あなたは笑っているのか
どこにいてもわかるお日様の声

私たちの心臓は揺れていて
駆けつけたい気持ちではちきれそう
あなたの詩は泣いていて
文字をなぞれば指が濡れ
ゆき場の無い塩水が光っ ....
目立たぬようにまとわりついてきたあなたたち
こんばんは
眠れないので話そうか

寝返りを打つたびに首の汗を拭う
空腹
泳ぎくたびれた金魚
月の無い窓際
控えめな秋の羽
消えゆく蝉 ....
多摩の春は立ち
梅の便り
雪の予報
氷のうさぎをせがむこども
声は眠らず
温もる床を抜け出る
もう未明なのに
待ちわびている

あなたが呼吸を恐れ
感じすぎるのだと胸を震わせる
 ....
増水の ために

すっかり 荒れはてて しまった

堤の かよって ゆく なかを

猫じゃらしを 噛み ながら

草ひばりの 音が ほそぼそと つづく

すすき野原を  ....
友達と呼ぶ時
少し気後れしてしまうが
知り合いと呼んでしまうのは寂しい
私に黄金町を教えてくれたのは五つ年上のKさんだった
女子高生が一人で歩くのは危ないよ
彼はそう笑った

駅の改札を ....
いま
{ルビ仄=ほの}明かりの部屋がとても寒くて
ぼくは
コカ・コーラの気が抜けてゆく潮騒の中で
花が開いていくのをじっと見ている
足が冷たく
息の僅かな白さの中に
ちいさな子供だった頃 ....
あなたと二人で話す時
そこに難しい言葉はいらない
まずその前に私は難しい言葉を知らない
大学まで出してくれた
親には申し訳ないけれど
私は未だに世間知らずで
誰かが話すような難しい話題に
 ....
誰も知らないところへ行って
私は黙って砂を掘る

気に入らないの と言えなかったから
砂にうずめてどこかに流す

浜辺はそんなものばかりで
私が知っているだけだけれど
あの子が立ってい ....
秋はいいよね
ストーブは焚けない季節だから
おふとんの中
冬のおふとんはあったかすぎるから
パジャマのボタンを外して
背中に手を伸ばし合う
私の胸の脂肪は つぶれて横にはみ出る
私は君の ....
ただひたすらに俺、煙草
吸っては吐いて
吸っては吐いて
ただひたすらに煙草吸う

ただひたすらに俺、焼酎
飲んでは吐いて
飲んでは吐いて
ただひたすらに焼酎しばく

目の前には煙草 ....
愛しい動物!

わたしの主人よ!
葉擦れの赤錆は
はじめは
軽い混入だった


冷たい赤い陰影を増してゆくのは
葉擦れの色として微かに現れた感情の
冷たいことを、赤いことを
葉が何度も抱擁するからだ


それでも ....
死んだように
眠る私を置いて
私は遠くへ
うつろうままに

残された私のまぶたに映るのは
羊水の中から確かに
こちらを見ている何か

それは意思をもって
眠る私のまぶたに
朱 ....
日曜日の早朝
誰も見向きしない時間
ひとけないスキアボーニ海岸通りで
僕は
見つかった
サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会に

「見かけない顔だな。お前は誰だ?」
と言われたんだろ ....
手に触れるすべての
温度と湿度が
いつもより優しく感じられる
マリオをやれば
たくさんコインを取れる気がする
喪服に袖を通す
今日はもう
泣かずに済むのだと思う

+

 ....
かみさまようちえんはお空の上にあります
今日は楽しい運動会
お母さんもお父さんもいませんが
こどもたちはみんな元気です
かみさまようちえんにはお花もおやつもおもちゃも
たくさんたくさんありま ....
せんせい、私バツイチです
いまも減点ばかりでごめんなさい

ひとり残されて
校庭で逆立ちの練習をしている子
あれは、キミだろうか

きれいなアナウンスの声に嫉妬してしまう私
富士山 ....
殺してしまった

今日、何の罪もない
言葉を

奥歯で
噛み殺してしまった

悔しかったのだろうか
それとも
悲しかったのだろうか

そんなことは
いずれ忘れてしまうのだろう ....
それは
優しいあいさつだから
きっと、優しい手紙

まっしろな封筒には
ほんわりと香りのこして
優しい君からの言葉
ほかのどこでもない宛先
おげんきですか、
なんて素敵な手紙

 ....
この星この時に生まれた
このからだが私
煙と骨になる日まで
私を運んでね

今日も歩けました
蝶を見ました
自転車に乗れました
ヒヤッとしました
お食事できました
しあわせです ....
突然の雨に驚き
空気が動き
生まれた風は
生まれたときから不機嫌でした


埃っぽい路が
陽や曇を浴び
濡れた光を浮かべ
空を見つめているのでした


蜘蛛でも ....
お父さんまたお話して
子供のころの犬の話

しんだ父におねだりして
私は旅に出てゆく
お父さんの記憶の中へ

ジャノヒゲ揺れて
オオバコ踏んで
大きい夕陽とお父さんと犬
風は紫オレ ....
秋の夕暮れを過ぎて
白熱灯のオレンジたちが 時間にいかりをおろした
らせんにおちてゆく綿毛の夜
雑踏の生きたたましいを ちょっとぬすんで
二の腕や首すじを やわらかくかすめる
ワトソン紙にに ....
中学生のころ
わたしはメガネっ子でした
似合うメガネっ子ならよかったけれど
かなしいことに似合わないメガネっ子
かなしいメガネっ子

コンタクトレンズが
こわくてでもほんとに視力がわるく ....
モノを置かないでください
と張り紙のあるところに
モノを置いた

そんな些細なことがきっかけで
そんな些細なことの積み重ねだったのだろう

「いつもの」
そう修飾された朝は
あっ ....
鳥がついばむ彼方の星を
ここはどこかとうめく空

雨がしとしと名を呼びます
風にちらちら花燃やす
迷いこんだは露の中
返事をするのは うそぶく化身

いいねぇ
ねえ
舞って散るのは ....
飛散したガラスの破片が
危ないものだなんて知らなかった
キラキラとひかって
みんながとても喜ぶだろうと
そう思ってた
何もない処に秋がやってくるとき
ひっそりとして
わたしは言葉の行方を知らない
わたしはわたしを有りの侭にしている

夕くれに空はふりだし
空はそこらじゅうで実り始める
声を掬ったりすれば ....
おしまいのひ
がやってきた
おきにいりのふくをきて
しっかりごはんをたべて
にゅうねんにはをみがいて
あたらしいくつをはいて
いってきます
そとへでた
きもちのいいかぜが
ふくた ....
はりついたちりぢれの 
鱗のようなゆううつを以ち 
こうして居る君は
見るもの全ての目に留まり 
詩のように据える
それを誰もが秋だと覚え 
ひとつの忘却にあてがい 
それぞれの食卓に眺 ....
王さんのおすすめリスト(89)
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