一、 銀色の背中
飯も喰わずに、カピが月ばかり見ているので
座敷に上げて訳を聞くと
長い沈黙のあと
神妙な顔で
片想いなのだという
いったいどこの娘かと問えば
まだ逢ったこと ....
ネットはたまに嫌なこともあるけど、
自分の知らないいいことを顕在化してくれる。
ネットは匿名で悪口を言えたりするけど、
普段言いにくいことをいつもより気軽に言えたりする。
いい ....
あなたの上腕動脈の拍動を確認したかったので、今度脈診させて下さい。
ある日いきなりあらわれた
「さぁわたしの手を取りなさい」
それは白く細い手で
燃えるようにあかい頬
その手はとても ....
あいたいひと
大好きだ あいたいよ
あいたいよ 会いたいよ 逢いたいよ
こんなにも大好きで だいすきで
いまだって あなたがアタマから 離れない
それなのに あえないの
....
もういいと
何時からだろう
硬い殻に閉じこもった
わずかの養分と
わずかの水分とを持って
硬く硬く閉ざした
もういいと
放っておいてと
何時からだろう
光に触れないように
....
手のひらに
あんなにもあったのに
やっぱりこぼれてしまうのね
あなたたちはやっぱり溶けやすくて
すぐに泣いて見えなくなって
あなたの瞳は美しい
四囲の変化や季節の移ろいにも
敏感に反応し
あますことなく映し取ってしまう
だからぼくは あなたを見ていさえすれば
それでもう
世界を手に入れているよ ....
大きなガラス扉
日焼けしたブラインド
貸店舗、の白い貼り紙
コンビニになりきれなかった
角の、たなか屋
殺風景な店先のコンクリートには
ただひとつ
小さな郵便ポストが生えたまま
舌 ....
どういう縁かは知らなかったけど、ひと夏、おばあさんが家にいた。
でしゃばらない、口数の少ない人だった。
私は小学6年生。すきな人がいて、友達がいて、楽しかった。
「主人は、三男坊 ....
ずっと前から知っていたね このときが来ること
近づくたびにみんな 知らないふりをした
放課後を知らせる音 オレンジの空の下
アルバムにしまいきれない あたしたちが歩いている
それぞれのレー ....
あなたの瞳に映っている森が
あまりにも美しく澄んでいたから
僕はあなたの瞳を押し開いて
中へ入っていった
あなたは目の前にいた僕を見失って
慌てふためいている ....
=下宿先から田舎へ向かう途中=
日暮里駅に到着
お昼寝してたお兄さん
降りそびれそうになりました
お兄さんは、どうしても降りたかったようで
まず、縦に体挟まれる
ガシャン
....
一行で勝負しようぜ僕たちの愛する言葉がグーチョキパーで
駅前でカップチーノを飲み干して横山剣からギャラを受け取る
君は何故毎年秋に亡くなるの、紅葉だからよ、 ....
初めてあなたに出遭った晴れた春の日の朝
それまでは何の面識もなかった赤の他人
ぎこちない会話ぎこちない態度
あなたも私も人見知りをしていたのかな
出遭った偶然
恋する必然
何も知ら ....
今朝
気象情報を見ていると
季節はずれの台風が
接近中ということだった
今回やってくる台風は
アザラシ台風
という名前が付いていた
中心気圧は850hPa
半径5メートル圏 ....
綺麗な澄んだ真水の底で
何も知らない僕が生まれる
疑うことも偽ることも
何も知らずに真っ直ぐに生きる
変えてみせたいこの心
手探りで永遠を探す毎日
汚れて濁った汚水の上で
....
嗚呼
どうしてこうも私は弱いのだろう
守りたいものも守りきれないくせに
強くなりたくても そう願うばかりで
守ろうとする努力もせず
強くなる為 ....
少女漫画のような純愛。
ただ単純に相手のことが好きで、
それだけで心がいっぱい。
現実のどろどろとしたしがらみや、
嫌気のさす事情の一切ない。
理想的な恋愛。
心が純粋であればある ....
旅行から帰ったら
あなたと
さくら見たいです
あなたのメールに
胸が詰まる
そう
そうだね
はなびらが
はらはら落ちる川沿いは
きっとまだ
風も冷たく
見上げた角度に ....
白いぼくの部屋に恋する女の子がいます。
その女の子は白い奇妙な椅子を
ぼくの部屋にはこびこんで、
ちょこんとすわっています。
窓のそとには
純粋な蜜柑の集落が
どこまでも続いています。
....
桜、咲く
ちらほらと咲く
ああ、春ねと
声に出せずに
唇噛み締め
うつむく
電車の中
楽しげな語らいの声が
通り過ぎる
咲く、桜に
心裂かれ
止まったままの
春を思う
....
あなたとにって詩が
だれかにとって詩であるとは限らない事実を
そろそろ
認めませんか?
これは詩ではない
思いのたけを稚拙に並べた文章
不特定多数に還元された主語
(まず文章として問 ....
さっきから震えが止まらないの
まだ不安定な私を許せ
眠りにつくのがとても怖い
明日の私は別人だ
明日のあなたも別人だ
これっきりでお別れかもしれないから
....
僕の言葉なんて、消えちまえばいい。
さわさわの雨が濡らした石畳
めくればそこにも、孤独なんだろう?
犬よ、僕の大好きな犬。
おまえが大好きでたまらないのだけれども、
おま ....
壊れた時計をなおしていたら
ふとしたことで けんかになった
あなたは時計をばらすのをやめ
きちんとねじをしめなおし
机にぽいと置いたのだ
わたしはそれを手にとって
いじくりながらそっぽ ....
アザラシが
浜辺を 這っている
私に 声をかけてきた
「目の周りに砂がまとわり付いて鬱陶しいので洗ってくださいな」
快諾
ゴシゴシ
ゴシゴシ洗って
ザンブラ
ザンブラ ....
赤ちゃんが乗っています
世間でステッカーがはやりはじめると
和泉町3丁目にある零細ステッカー会社の社長はへそまがりだから
赤ちゃんだけ特別扱いするのはおかしい と言い出し
次のような亜種をどん ....
油染みだらけの記憶のわら半紙提出期限をとうに過ぎ去り
透明なグラスの底を目にあててきみの星座を見る白昼夢
あの夏にきみが投じた問いかけのこたえをさがす 波のまにまに ....
息を
わたしたちは潜めて
東の空の彼方から
春がやって来るのを
待ち侘びていた
夜明けに
うすい紫の風が
わたしたちの
頭の上を撫でながら
通り抜けてゆくとき ....
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