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冬の凍空
水晶の塊となり
浮かんでいる
難破した砕氷船が沈んで
空のクレヴァスに紡がれる
大きな心の屈曲を抱え
帰港すべき場所を探す

空のクレヴァス突き抜け
漆黒の宇宙を見出すとき ....
四輪(jeep)駆け巡る
冬の笑顔はいいね
あの人の胸のなかにある
鳶色をした大きな瞳
木枯らしを背にするときのカーブ
−ルーズオーバー
茶色のボタンが毛糸にひっかかる
無邪気な雲 ....
(入れたい入れたい入れたい入れたい入れたい入れたい)
せりあがる濁流を押さえる、
マンホールのように、
私は夜の車内で唾を飲み込む。
森をくぐり抜けた夜空には、
どこまでもついてくる
三日 ....
数学の成績だけが上がっていく

「ねぇこの問題教えてよ」と

君にお願いされてから
風を嫌う小鳥になりたい
水を怖がる亀になりたい
許すことができる人間になりたい
静寂を好む人間になりたい

雑音の多い、この社会
見なくていいものまで見えてしまう
気付いて欲しくて見せて ....
帰るとは
ふりだしに戻ることであった
帰るとは
ひとりぼっちに戻ることであった
帰るとは
ひとりですること以外の選択肢を失うことであった
帰るとは
下校のチャイムの様に
何かの終わりを ....
この空が青さを取り戻す時

あの空も晴れてくれるだろうか

優しい光は
隅々まで届いてくれるだろうか


あの子のもとへ
届けてくれるだろうか
駅のホームには
人々の疲労と希望が散らばっている

コンクリートの怒りによって
掃き清められた余りにも尊い人生たち

線路は狂おしく悲しみながら
大きないかづちを流している
 ....
寒さが増せば増すほど秋に植え替えた植物たちの悲鳴が気にかかるものだ
邪魔な雑音に慣れた耳が他人から発せられる温もりに感じられるように
そして居住する家賃も安くなれば怪しい人物が住み着いてくるの ....
             160114

拝啓前略
最近、
読んだかどうか覚えていない書籍が増えた
表題のも定かで無いが
雪の降る頂上付近にヒョウの死骸があったとかの
描写があったような ....
冷えた夜に冴えた月を眺めながら、
あなたを思い浮かべる。
私は窓の鏡のなかで、
薄皮を剥いでいく。

あなたの鼓動が私の身体に触れる。
私は刹那に哀しくなる。
歓喜に触れて哀しくなる。
 ....
月がわらっ照ら

笑ってら

赤ちゃんはどうやったら出来るのだろう

裸の木がくねっ照ら

苦ねってら

約束はいつも大義名分で破棄されるのだ


どこまでも静かに

愛 ....


墨の黒は
普通のインクとは違う
きっと
普通のインクより深みがある
でも
アクリル絵具の黒よりも鮮やかで
水彩絵具の黒よりも頼り甲斐がある

墨に触れたのは何時だろう
中学 ....
痛み 超え
恐怖 超え
快楽 超え
嫌悪 超え
絶望 超え
希望 超え

死を前にして、死を前にして

外界 銀に照り映え在る
純粋にオドロキ確認し
内界 漆黒の光点広がり在る
 ....
夢の中でのひとときを
まるで本当のように感じる
海を力なしで泳いで
えらで呼吸しているみたいに

大人に反抗している
とにかく不真面目だと感じて
理不尽だと嘆いてみせる
泣き叫ぶことし ....
溜め池の波紋が大きく揺れた
葦原に身を隠してはこちらの様子を伺っていた餓鬼どもが小石を投げ入れたのかと思った
そうか、いつまでも泣いてばかりは居られないのだ
ここから先はこの御玉ヶ淵に架 ....
熟柿の臭いにおぼれる眼底
海の深み遙かに沈んだ蓚酸の
記憶がこみあげ喉を焼く

都会の底をさまよう脳が
見上げた夜空の淵に
人魚の嬌声が泡立ち  

怒りで放った銛は
領巾にから ....
 断章として出会う
わたしたちは
繋ぎ合わされた
死に往く者の断片として
齟齬と違和で腫れ上がりながら
ひとすじの清流であろうとした
 二人の詩人


                ....
君の指先の温度を
以前触れて測ったのに忘れてしまった

まだ火のついた吸い殻 逆再生される夢

千円札は五百円玉二枚にはならないし
五百円玉二枚は千円札にはなれない
 ....
日常風景の只中に、立つ
そこを掘るべし。
――{ルビ足下=あしもと}に隠れた、天への通路。

  *

(君の投げたボールは
 君に返ってくるだろう)

  *

昔々、葉蔭の下 ....
消えてしまったよ
いくつも重なっていくうちに
それらは透明になって
ゆらいでいるのさ

何処かへ
風はすがた無くすすむ
僕の体温をひやしながら
斜めにばかり向かっていく

もうなん ....
晴れた空が広がっているのは
誰かが空に感謝を投げたから
海がいつまでも青いのは
誰かが海に感謝を流したから
「ありがとう」は持続する響き
どこまで遠くへ行っても決して衰えない
 ....
この腕にしがみついた、
性という薄皮の、
一枚一枚をゆっくりと剥いでいく。
そこには薄く赤みを帯びた痛みが咲いている。

煙で見えなくなった、
風呂場の鏡に映る、
あらわになった腕や脚、 ....
走破の矢、
琥珀の的 時の揺動
まぁるく明るむ天、天、天。

異郷から落ち来て 異郷へ昇り戻る
変化し続け〈変化〉を知らしめ
漆黒の星とカガヤキ肉燃え尽き
新たな〈魂の愛〉を育む人々を ....
裏山の防空壕の天井からは木の根がたくさん突き出ていた
入り口の高さは七十センチくらいで、湿っぽくて暗かった
近所のお爺さんから、近づいてはいけないと言われた
だけど、
小さかった僕らは友達三人 ....
風は呼ぶものではない。
風はじっと待つものだ。

あの日、
あなたは泣きながら、
私にすがりながらそう言っていた。
娘である私の拳は震えていた。
握りしめた拳は赤く腫れ上がり
皮が剥け ....
風が吹いてる風が吹いている

根を失えば失う程
その獰猛な冷たさに気付く
自らが自らに呼び込んだ試練だ同伴者だ

風は吹いてる風は吹いている

全ての在るモノに
それぞれの風が吹き付 ....
法事の後に、故人を偲び
「献杯」してから口に注いだ{ルビ麦酒=ビール}により
みるみる僕の顔は真っ赤になり
吐き気をもよおし
頭痛の額に少々冷えた、手を添える。

そうして僕は平手で
白 ....
遥かな過去にも未来にも、二度と訪れない
今日という日に巡り逢う、隣の人の心象に
{ルビ閃=ひらめ}く火花を――灼きつける。

宇宙に灯るマッチの如き、我が生よ。 
雪が降る中 小鳥が飛んで行く
何があっても 餌をさがして
飛び続けなければ 生きていけない

天気予報で 大雪警報がだされた
降る雪 塞ぐ雪 閉じる雪

誰に知られる事なく 骨になろうと ....
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タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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手を添える- 服部 剛自由詩616-1-11
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