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  静かさ


静かさ、といふ音があると思ひます。

秋の夜長、しをれかけた百合を見ながら
静かさに耳を傾けます。



{引用=(二〇一八年十一月八日)}



 ....
手紙がある

うす桃いろの
手ざはりのよい 小ぶりな封筒の
崩した文字の宛て名も品が良い
封を切つて なかを開けるに忍びなく
窓際の丸テーブルに置かれてゐる

さて 何がか ....
色画用紙をひろげて
影をうつす
木炭でなぞる
しばらく眺める
笑いがこみあげてくる
なんと へんなかたちなのだ
俺といふやつは
俺は笑つた
笑つて 笑つて
笑ひ尽くした
 ....
  けだもの


ひとの声がする

空がなく
土もない
紙の色の月がうすく照らす
このわづかな世界に

やさしく
神々しく
いつくしみ深く
ひとの声がする

《祈りなさい ....
   羽


 とんぼが旗竿の先にとまつてゐる。

 セルロイドのやうな羽の一枚が、半分切れてゐる。

 緑の縞の入つた黒い胴を一定のリズムで上下させ、三枚半の羽を震はせながら、とんぼは ....
 よく晴れた十月の午前
 山の上の一軒家にひとりで住んでゐる松倉さと子さんのところに
 郵便局員がたずねてきた。

「ごめんください、お届けものです」
「あら、何でせう」
「どうぞ ....
  或る秋


切り取られた空が

造り酒屋の軒先にひつかかつて

はたはた ゆれてゐる

おかつぱの姉さんと

坊主頭の弟が

口をまんまるにして

それを見つ ....
  お月見


少女は青い服を着て

ひと晩ぢゆう恋文をかかずにゐた

姉さんの形見のコーヒーカツプに

月をうかべて


{引用=(二〇一八年九月二十五日)}

 ....
いつぽんの川がながれてゐる。

川べりの道は夏枯れた草に覆はれてゐる。

川はゆつたりと蛇行して その先はうつすらと 野のはてにきえ

太古の記憶へとつづいてゐる と村びとたち ....
誰が私に声をかけなかつたのかわからない。

葱の花がしらじらとした土の上でゆれてゐる。

その下に妹の骨がうめられてゐる。

捨ててしまはなくてはならない。


丘をこえて夜 ....
なにか

白い ものが

のこされて ゐる


うまれたものが

去つた そのあと に

そしてこつちを

みつめてゐる


長い午後に

時が

裏返 ....
うつくしいひとたちに遇ひ

うつくしいはなしを聴きました

空はたかく 澄んでゐました

かなしみはもう とほくにありました

よろこびは すぐそばに そして

手のとどか ....
鳥の船が沖をゆく 夏の朝

雲の峰が溶け やがて海になる


{引用=(二〇一八・八・一〇)}
白いりんごをのせた皿に薄陽がさしてゐる。

月をたべた少女が硝子の洗面器にそれをもどした。

日が暮れる。わづかに年老いてゆく。
   Ⅰ

わすれてもらへるなんて
うらやましいことです

たれの目にもふれず
こころのうちに咲き
たれに憶えてもらふこともなく
たれにわすれられることもなく
時のは ....
{引用=   The Evening Prayer}


だんだんみじかくなる

{ルビ滴=しづく}よりも


もうきこえません


うけとつてく ....
猫がちひさくねてゐる
がらんとしたひる下がり

友だちの本棚に
一冊きり のこされてゐた
うすい詩集をひらく

表紙は白 何もかかれてゐない

一ページ目
「私 ....
かわいい小鳥が鳴いてゐる

かわいい小鳥が鳴くたびに

肩がずきりといたい


ええ わたしは鳥だつたんですよ


ひとのゐないところでは

いまでもときどき鳴 ....
猫といつしよにすはつて
落ち葉がものすごいいきおひで
木にもどつていくのをみてゐました

世界がどんどんまき戻されて
文明がはじまるまえの
澄みわたつたあをぞらにもどりまし ....
花がしづかに揺れてゐる。

その横に小さな言葉がおちてゐる。

姉さんがそれをひろつて、お皿にのせた。


子供たちは外であそんでゐる。

まぶしいほど白いお皿に ....
{引用=米カリフォルニア州の出張先にて父危篤の報に接した日の深夜一時、外に出て見上げた空に浮んだ月を見てゐるうちにふと現れたことばを記した。その約六時間後、日本時間の八月十日午後十一時五十七分、父逝去 ....
ひだかたけしさんの石村さんおすすめリスト(51)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
静かさ/窓/祈り- 石村自由詩23*18-11-25
秋にとどいた手紙- 石村自由詩20*18-11-16
少々早い辞世の歌- 石村自由詩17*18-11-6
けだもの・部屋- 石村自由詩29*18-10-29
羽・廊下・絵本- 石村自由詩24*18-10-22
やさしい世界の終はり方- 石村自由詩26*18-10-14
或る秋・連絡船- 石村自由詩20*18-10-6
掌編二題- 石村自由詩19*18-9-28
小さな村で見た- 石村自由詩22*18-9-20
- 石村自由詩10*18-9-12
白いもの- 石村自由詩10*18-9-10
- 石村自由詩15*18-9-2
水平線- 石村自由詩7*18-8-29
日暮- 石村自由詩10*18-8-29
春のスケツチ三題- 石村自由詩19*17-10-13
晩祷- 石村自由詩12*17-9-30
- 石村自由詩10*17-9-24
肩がいたい- 石村自由詩8*17-9-17
もどつていく- 石村自由詩16*17-9-8
草色- 石村自由詩19*17-8-31
月の夜- 石村自由詩12*17-8-24

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