかな被膜すらまだなく
渦巻く闇の限りない張力と
己が中心 ....
もとこさんのただのみきやさんおすすめリスト(19)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
術もなく- ただのみ ...自由詩10*20-5-3
壊疽した旅行者_一- ただのみ ...自由詩2*20-3-21
行方知れずの抒情_ニ- ただのみ ...自由詩4*20-2-23
点の誘い・線の思惑_五- ただのみ ...自由詩5*20-2-11
編み直される時間- ただのみ ...自由詩8*19-1-27
完全体のためのプロト- ただのみ ...自由詩5*18-5-9
鐘楼- ただのみ ...自由詩13+*18-4-7
あなたが来る- ただのみ ...自由詩4*18-3-17
あのバラはなにを- ただのみ ...自由詩5*18-3-14
金の林檎- ただのみ ...自由詩5*18-3-10
空を彫る者- ただのみ ...自由詩15*18-3-7
現実を弓とし概念あるいは感覚を弦として放つ矢のソネット- ただのみ ...自由詩5*18-3-3
酔っ払いの手記- ただのみ ...自由詩8*18-2-28
真逆の同一- ただのみ ...自由詩5*18-2-24
出来過ぎた話で- ただのみ ...自由詩5*18-2-21
アンチ- ただのみ ...自由詩3*18-2-17
自分に関する限り- ただのみ ...自由詩8*18-2-14
ひらきかけの箱- ただのみ ...自由詩12*18-2-7
うつろな姫- ただのみ ...自由詩5*18-2-3

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