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その椅子はどこにあるのですか?
木製のベンチに根ざしたみたいな
ひょろ長い老人にたずねると
そら、にとぽつり言葉を置いて
眼球をぐるり、と回して黙りこむ
そら、空、いや宇宙だろうか
....
たくちゃんやアーくんはとても
綺麗なフォームでクロールするんだ
彼らのように泳ぎたいわけじゃない
水と愛撫し合う幸せを知りたいだけ
包帯が水を吸って絡みつく
誰もお前は認めない、とい ....
虎がいます
胸の中に虎がいます
人喰い虎か、人良い虎か、人良い虎は寅さんかい
ほら、見なよ、あんな虎になりてぇんだ
けれどこいつは張り子の虎です
淋しがりやで強がりで
涙を飲み込み ....
灯台の灯りで煙草に火をつける
まるで灯台がチリチリと燃えるよう
灯台を吸い尽くしたら
波濤を彷徨う船たちも
みな底に攫われた悲しみも
どうやって帰ってくるのか
煙草の火をグルグルとまわ ....
一輪挿しの花を
わたし達はただ愛で
やがて枯れたならば
裏の畑に埋めて
忘れてしまうでしょう
なぜ、忘れてしまうのでしょう
そうして人々はまたこともなく
明日の朝を、明後日の夕 ....
忘れられない事を
確かめるためだけに
息継ぎを繰り返すのだろう
(葉桜は永遠に葉桜やったわ)
灰に塗れ肺は汚れて骨肉はさらされ血の流れは遠く故郷のくすんだ川面のような在り方しか出来ない ....
水面の月を一掬い
啜ると泥の味がした
こいつは幻想で幾ら美しくても
血は通っていない偽物だ
僕らは二十歳の頃どぶ鼠だった
灰ねず色の作業着で這いずり回り
朝も昼もなく溺れるように仕掛け ....
ミイラ男だったころ
身体は包帯を巻いてひっかけるための
ものでしかありませんでした
歩けば犬が吠え、親は子どもを隠します
皮膚が引き攣るのでよたよた、していると
見知らぬ人たちが不幸だ、 ....
さよなら、が瞬いては消えて
こころに小々波もおきない
からだの輪郭はどこかに消えて
狭い部屋でちいさな湖になって
水源へ染み入ってゆく
くらいくらいばしょ
ひかりしかないばしょ
....
忘れ去られ、蔦が這い
色褪せくすみ、ねむったまま
死んでいく、そんな佇まい
そんな救いのような光景を
横目に朝夕を、行き帰る
遠くのタバコ屋の廃屋まえ
どんどんとカメラが引いて行き
エン ....
もう
陽がくれる
とつとつと
西へ西へと歩んでいくと
孤影は東へ歩み去り
すれちがうのは
ひとつ、ふたつの足音と
みっつ、よっつの息づかい
いつつ、むっつのさみしさよ
....
太鼓の皮を破るような
驟雨が駆け足で通り過ぎていった
恐る恐る顔を軒に突き出して
ほっ、とする、お天道さんと
顔を突き合わせて
軒下で菜園の土を破り
アスパラガスの夏芽が
にんまり笑 ....
茅葺き屋根に鳥が舞っております
舞い降りてくるのは雲雀でしょうか
春を尾に引く雲雀でしょうか
茅葺き屋根に陽が舞っております
待っているならススメと云います
陽は待たずススメば夜が来ます ....
ここは私の国ではないから
わたしの言葉は通じません
何を言われているのか言っているのか
水の中で互いにぶくぶくしながら
ただただ息苦しくてしがみついてたから
爪は剥がれ肉も削げて皮膚のし ....
丸い小窓を抜けたなら
まぁるい形になるだろか
四角い小窓を抜けたなら
しかくい形になるだろか
まぁるくしかくくなりながら
眠る赤児のくちをぬければ
どんな形になるだろか
そこにい ....
磨り硝子の向こうをよぎったのは
夜を飛ぶ鳥なのだろうか
地に落ちていく誰かの魂だろうか
生れ落ちていく無垢な魂だろうか
それとも夜に自由を得る地を這う
人々の束の間の歓喜の夢かもしれない ....
長方形の焼跡は億年の時を経て
掘れば首長竜の化石が眠っていて
あなたの声も眠っているだろう
倦んだ日々に
燃え尽きていった
古い絵葉書
切り抜きの地図
杭州西湖へと
引かれた
....
とじた目蓋の裏に海がさざめいていて
丸めた背中の上を野生の馬たちが疾る
寝息を受けて帆船が遠くへ遠くへ
あなたの存在そのものが夢のよう
そんなふうに思えたことがあった
ひとりでない、 ....
誰かが正しいという循環から外れても
心臓は打ち、もの思わぬことはない
放たれない言葉の流れが澱み
わたしはわたしから溢れ
低きに流れて見上げるのも
疲れるから地底湖になっている
と ....
透けた文字の凹凸
まだみぬ未来の影を踏むように
まだ逢えないひとの指先を数える
まだまだまだ未だこない時が記されていて
凹凸に触れるゆびさきは酔い痴れる
うらおもて おもてうら ....
じろう、きたろう、いず、きしゅう
ゆうべに、はなごしょ
ごしょ、たいしゅう
いろんなカタチをしております
えど、ふじ、はちや、れんだいじ
つるのこ、よこの、たかせ、はがくし
酸 ....
磨り硝子の向こうをよぎったのは
夜を飛ぶ鳥なのだろうか
それとも
地に落ちていく誰かの魂だろうか
生れ落ちていく無垢な魂だろうか
ぼくの見えぬところで
はじけたり、とんだり、は ....
その手は冷え切っているから
あなたが春なのか冬なのか
わからなくなってしまいます
つくしにふきのとは
いつもの場所にいません
あなたの背中をさがして
遠まわりして歩いていたら
風 ....
一輪挿しの花を
わたし達はただ愛で
やがて枯れたならば
裏の畑に埋めて
忘れてしまうでしょう
なぜ、忘れてしまうのでしょう
そうして人々はまたこともなく
明日の朝を、明後日の夕を ....
小夜時雨、わたしは夜のなか
朝をしらない、昼にふれば
だれもわたしを小夜時雨と
よびはしないから、涙もない
夜の静寂を細いゆびでたたく
あの窓明かりからのぞくひと
あなたがわたしをわす ....
寒の暁には
怜悧な羽根の
蜻蛉がつぃーつぃーと
細雪に混ざりこみ
わたしの心を
薄く
うすく
スライスして
春も夏も秋も
冬もなく
町の風景に散らばめてゆき
ます、冷え切っ ....
古物が集積された
墓場のようなビルの前
フェンスにもたれて
剥げた手足を
褪せた顔を
晒しながら
途方に
暮れて
きみは空を斜めに
見つめている
いつか駅にいたきみ
もうなに ....
冬に映える黒髪の獣の口から、あなたとの四季のため息が風に巻かれていくよ。あのシャボン玉がすべて包んで弾けたからぼくやきみの悲しみさんはもうないんだ。同じように喜びも弾けて消えるからまた悲しみさんはとな ....
老人はおまえに
ものを
放りこむ
赤々とした
その口へ
おまえの頭上で鍋が笑っている
数限りない夕餉の匂いがおまえに
染み付いている、また酒の芳しい香りと
血の流れと涙は静かに漂っ ....
手放したコートが風に舞い
風がコートを羽織っているようだ
見知らぬ少年がそれに目を
奪われている足元には
踏みつけられた草花が痛々しい
何も人に与えられないから
たまになんでも手放してしま ....
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