生きたまま花の化石になりたい
という少女がいて
街は、霞のようにかすかに
かそけく 輝いているのだった
ちちははの眠るやわらかな記憶の棺たち
少女は母似の瞼をとじた ....
痛む目頭を押さえ
溢れそうな感情を抑えている
救いは目に入らない
意識が捕らえたがるのは
真面目に選ぶ事も無い悲しみや焦り
何故?
どうして、
繰り返され ....
暗闇に蒼白い河原の
小石夥しく静まり返り
流れ動き澄む川は無音
黒く光る水面の異様
恐るべき氾濫を孕み
奥まった沈黙を保つ
決して終わらない不安は
この沈黙という深い謎に
剥き出し ....
金木犀の花を瓶に入れ ホワイトリカーを注ぐ
ひと月ほどして 香りも色も酒に移った頃
金木犀の花を引き上げる
その酒は 甘い香りをたぎらせ 口に含むとふくよかな広がりを持つものの まだ ....
ある雪の日、名前のないわたしが名前のないあなたを待っている。
「吾輩は神である。名前はまだない」なんていうしょーもないことを言ったら笑ってくれるかなとか思いながら待っている。
待つっていう、なんだ ....
孤立
は
死病
だ
人は人と
繋がらなければ
生きていけない
のに
金を持って
いないと
キリストだけ
を信じて
いないと
健康で
いないと
胃ナイト
クエネェシ ....
Ⅰ
私は人間ではない
生物でさえない
生きているのに
Ⅱ
私は一本の直線だった
貴方のことを知りたくて三角形となった
私のことを知りたくて四角形になった
いくら角が増えても角(つの ....
壷に近付くと
体が柔らかく成って行く
この身はワンピースを纏い
大学が地権者の集まりと成って居る事に気付く
津田医学を信仰して居た私は
アダムとイヴ(エヴァ)の研究を通じて
蛇の余分さを知 ....
わたしはもう
石になってしまいました
かつてわたしにも
水だった時代があり
白濁した粘質の水となり
やがて泥となり
固まっていったのです
土として長年を過ごし
生き物をすまわせもし
....
納豆のカラシ
ぜんぶは入れない
納豆のカラシ
小袋に残る
納豆のカラシ
可燃か 不燃か
納豆のカラシ
とりあえず 可燃へ
納豆のカラシ
今夜もまた ....
あなたが、綺麗って言う
私は、そう、って言う
あなたの後ろ耳が真っ赤で
....
土佐の海辺の村で
毎日毎夜薄暗い電灯の
野外畳の上にでんと座り
鍋に茹でられた貝という貝
爪楊枝でほじくり出して
それぞれに違う味覚
食い喰らい喰らい食い
瞑黙ひたすらに
味わい味わい ....
洗いたての芝生がちろちろと
脈を交わらせている
川までの道すがら
ちいさな生き物は溺れ死に
汚れた内臓は、光る命へと洗われる
車椅子に花を差し入れる
目を細めてファインダーを覗 ....
断崖絶壁を前にして
落石も気に掛けながら
桃太郎の里を目指す
空手の達人ヤンスエは
桃にかじりつきながら
相棒のEvaに微笑みかける
すばしっこい蜂に刺されても
ノアの大洪水で込み合って ....
サンタクロースが
ついに狂った
12月も半ばで
低い雲の広がりは
初雪の予感さえ
醸し出している
もう季節の変わり目とは
言えない夕時に寄った
改札前のコン ....
戴いた去年の賀状を
眺めながら
一枚 書くたび
次々に
押し寄せてくる
記憶の波に
浸るのではなく
溺れるでもなく
むしろ
耐えている
再生多発する 複数の痛みに
懐かしさな ....
その眼で、その眼で歪な
赤い円を描くのです
咲かなくていい、咲かなくていい
と
ベランダのプランターに言い聞かせ
私は伝記工場へ向かいます
5バイトほどの容量です
けれど
....
愛娘が毎朝八時に起こしに来る
歪み捩れた時空の層を超えるのは
なかなか大変だそうだ
[合鍵を作ってやろうか?ちゃんと電車に乗って来いよ]
おはようのキスをしながら僕は言う
[そんなことし ....
天花粉の丸い小箱にはいっていたのは
祖母や母が立ち切狭で廃品回収に出す前に
切り取った釦
鼈甲仕立ての高価なものもあれば
校章入りの錆びた金釦や
普段使いのプラスチック釦
そし ....
あれは、さみしいひと
佇んでた 遠目からじゃ見えない
薄青い菖蒲が頼りなさげに風で揺れてる
通り過ぎて交じり合わないひとたち
全ては、約束事で絡み合って
ゆれていく
可愛い大地がさような ....
雀の糞に塗りたくられたフライトは薄い磨り硝子の向こう
、
ねむってしまったよ
潰れた屑は張り裂けた胸の奥にしずんでいく
澱んだ色の太陽が弾け飛んだ時
喉を裂いた 、
....
あなたを思うと、
わたしの心に幾つもの
穏やかな図形が描かれる
熱い珈琲をかきまぜながら
窓の向うの樹をあなたは見ている
たぶん、世界じゅうのすべてのものが
....
今日も りゅうが 脱走した
「理由」なんて聞く奴がいるから 逃げだしてしまうのだ
話の尾ひれなんて無視して
ゆらぎは水の色
ゆがむからだのまるみに いかす光彩くねらせて
す ....
電車の中で
懐かしい訛りが聞こえる
聞き間違えることのないその方言は
故郷の海の匂いがした
私の中にはおさかなが住んでる
ぴちゃん
揺れて
ねぇ、ちいさな音
震えるみたいな ちいさな音
怯えないで
高い音ではねるときもある
ぴちゃん
とがって
ねぇ、 ....
金魚鉢を売りに
宇宙基地に行くと
そこには所狭しと
地球脱出用ロケットが並び
丘一面の仙人掌が
キカキカキカと揺れている
頭の上の羽のかたまり
空は川底 地は水面
光と ....
事務のことが
あまり分からずにいた
町医者はようやく
面接を終えたあとでした
この紙は職安にFAXすればよいのかしらと
採用を決めていましたが
横たわる夜空に向かって
そう尋ねたのでした ....
朝靄の しんとした公園で
ゆりかごが一頻り揺さぶられ
あかるい 幾つものさびしさが
同じ数のむかでに変わるまでの間
わたしたちは決して変わらないだろう
....
ビリビリに引き裂いた
力任せに 泣きながら
それでも気が済まなくて
鋏でジョキジョキ切り刻んだ
その切れ端を 徹底的にシャッフルした
元の形などわからないように
二度と思い出さな ....
大切なのはこの詩を書いているのが別に僕じゃなくてもいいってこと
詩を読むとき誰が書いているかなんて気にしないでいいし詩を書くときも「僕」なんていらない
大切なのは詩が君に向けて書かれているって ....
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