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実家の仏間では
北の方角に手を伸ばし
いつでも笑い出す
生まれて間もない甥っ子。
姿かたちは見えなくとも
かわいい孫に会いたくて
ふらりと帰ってくる父が
楽しいひとときを過ごしている ....
父のお骨を眺めたら
諦める。という気持ちが
蘇ったらしい。
重たい陶器の蓋を閉めて
位牌と遺影を並べたら
合わせた手と手の隙間に
小さな水たまりができた。
桜の季節
舞い踊る花びらの中で
遺影の父が笑っている。
暖かな風が吹いて頭上を見上げれば
並んで浮かぶ雲が二つ。
その姿は
海原をゆくイルカの親子にも似ていた。
八ヶ岳の裾野に抱 ....