片思いには質量がある。
だから 好き という気持ちは
不変/普遍 なんです
と酔っ払いの男に云われました。
好きという気持ちを冷凍保存して
必要なときにとりだしてレンジで
チンするので ....
ガラスの表面を
汗とも涙ともつかない水が伝う
過去を鋤きかえし
クチナシを活ける
日々寄せては返す悔恨は
わたしが築いた防波堤を
かるがる越えてみせる
((( それさえも憎めない ....
忘れもしない
あの夜が
まったく白かったこと
遺書には
サヨウナラ
とだけ 彫られていて
見知らぬ隣人にも
陽がつつ抜けであったので
街は灰に
足もとを焦がし
渇いて
改札を ....
すべて諦めかけたときに
コンビニに行って弁当買うてあたためた
何も変わらないいつもの弁当
俺の一所懸命にあたためつづけたもの
それと弁当
くれるレシートと夕陽
そして弁当
....
あなたの静かな骨の上を一本の真新しい国道が通る
あなたの大きな悲惨の中を一つの真新しい意味が走る
眠るあなたの骨が今こうして車輪の下で砕かれていく
ぼくはその音を聞いているのだ
きみに ....
手に負えない重さ
月明かりに映えるシーツに残るわずかな質量
コーンフレークと牛乳の朝
時間が白い霧となって降っているね
透き通ったグラスは
飛び散ろうとするあなたをゆったりと受け止め
....
いつから夢見ていたのだろう。それもほとんどわからぬまま、夫の藤野の会話をまるで無音のコマ送りにしていた。シンクにぽたぽたと透明とも鉛色ともつかぬ水のしたたりを聴いていた。気がつけば窓の外ではすでに朝日 ....
ついに鳴らされた音のために
ついに発せられなかった言葉を思うとき
街は 列車は 夕陽は 失われる
冷たい深海魚の 冷たい尾鰭
夏の日に 生き物ははかない光だ
溶けずに残っている便箋
病 ....
汗に濡れたシャツをはだぬぎ
わたしは暗闇のなかを
帰るふりをして 逃げたのだ
七月の 台風の 雨のなかを
精一杯生きようとして 逃げたのだ
咎められることは何もない
そのほかのことは知らな ....
突き抜けるような
青い空に
純白の雲
雲の向こう側に
なにが蠢いているのか
誰も知らない
青い空
白い雲
果てしない孤独
ああ、今宵は
下弦の月の舟に乗り
黒い夜空に漕ぎ出そう
眼下に見えるは
{ルビ玩具=おもちゃ}のよう
昼の{ルビ日中=ひなか}の
よしなしごとは
ちっぽけな屋根の下に
まるめて
仕舞 ....
うずうずする
{ルビ瘡蓋=かさぶた}を引っ掻いたら
僕の中から
僕の中身が滲み出た
あぶないあぶない
こんなどす黒いものは
絆創膏で塞ぐに限る
乾いてくれば痒くなり
ついなんどでも剥が ....
わたしの知らない何処かで
わたしのことが決められていた。
異議申し立てをしようにも
誰に
あるいはどんな組織に
異議を申し立てればよいのか
ついぞ分からなかった。
第一
わたし ....
心の寒さを
まるめて吐いた
白い吐息
屋根の上
冬空浮かぶ
溜め息の群れ
街をゆき交う
俯く人影
北風吹き荒れ
立ち止まる
やがて粉雪舞い落ちる
手のひらに降る
粉雪が降る
....
にきびを潰すように
かさぶたを剥がすように
傷んだ記憶を
わざわざ夢に見る
治りが早くなる、だとか
嘘ばかり教えられた
何度も傷付けては
垂れる液体を拭う
意味の無い反復行動
....
職もなく家もなく
暖も取れず 寄り添うひともない
「どこかへ行け」と高札は告げる 「誰からも見捨てられたのだから」と
飢えても盗まない 寒くても火を放たない彼らを
我らのしもべは我らの小国から ....
ぐるぐる回る時計の針
ほらまたタイミングを逃してる
ブルーライトで目を焼いて
気付けば今日も陽が昇る
止まない頭痛を誰かの所為に
殴りたい壁は遠すぎて
微睡む思考と俯瞰する誰か
気付 ....
余命いくばくもないかのじょが
嫁にいくはずもない
だからかのじょを月につれてって
星のあいだで遊ばせて
どこまでもひろい宇宙で夢中におどらせて
この世の果てまでつれてって
忍苦の悲 ....
帰りたい
家にいるのに帰りたい
どこかに早く帰りたいと
いつかからか、思ってた
いつの日からか、思ってた
長く長くかかった疑問
ずっとくすぶってた感情
その答えに
僕は
さっき
....
陽の当たらない玄関の
下駄箱の上に置かれたガラスの水槽
その中に金魚が一匹
夏の宵
太鼓の音や提灯に囲まれた広場の
入り口で掬い取られて
運ばれてきた
たくさんの兄弟と泳 ....
過去というのは時々取り出して
いろんな気持ちで見つめるもので
それはけっして変わらない物でもなく
案外に不確かなあやふやな物
省みて幸せな様に
省みて強くな ....
優秀だ
夜は
寒く
冷たい
スタンドは
明るく
稀に
暖かい
それは
文明の力
そう、
燃料に心を使い燃やす灯
夜を照らす
照らすからこそ、照らすからこそだ。
....
さようなら 罫線の檻のなかで
疵になって庇う
今日の予報は雪だから
紙の片隅に 小さな文字を連ねて
誰かにとってかわるまで
あなたの日々の目印に
わたしは金の栞紐
空全体が
うんざりするくらい無垢な雲で覆われた日には
閉じ込められた花の蕾は開かない
どんな真実も
どんな正義も
振りかざされる度
刃物のようにキレイに煌めくけど
その切っ先で誰 ....
怪物は街に来るから怪物だ
無痛で流れる血
片頬にためた煩悩
等間隔のドグマ、呆れた僧侶の鈴なり
数を数えるだけのアルバイト中に慟哭する少女
つまらない口論を売りに走る馬
つ ....
私の指先がたどった夢を
あなたは覚えていますか
それは柔らかな素肌の見る夢です
華やかな衣装の奥にある真実さえも
夢の一部だと想うのです
それで良いのかも知れません
いつも永遠に戻 ....
君が私を突き飛ばしたあの日から
私は私を捨てて
君を殺して 食べました
鮮血 美味い 全て 美味い
骨までしゃぶったよ
でもひたすら ごめんなさい
冷たく暗いアスファルト ....
深夜
少しいろのついた水をのんでいた
グラスは透明だった
仄暗い
テレビの灯り
こくん こくん こくん
一息でのんでしまいたかったけど
なかなかのみおわらない
....
「皆殺し」
眠れないので改造しておりました
極彩色のペンチで
灰色をたくさんつくったのです
死んでいるみたいな街が
ついに
本当に死ぬ
夜の反対側で
針金みたいな警察官が
ド ....
横殴りのことば
ひ び 割れた
音 階
吹きっさらしのあなたの庭で
浮浪者のよう
わたしは 火を焚いて 鍋をかけ
煮ても焼いても喰えやしない
虹色の肝 ....
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