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夏の空へと影送り
ぼくを見ていてね。
窮屈な世の中でもがきあがき生きる
孤独をさびしさと名付けたら
涙を流せる呪文になる
命を数える通学路
アリもミミズもカエルもタヌキも
ぼくと変わらず ....
ある日の繊細さが
風鈴の音の揺らぎで夏を作り出したように
きっかけという名を
古ぼけた電話帳で探したときに
故郷につながる道の霧が晴れていった
生まれてきたという引き金は
生きてきたと ....
教室で黒板を見つめていた
隣の席のワタナベくんは遅刻をしてきて
コンビニ袋からおもむろに
焼きそばパンを取り出して食べはじめた
イスを傾けて教室の後ろの壁につけてもたれていた
倫理の担当は臨 ....
その膜を破ると
きらきらとこぼれ落ちる
母の痛みがうつくしかった。
ぎゅっと身体を縮める
握りしめられないものを握りしめ
抱きしめられないものを抱きしめる
ささやかな抵抗を繰り返し ....
君のうなじが
白くうつくしいので
ことばを失くし
つつじ柄の着物に
雨が落ちてくる
そっと和傘をひらく
しぐさに湿り気が帯びる
四つ辻まで
ご一緒しましょう ....
マリ男は夜に孤独だった
まだ趣味はある
写真が好きで
朝焼けと夕焼けにシャッターを
押すことを繰り返していた
一人旅をよくした
数少ない友人たちは家庭を持ち
それぞれに
関 ....
朝起きる。
新聞配達のバイクがハーモニィを奏でて
ポストに投げ込まれる
合図はわたしをきちんとコーヒーへと導く。
隣でしっかり布団に収まる夫に
声をかけるとううーんとうめいて夢に戻ってしまっ ....