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吹き上げられた蜻蛉の、
羽に浮かぶ無数の生命線をなぞる
うつくしい、夜の前の空は脈々と
埃のように舞わせ 焦がしてゆく
背中に彫った 哀しみの中に
心臓をひとつ、 ....
白いカーテンの揺れる部屋は
少し黴臭く、湿っぽい
レンタルベットの軋む音の中に
心臓だけになった母親は 小さく呼吸を繰り返していた
はじめて母親の大きな身体が剥がれたのは 小五の夏休みだっ ....
片田舎の単線はこころの隙間を
ゆっくり増やしてゆく時間がある
まるで泥水のなかを泳ぐように
深くヘッドフォンを刺す
信号のない、点滅した街の
壊れたコンクリートの道を
みんなに ....