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      祈りと願いに摩耗した
己の偶像が神秘の面持ちを失くす頃
始めて冬の野へ迷い出た子猫は瞳を糸屑にして
柔らかくたわみながら落下する鳥を追った
薄く濁った空をゆっくりと
    螺旋 ....
風が歌わない日にわたしたちは何を聴こうか
再生し続けることで乾く色彩の体温
その沈黙まで指先で縋るように諦めながら
待っているどちらでもないひとつの結末を


インプットしてきたものが違う ....
あるテロリストが
 《ある勇敢な兵士が》

自爆テロで
 《ジハードで》

死んだ
 《殉教した》

無辜の人々を道ずれにし
 《異教徒や教えを捨てた者たちを倒し》

狂信者は ....
あなたを見るために
光を媒体にした
あなたを聴くために
空気を媒体にした


媒体なしにあなたを知りたくて
肌と肌を重ねてみた
そうして慰めを得ながら
無限の孤独を思い知る


 ....
アトリエに 違和もなく 海の 笑む {ルビ音=おと}
感傷の 気まぐれに 黒い蝶 化粧台で 殺し
逆らえない 四十万に 鈴の {ルビ急=せ}かし 空へ  
ただ 近く 月を 手に 取って
泣き ....
日差しは入り江を満たす穏やかな波のよう
ちいさな冬も丸くなった午後の和毛のぬくもりに
鉢植えの場所を移しながら
――古い音楽が悪ふざけ
週日開きっぱなしのトランクをむやみに閉め隅へ蹴る
―― ....
舌先で像を結ばない
時代の陰りの不安漠然とした
――漏出か
灰に灰よりも濃く灰を溶き混ぜた
ような雲
 も 時折 
    裂 け
息苦しい断絶の青さ遠くかもめのように過る
無垢のまま ....
いつだっていまだって青い
地球は朝で昼で夜だ
なのに地表の隅っこで(あるいは真中で)
いまブルーライトに照らされぽつねんと
もの思いに耽っているわたしには律儀にも
朝昼夜は朝昼夜と巡り訪れる ....
腰のまがった老人はめったに見なくなった
まがった腰で
ヨッコラショと 
風呂敷をしょった爺ちゃん婆ちゃんは
わたしが子供のころの爺ちゃん婆ちゃんだ
農村や漁村では今だって
腰のまがった老人 ....
   {引用=わたしの正気は陰鬱だが
わたしの狂気は陽気な歌
木魚バンドネオン炭酸水
      (証城寺住職 囃子ダダイ)}


証城寺の性悪少女

ひどくあくどいのだ
そのだんま ....
光の傾斜のよわいめまい

いななきも止んだ朝の膨らみ
秋は秋と重なって遠近を失くしながら
凧のように {ルビ空=くう}の{ルビ空=くう} 淡く燃え


無限の、 矛盾の、 
存在の、 ....
赤い目をしていま
なにを読み
どこを跳ねるのか


あなたは謀った
{ルビ和邇=ワニ}たちの背を戯れ跳ねながら
目指すところへ近づいた時(それは幻想だった)
傲りと嘲りが
鈴のように ....
――雲が早い
と思えば雨か
秋らしい振舞に
朝からおまえと飲みたくなる
なすがまま
なされるがまま踊る木々
つめたい雫
鼻先に最初のひとつを感じた蛇が
暗い岩間にすべり込み
ただじっ ....
風は奏で 
光は描く
ハリエンジュのさざめきに
まなざしは戸惑い
優雅に失速する
水面に解ける止まり木
鳥は魚を続けた
裏腹に
なめらかに
時間には抜け道がある
探しても見つからな ....
カーテンの向こう暑くなると告げて
にわかに泣きだすそら

すぐに澄み
そこなしの青の静けさへ
置き忘れられた幾筋かの羽毛は
朝へと生まれ落ちた夢たちの骸
季節の手妻は継目も見せず
ゆ ....
引き寄せて歌の精よ耳元に
オンとイのほつれ目
楼蘭の砂から掘り起こされた女の髪のよう
忘れられたイトが絡まった
黴臭い沈黙から ふと
夜は陽炎のようにゆらめき立って
歪み捻じれたこの道を筆 ....
山のむこうゆっくりと橙は灰
日暮れて暗く やさぐれて
苦楽の果てに捨てられた
途方に暮れてホウホウ鳴いて
ケルトの老婆アイヌの老婆
とろとろ炙る枯れた掌に
あまいこどものあたまのいたみ
 ....
花よ
いま震えている花よ
見えない風の手が怯えさせるか
それともやさしい愛撫に


花よ
人も同じ
誰かの心の中 将来のこと
見えないものに心を乱されて


わたしたちは少し似 ....
嘆息の理由なら他にある
豊満な月に耐えきれず包み紙を脱がせただろう
子供みたいにあちこち汚して
今日がその日ならと狼みたいに祈ったね
誰かのせいだと言うのなら
それはわたしのせい(玄関前の犬 ....
遠い夏
街で見かけた少女
名前も
どこに住んでいるかも
知らないで
ただ精一杯
目で追うことしかできずに
それっきり
夢で逢えたらと願いながら
叶う事もなく


今日(四十年後 ....
風が聞き耳を立てている
囀りは力なく水滴に跳ねて
その術を忘れたかのよう
石は本来の姿を取り戻した
木の根元をのそのそシデムシが
葬式帰りの太った男のように歩く
異変 ではなく
変わらな ....
  温雨


雨に洗われた
針葉樹の隙間から顔を出し
ヒヨドリは不思議そうに首を傾げる
蟻の休日
うつろな目をした夏






        一緒くた


    ....
古いガラスのように蒼ざめて鳴り響く

 ――あれは なに?


       掌の海から跳ねる両目を失くした魚
           それは
テノヒラ 温かすぎる子供のテノヒラで
   ....
          草葉に風の足音
夏の光の深い底で焼かれる虫たち
夜に置き忘れられた
艶やかな目に乾いた夢が映り込む
生と死の歯車が柔らかく噛み合って
素早く回転する
  濃厚で豊満な匂 ....
「愛情不足だったから 
棘だらけになった」


――サボテンが?


自分の間合いで生きればいいさ
手前勝手になれなれしくするやつは
痛い目に合わせてやればいい
傷ついたなんて言う ....
足音は足跡から乖離する
帯びた意味を秘めたまま
けむりのように漠然と白い
地球を見上げる朝に
ちぎられた円環のビーズ
偶然が描いたあなたの星座を
子猫がシャッフルする
無邪気さと予感の熱 ....
わたしの愛しいお月さま
 借り物の光で身を装いながら
 あなたは女王のように天を渡って往く

わたしの愛しいお月さま
 ちょっと見わからないが肌は荒れ
 あっちもこっちも傷だらけ

わ ....
かなしいがいっぱいになって
泣きだした
よくとおる声で
しゃくりあげ
虐たいではなく
とおり魔でもない
がんぜない
わがまま
しわのない顔をせいいっぱいゆがめ
大つぶの涙おしげもなく ....
フロントガラスの向こう
傘をさした女が滲んでいた
雨にうなだれる花のように
あれは昨日のことだろうか


瞬間の感覚の飽和を無限と呼ぶしかなかった
悲しい詩人の形見 憂鬱
古い壜のよう ....
行倒れの男のように
靴が片方 ぽっかり見上げている
我慢しきれず漏らしてしまう
重苦しい空はぽつりぽつり
悲哀をくすぐりながら
見定めていたはずの世界を沈め
アトランティス   
瓶の蓋 ....
レモンさんのただのみきやさんおすすめリスト(118)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
冬という病- ただのみ ...自由詩21*16-12-31
陽気な二人- ただのみ ...自由詩12*16-12-21
瞬く間に- ただのみ ...自由詩13*16-12-14
黒点- ただのみ ...自由詩17*16-12-10
46×3- ただのみ ...自由詩13*16-12-3
鈍色の匙- ただのみ ...自由詩16*16-11-23
ある朝こぼれ- ただのみ ...自由詩14*16-11-16
地球的青さ- ただのみ ...自由詩18*16-10-26
爺婆に捧ぐ- ただのみ ...自由詩15*16-10-12
証城寺の性悪少女- ただのみ ...自由詩9*16-10-8
詩/代償としての- ただのみ ...自由詩14*16-10-5
うさぎのダンス- ただのみ ...自由詩11*16-9-24
敬老の日に何ら敬うこともなく- ただのみ ...自由詩8+*16-9-19
恋のようなもの- ただのみ ...自由詩10*16-9-14
くすねた財宝- ただのみ ...自由詩9*16-9-7
呪術師の末裔- ただのみ ...自由詩9*16-9-4
夜火- ただのみ ...自由詩8*16-8-27
野の花- ただのみ ...自由詩8*16-8-20
氷の散弾にブルーハワイ- ただのみ ...自由詩11*16-8-13
少年少女- ただのみ ...自由詩9*16-8-10
なにかが見ている- ただのみ ...自由詩8*16-8-6
夏と雨の短詩・五編- ただのみ ...自由詩11*16-7-27
絶望の希望はただ乾いたピストルの音- ただのみ ...自由詩8*16-7-23
火葬詩転生- ただのみ ...自由詩14*16-7-20
自己受容と自己正当化は違うのさ- ただのみ ...自由詩9+*16-6-29
服毒説- ただのみ ...自由詩10*16-6-25
微笑- ただのみ ...自由詩13*16-6-22
がんぜないもの- ただのみ ...自由詩11*16-6-15
音楽が聞こえる- ただのみ ...自由詩9*16-6-11
ホロウ- ただのみ ...自由詩12*16-6-8

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