青空を集めている
あじさいのつぼみ
青いガラス瓶
明るい陽に揺れる
痩せ細った手で
筆の先から
搾り出したような 一枚の絵
淡い青のあじさい
木立に濾された光は
揺れる葉 ....
ひらひらした服で
私の少し上を走り抜けるあなたは
真上からの光で
まるで影法師
暗闇のあちこちに手を振ると
また走り出していく
愛憎を背守りのようにくっつけて
....
よそへいくための服は
襟のレエスがまぶしくて
びろうどのスカートが重くて
ぴったりしずぎてきゅうくつで
母さんが
帰宅するやいなや
着替えさせてくれるとき
ほっとして
わたしは
すこ ....
午後十一時をまわったころ
庭にはいってきた男は 岩に座って黙っていた
裸に剥かれた冬の枯れ樹の 枝のひとつひとつが
別々の動きをしていた それで私は
かれらは男の思 ....
白木蓮の花びらが
届かなかった手紙のように
散り落ちている
強い風の吹く
五月の日暮れ
咲いたばかりの桜が
ちりぢりに
遠くへ吹き飛ばされていく
行かないで・・
白木 ....
洗いすぎて
ごわりとした
ネルの小さなパジャマ
ふたつめのボタンだけ
なぜか赤い糸で
不器用にくくられている
夜泣きのたびに
私にしがみついた
熱を帯びた袖
黄色いライオンの模様
....
鳥が庭の果実をついばみに来た
鳥によって食べ方のリズムが違う
あんなに早く飛べるなら
雨粒も追いかけていける
まあるく逆さに空を映しながら落ちていく
綺麗なものを
風がさらった思い ....
なにか忘れそうなきがしている
なにか
雪が降っている
空が濃く青い
皮膚が張っている
忘れそうな
あなたは昨日から
水色のズボン
なんだっけ
夜は冬の気持
水玉の靴下
泣きご ....
私は卵を毎日産む
優秀な鶏
多くの同胞と同じように
一羽ずつ
ケージの中で大切に守られ
整った環境で
健康に育てられ
栄養が 無駄な筋肉や
要らない羽にいかないで
卵のみに集中するよ ....
お湯を沸かす
ドリッパーにフィルターをいれ
カップに乗せる
慣れた手つきで、変わらぬ手順で
コーヒー豆をフィルターに流し入れ
慣らし
静かにお湯 ....
地上に引き出された私の網膜に
無数の矢が
容赦なく突き刺さる
モグラになって初めて知った
過剰な光は
漆黒の闇よりもさらに凶暴で
瞳を凝らす事を禁じ
見る事を私に許さない
視神 ....
糸のように細い茎
葉は小さなハート型
切って
水に挿しておくと
傷つきやすい神経のような
白い根がはえ
土に植えると
再生する
そうやって
いくらでも増えるクローン植物
....
地下へと続く階段の脇には
だらり、とぶら下がった黒いコンセント
に結ばれた、赤い糸
地下のさびれたライブハウスでは
音程の狂った歌手が
あの頃のみっともない僕みたいな
コッケイな恋の溢 ....
お水を待ってるの
大きなトラックで
お水をくれるから
ずっと待ってるんだよ
水瓶はこわれちゃったし
鍋はぺちゃんこだから
こんなタライしかないの
ちゃんと持って帰れるか不安
....
冬の午後を
公園に置き忘れたので
急いで取りに戻った
言葉を頬張りながら
塾へ急ぐ子どもたちと
光速ですれ違いながら
公園に着くと
理科準備室から
そっと盗んでおいた
雲母の標本 ....
中学生の頃
覚えたての英語で
シーオーエフエフイーイーって
呟いた
それで コーヒー
和製英語も 造語も
区別が付かぬ 街の看板
何となく 華麗に映る
イルミネーション眺めなが ....
窓から覗く月は
今日も黄色い三日月
先端が釣り針のように鋭く尖り
獲物を待っているかのよう
窓に腰掛けた私に
まだ冷たい夜風は衣服をすり抜け
かろうじて温もりを残した心に
簡単に侵入 ....
ネクタイは道具だった。
子供たちの憧れだった
二段ベットでゆらゆら揺れて
一番最後は不安な明日を見つめ
次の瞬間
おとといへと去って行った。
明日 綺 ....
春の庭は公然の果実となった
うららかが市民権を得て手を振っている
春嵐の気まぐれな登場が
時々番狂わせだけれど
戸惑うことなくスプリングコートを
選んだこの日にも季節は私に謳歌を許した
....
火のついた白い煙草を
きみが 一の指と二の指から
二の指と三の指に移すのを見ていた
なんでまた 髪なんて伸ばしてるんだ
くちびるから 夢まぼ ....
普通にながれる
おとなだから皆
落胆を隠してる
蛍光灯
板書の音
先生も
生徒らも
普通にながれる
おとなだから皆
落胆を隠してる
死ぬわけでなし
死さえ必然であるし
春の陽 ....
地上と天をつなぐ幻
虹を見逃さない
レインボー・バウムクーヘン
虹を見逃さない
誰かの希望になれるかも
金髪のモスキート
地上と天をつなぐ幻
悲しい苛立ち
恨みや損な役回り
生まれ ....
なんにもない大地に寝転んで
耳をつけて目を閉じてみたい
風のおとひとつしない大地に
耳をつけて目を閉じてみたい
水の流れるのが聞こえる
流れるおとを嗅いでみる
肩のちからが抜けてゆく
....