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ずっと夢みていたの
赤いバラのアーチの下で
いつかあなたと恋におちる
凛とした香りにそまって

あたしは目を閉じて
ふるえながら待つだろう
あなたのしなやかな指が
 ....
ソースが汚ならしく
白い皿に残っている
綺麗に盛り付けたけど
終わってみるとこんなもんだ

しゃしゃっと水で流して
網かごにセットする
ナイフもフォークもお箸も
「汚れ物」になって ....
お水を待ってるの
大きなトラックで
お水をくれるから
ずっと待ってるんだよ

水瓶はこわれちゃったし
鍋はぺちゃんこだから
こんなタライしかないの
ちゃんと持って帰れるか不安

 ....
月が満ちた午前零時
引力は拮抗する

三角関数が
どうして重要なのかを
知りたくないですか?

月のひかりは
海底までとどかないから

微弱な引力の波動を
感じているしかない
 ....
シッポを切って逃げる
簡単…でも必死

自発的な変化
エントロピーは常に増大する
生き延びるのだから場合の数は増える…
当たり前のこと

こわい夢/現実から
すんでのところで逃げ出せ ....
わが背子に告げむと思ひし春とほし つぼみぬ梅に雪の降れれば

ひさかたのあまぎる雪そ梅が枝の 花とも見えずつもりぬるかな

あをによし奈良の都の大雪や 散りかふ花を夢にも見まほし
ひとまわり大きくなった太陽が
西の水平線に沈んでいく

この海はどこへでも繋がっている
海岸には奇妙な文字が氾濫している
塩化ナトリウム水溶液で繋がっている
巨大な電池だって作れる

 ....
「ああ,嫌だ」
彼女は台所の隅でぬか床を愛撫しながら言う
手を入れるたびに 「さくっ,さくっ」と音がする
重みに耐えかねた雪が どさっと落ちる
たまの大雪くらいで大騒ぎできるほど平和だ

 ....
硝子板の上の小さな池で
草履虫が草履虫を食べる

部屋には誰もいない
かすかに染み付いた酢酸臭がする
壁には飛び散った硝酸銀の痕跡
古代の半島を描いている

午前11時の憂鬱
あたし ....
きみね
簡単に「殺してやる」なんて言うけど
 その後
 どうするつもり?

それを道端にほっとくわけにもいかないのよ
戦時中じゃあるまいし
 リヤカーによっこらしょっと
 っていう風に ....
ピンクのスポット
タバコの煙が見せる
ギターを泣かせる
チョーキングするときの
薬指がセクシーで
まぶしい

ときおりきらめく
弦が好きだ
あなたは笑う
ライブハウスの
こちら側 ....
古い酒蔵のステージ
ドラム叩きとベース弾きに
ときおり目くばせしながら
ヴォーカリストの暴走をくいとめてる

EとBの間
ヘッドでタバコをくゆらせて
だれを気取ってるの?
あんまり ....
じいちゃんが逝った朝
病室にばあちゃんの姿がない
窓の外は風にあおられた雪

あたしは瞳孔を確認して
お決まりのせりふを吐く
息子の白髪頭が傾く

「独りになったら
都会に行かん ....
静けさに目ざめた朝
千本格子に寄って眺める
まろくぼやけた夕べの足跡
やはらかに雪肌が吸ひ込む
とほい魚売りの声

せめておぼろな冬の陽が
見まがふばかりに華やぐやう
乾ひたくちび ....
ビル風がないている
5階17号室の伝説
−入室した患者は寛解する−
突き刺さる2月の夕陽

あとどのくらい…?
18号室の質問に
科学者の仮面で答える
3ヶ月≦x≦6ヶ月

藁 ....
はやい夕暮れ
うんざりする長い夜
セピア色の点光源
薄暗がりの背景に
うかびあがって
忘れられた
映画のポスター
ひたすらうらぶれてる

スーツの男
作業服の男
セーターの男 ....
うつ病のひょっとこ
暗い目
マジ過ぎて笑える

面白い顔で
沈鬱な表情
文句なく笑える

「笑っちゃいけない」
お行儀いい人は言うけど
笑えちゃうんだからしかたない

偽善 ....
しあわせがサラサラと
指の間から
零れ落ちていく
静寂

音も立てないで
苦しみもしないで
描いた文様は
風に吹き消される

伝わらない思いを
伝えようとあがいた
その言葉 ....
明るくふるまうのは
終わりを予感するから
‘おびえている’ なんて
いい気にさせたくないから

言いかけた言葉を
飲みこんだきみは
カモメを指さしてごまかす
中途半端なやさしさ
 ....
とりたてて喜ぶほどでもない
あたりまえのことを渇望する
今日は昨日よりも調子がいい
そんな錯覚でも気分がよくなる

まわりの誰と比べても
あたしなんて可愛いもんだ
錯覚か幻想だけでも ....
蕗を茹でる鍋にぶちまける
キッチンの戸棚に隠してあった
とっておきの塩
ザルツブルクで見つけた

とっておき なんて
未来を楽観できなきゃ
思い浮かばない道化芝居
あたしは無理をし ....
なんとはなしに気ぜわしい夕暮れ
劇場に向かう華やいだ人々の甲高いイタリア語
船着場に打ち寄せられたのは老いて死んだカモメ
ひたひたと岸壁を打つ波音だけの静寂

午後には特別なミサがあった
 ....
そんな厳粛なものではなかった
壮麗な教会のどこか枯れた香りではなく
天に召されようとする生身の横たわる部屋は
真冬でも蠅が飛び交いそうな腐臭に満ちていた

‘なにかがおかしい’と疑いながら
 ....
城に上っていく石畳に夕陽が反射する
あなたがこの瞬間を見たのはいつの頃?
使い古したカメラのフィルムに残されていた
あなたの鼓動が聞こえてくる

あなたから聞いたピヴォの名前にひかれて
日 ....
つららが少しずつ短くなった
しずくがきらめいて揺れてる

あたしの頬に触れる指先は
ささくれだって冷たいけど
やわらかな子猫を抱くような
そんなしぐさから伝わってくる

手の冷たい人は ....
丘をのぼる石だたみの坂道でうずくまっている
ベレーをのせたあたしの夢 ただの酔っぱらい
指にこびりついているのは絵の具じゃない
細かい灰色の砂ぼこり 指の間から零れおちた砂の残骸

こんなと ....
追いかけた夢のかけらが
透明なみどりのガラス瓶のなかで
体を揺らせるたびに
きりんこりんと泣く

泣き声を聞きたくなくて
じっと身をひそめる
あかるい場所から目をそらせる
みじめな思い ....
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