すべてのおすすめ
夜が
砂糖壺の
ふたになって
ぶどう色の
円を描いてるんだ
いよいよ
それが
球になって
転がるころ
ぼくたちは
剥けた 傷みたいに
そうだね
あたらしい
....
なつのいちばん平なところへ
わかい鳶がよりそって
切り裂くようにとびたったなら
さんざんひかりに照らされて
得体をなくしたさびしい熱が
誰か誰かと呼んでいる
正直なものが高くと ....
あわ粒に記号をふったり、
オルゴールのはじく金属の突起をおいかける
午後、まだ日のたかい街をうろうろして
存在という妄想を
あじわっている
からだの外がわで
世界と 物事が
....
うつぶせの 街は夜
わたしはとけて
中指のつめだけが
床にのこった
そのうちに春が来て
夢がながれる
ここにいた爪は
むかし 女のかたちをした
生き物だったと
夜
からだじゅうのあなたを摘みとりながら
指はあおく湿っている
記憶はうすくひきのばされて
ところどころやぶけながら
いつまでも種を蒔きつづける
朝
おもたい夢を湯舟に投げこんで ....
しーちゃんちの壁は砂壁で
さわるとちょっと手についた
しーちゃんのなかにチェーンのきれた自転車があって
ときどき走りたそうにタイヤをならしてた
しーちゃんのとなりにいればいつでも傷つくこと ....
さくらの花びらのみしりとひらくときの
衣擦れみたいなわずかな音をたべる春待ちたちはやさしい
わきあがるように生まれては こすれるみたいに消えていく
意味のないやさしさはごちそうだ
生温 ....
このあおい夜を切り取って縫い付けた右腿は
ぐずぐずと黒く膿んでしまったから
風通しの良い洋服を探している
ふやけて黄ばんだ気に入りの本にはさんだ言葉をまだおぼえているか
いいえわすれて ....
どうしてまた
と 問う度に空瓶はふえ
瓶の立つ数とおなじだけ
言葉を見失う
不運と幸運を釣り合うように計ってのせた菓子盆
運ぶうちに混ざり合ったこれをいったい何と言う